太ってなくても脂肪だらけの体、ダイエットが引き金に
体重を減らしたいと思ったとき、たいていの人はまず食事の量を減らすことを考えるだろう。でも、ちょっと待って。減食一辺倒のダイエットは、たとえ体重が減っても、将来の病気のリスクを高める可能性がある。
筑波大学大学院人間総合科学研究科の久野譜也教授は「食事制限中心のダイエットは、体脂肪だけでなく筋肉量も減らしてしまう」と指摘する。筋肉が減ると、体内の代謝機能が低下するため、糖尿病や高脂血症といったメタボ系疾患のリスクが高まるのだ。
筋肉量が病的に減った状態を「サルコペニア」という。代謝機能だけでなく、寝たきりや転倒骨折などを起こすリスクも高くなる病態として、近年、注目が集まっている。
筋肉量は通常、年齢とともに減っていき、20~30歳代ではすでに減少傾向になる。食事制限だけのダイエットは、この加齢プロセス(筋肉減少)をわざわざ加速させることになる。
またサルコペニアの人は基礎代謝が落ちているため、体脂肪がたまりやすい。こうして筋肉減少と肥満が重なったのが「サルコペニア肥満」。メタボ系疾患のリスクが非常に高い状態だ。
筋肉量が少ないため、外見的にはさほど太って見えないこともある。しかし「太ももの太さが一緒でも、MRIで断層写真を撮ると、中身がまったく異なるケースも」(久野教授)。筋肉率が測れる体組成計を使えば、自分でもチェックできる。
サルコペニア肥満は高齢者に多い病態だが、「早ければ40代でも起きる。若いうちから筋肉量を落とさないように注意することが大切」と久野教授。
必要な対策は、筋トレ。普段から行うのが望ましいが、ダイエットをする場合は特に重要。食事制限をしても、筋トレを併用すれば、筋肉の減少が抑えられる。さらに、筋トレの直後にたんぱく質を摂取すると、効果がいっそう高まるという。「全身の筋肉を鍛えるのが望ましいが、1種目選ぶなら、大きな筋肉を鍛えられるスクワットがお薦め」(久野教授)だ。
この人に聞きました
筑波大学大学院人間総合科学研究科、教授。「ダイエットは、単に体重を何キロ落とすという発想ではなく、脂肪を減らして筋肉量を保つことを意識してほしい。ダイエットは量より質が大事」
(科学ライター 北村昌陽)
[日経ヘルス2013年11月号の記事を基に再構成]
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