「あまちゃん」で全国から注目 三陸鉄道復活への軌跡日経おとなのOFF

東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手のローカル線、三陸鉄道(通称・三鉄)。一時は存続をも危ぶまれたが、NHK朝の連続ドラマ「あまちゃん」の舞台ともなり、全国から熱い視線を集めている。2013年4月には南リアス線の一部区間が復旧。2014年4月には全線で運転を再開する予定だ。三鉄の復活に鉄道の底力を見た。

「そこにあるはずのものがなく、見えないはずのものが見えた。呆然(ぼうぜん)としました──」。三陸鉄道の旅客サービス部長・冨手淳さんの脳裏には、あの日眼前にした光景が今も焼きついている。

大津波警報が解除された2011年3月13日、社長と2人で沿線の被災状況を調べて回った。初めのうちはどこか安堵(あんど)しながらの道行きだったという。むろん被災箇所は至る所で目についた。しかし三陸鉄道のレールはトンネルに守られた部分が多いため、難を逃れた箇所も少なくない。さほどの時間を経ずに復旧できるように思えた。

そんな楽観はしかし、海辺の駅の惨状を目の当たりにするほどに揺らいでいく。漁港に臨む田老駅は、地下道までが瓦礫(がれき)に埋もれていた。大津波は“万里の長城”と呼ばれた頑丈な防潮堤を越えて、田老の町をのみ込んだのだ。

冨手さんが我が目を疑ったのは、北リアス線のほぼ中央に位置する島越地区にたどり着いたときだ。三陸鉄道きっての人気を誇った島越駅。宮沢賢治の童話にちなんで「カルボナード」との愛称が付いた瀟洒(しょうしゃ)な駅舎も、ホームも、そして高架橋までもが、本来あるはずの場所から消えうせていた。そして、いつもなら連なる建物に隠れて見えないはずの海原が、悲しいくらいの青色をたたえて見えた。

「明治三陸地震津波による被害を念頭に、島越の高架橋は特に頑丈に造ってありました。なのに、あっけなく流されてしまったんです」(冨手さん)。

被災5日後には列車が走った 2014年4月、全線復旧へ

北リアス線の陸中野田─野田玉川間は、全線で最長の2kmにわたって線路が流された。さらに深手を負ったのが南リアス線だ。線路や橋梁の流出、損傷、トンネルのひび割れ、築堤の陥没……。被害箇所は247に及んだ。

「廃線」の2文字すら想起せざるを得ないピンチ。しかし、三鉄マンたちは踏ん張った。震災後5日目、3月16日にはもう列車を走らせたのだから驚く。それは北リアス線の久慈─陸中野田間。東日本大震災で運休した沿岸部の鉄道としては、一番乗りだった。次いで20日には宮古─田老間、29日には田老─小本間が、相次いで復旧した。2013年3月下旬現在、北リアス線は島越を挟む小本─田野畑間を除いて、平常通り運行している。

それ以外の区間では今まさに、再起に向けた槌音が響いている。2013年4月には南リアス線の一部、そして来年4月には全線で運転を再開する見込み。全国の鉄道ファンが、そして何より地元の人たちが待ちわびる三鉄復活の日は、そう遠くない。