劇場映画と同じ品質で撮影…『最上のプロポーズ』製作舞台裏
「マリエッタ」というフラワーショップから花を贈ると、必ず幸せになれるらしい…。“プロポーズ”をキーワードに、4組の男女の恋模様を描いた、全12話からなる4つのオムニバスラブストーリー『最上のプロポーズ』を手がけたのが、『EUREKA』『東京公園』などで数々の映画賞を受賞し、世界的に評価の高い青山真治監督。過去にテレビドラマの監督を務めたことはあるが、モバイル動画配信サービスでのメガホンは初となる。なぜ引き受けたのかを聞いた。
「動画配信サービスは、映画やテレビドラマとは別物のように思うかもしれませんが、撮り方は映画館で上映する映画と変えていません。だから私にとっては、今回の仕事も他と変わらないんです。小さい画面ゆえ、あまりにも引きすぎた画は撮らない、といった特徴はありますけどね」(青山氏)。
「スタッフも、僕が劇場映画を撮るときのメンバーです。私の映画はシリアスな作品が多いので、ラブコメというジャンルはほぼ初めてでした。動きが少なく、男女の切り替えショットだけでどこまで間が持つのかとか、いろいろ挑戦できて面白かったですよ」(青山氏)
撮影は、準備に1カ月、撮影期間は20日と、映画に比べて日数は圧倒的に少なかったそうだ。
「時間がない状況で、経験を頼りに進めなければならない場面も多くて、今までの映画撮影で最も難関だったかな(笑)。ただ、キャスティングが抜群に良かったのに救われました。作品の良さの80%はキャスティングで決まるんです。テストを重ねることなく本番を始められ、修正もあまり必要なくて…。4つの異なる物語が、それぞれ特徴があって、いいバランスになったと思います。私は映画祭向けのアート系映画監督だというイメージが一人歩きしていますが、頼まれて断ったことは1度もない(笑)。注文通りに仕事をする監督として、今作で今までのイメージを払拭したいですね」
(ライター 安保有希子、日経エンタテインメント! 白倉資大)
[日経エンタテインメント! 2013年7月号の記事を基に再構成]