温泉マークの湯気、昔は直線 郵便局は封筒だった

日本の地図記号は「お役所」だらけ

歩道上の地図看板では郵便局は封筒マークだった(東京・大手町)

国土地理院が定めた地図記号は現在、161種類ある。「地図の遊び方」(新潮社)、「世界の地図を旅しよう」(白水社)などの著書がある地図研究家の今尾恵介さんは「日本の地図記号は役所関係の記号が多いのが特徴。海外ではここまで多くはない」と話す。

確かに記号一覧を眺めてみると、森林管理署、気象台、税務署……など、「お役所」の記号が多数ある。「海外では市役所でさえ、記号がないところが多い」と今尾さんは指摘する。なぜなのか。

「それぞれの国で地形図の位置づけが違うことに加えて、国の成り立ちの違いも影響しているかもしれませんね」

今尾さんによると、欧米では官製といえども観光地図の色彩が濃いという。例えば英国では「キャンプ場」「ピクニックサイト」「見晴らしのいい場所」「公衆トイレ」を示す記号があり、フランスには「テニスコート」「馬場」などがある。

教会関連施設が目立つのも日本との大きな違い。スウェーデンでは「教会(塔あり)」「教会(塔なし)」「チャペル(塔あり)」「チャペル(塔なし)」があるし、ドイツでは「教会(複数塔)」「教会(単塔)」「教会(三角点あり)」「チャペル」がそれぞれ違う記号だ。

江東区の「大江戸温泉物語」付近の地図には、温泉マークと郵便記号がともに表示されていた(国土地理院の「電子国土Webシステム」を使用)

こうした欧米に対して、日本の地図記号に「お役所関係」が多いのは、廃止された記号からもうかがえる。例えばかつて存在していた「電報・電話局」は民営化の際、消滅した。JR発足の際も記号の変更が議論されたが、このときはなじみが深いとしてそのままとなった。

一方で新しく生まれた記号もある。2002年には博物館と図書館、2006年には風車と老人ホームが誕生した。公共性の高さとランドマーク性が決め手となったようだ。

最近、くすぶっているのは郵便局のマーク。民営化に伴い変更されるのではないか、との見方があるのだ。国土地理院に聞いてみると、「長い目で見ると分かりませんが、今のところ特に議論はありません」とのこと。なじみが深い、と変えない可能性が高いが、メールの登場で封筒マークにも親近感がある。脱「お役所記号」の象徴になるのもいいかもしれない。(河尻定)

各国の地図記号(国土地理院資料より一部を抜粋)

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