劇場映画と同じ品質で撮影…『最上のプロポーズ』製作舞台裏

青山真治(あおやま・しんじ)氏。1964年、福岡県生まれ。1996年に映画監督デビュー。2012年に多摩美術大学映像演劇学科教授就任

「マリエッタ」というフラワーショップから花を贈ると、必ず幸せになれるらしい…。“プロポーズ”をキーワードに、4組の男女の恋模様を描いた、全12話からなる4つのオムニバスラブストーリー『最上のプロポーズ』を手がけたのが、『EUREKA』『東京公園』などで数々の映画賞を受賞し、世界的に評価の高い青山真治監督。過去にテレビドラマの監督を務めたことはあるが、モバイル動画配信サービスでのメガホンは初となる。なぜ引き受けたのかを聞いた。

「動画配信サービスは、映画やテレビドラマとは別物のように思うかもしれませんが、撮り方は映画館で上映する映画と変えていません。だから私にとっては、今回の仕事も他と変わらないんです。小さい画面ゆえ、あまりにも引きすぎた画は撮らない、といった特徴はありますけどね」(青山氏)。

「スタッフも、僕が劇場映画を撮るときのメンバーです。私の映画はシリアスな作品が多いので、ラブコメというジャンルはほぼ初めてでした。動きが少なく、男女の切り替えショットだけでどこまで間が持つのかとか、いろいろ挑戦できて面白かったですよ」(青山氏)

撮影は、準備に1カ月、撮影期間は20日と、映画に比べて日数は圧倒的に少なかったそうだ。

[左上]エピソード1『スノウドロップ』。不器用な男が、初恋の女性相手に大奮闘(出演・斉藤工、美波) [右上]エピソード2『アイリス』。科学を愛する研究者が住む世界の違う女性と出会い…。(出演・金子ノブアキ、入山法子) [左下]エピソード3『ブルーローズ』。彼女を思うゆえ、男がついた大きな嘘とは?(出演・小出恵介、波瑠) [右下]エピソード4『ウェディングベール』。離婚届を置いて消えた妻に、2度目のプロポーズ。(出演・向井理、伊藤歩) (C)BeeTV

「時間がない状況で、経験を頼りに進めなければならない場面も多くて、今までの映画撮影で最も難関だったかな(笑)。ただ、キャスティングが抜群に良かったのに救われました。作品の良さの80%はキャスティングで決まるんです。テストを重ねることなく本番を始められ、修正もあまり必要なくて…。4つの異なる物語が、それぞれ特徴があって、いいバランスになったと思います。私は映画祭向けのアート系映画監督だというイメージが一人歩きしていますが、頼まれて断ったことは1度もない(笑)。注文通りに仕事をする監督として、今作で今までのイメージを払拭したいですね」

(ライター 安保有希子、日経エンタテインメント! 白倉資大)

[日経エンタテインメント! 2013年7月号の記事を基に再構成]