夫婦といっても、もとは他人同士。年月とともに深く分かり合ってゆく部分もあれば、考え方の違いを痛感することもあります。

人生の節目でよく話し合い、互いの気持ちを確かめることは、大事なこと。でも、そんな気分になれないときに、無理して会話をしなければと思うと、かえって関係そのものがぎくしゃくしてしまうこともあります。

更年期の間に結論を出さないで!

「それより大切なことは、受容すること。結婚生活を続けていれば、うまくいかない局面もたくさんあります。そのとき、うまくいっていない相手を受け入れる気持ちを持とうと心がけることは大切」と港町診療所(横浜市神奈川区)の産婦人科医で更年期に詳しい今井理恵さんは言います。受容とは、相手をそのまま受け入れること。今はとてもそんな余裕がないという人も、頭の片隅にそのことがあるだけで関係に違いが生まれるかもしれません。

お互い不満が募ったときには、“離婚”が頭をかすめることもあるかもしれません。「そんなときは、距離をとることも必要です。家庭内別居も一つの選択です。あらゆることに対して判断力や耐性が落ちているのが、更年期。いつもなら平気なことに傷つくなど、この時期は特別な精神状態です。ですから、相手に暴力や借金などの問題がない限り、更年期の間は大きな決断をせず、結論を先延ばしにしてみては?」と「夫婦の危機や再生」をテーマにしたルポルタージュ作品が多く、自らメノポーズカウンセラーでもあるルポルタージュ作家の本岡典子さんは強調します。

実際、「『もうやっていけない』と、50歳くらいで離婚し、しばらくは元気でいても、後悔している人をたくさん見てきました」と本岡さん。「相手とうまくやりたいという気持ちさえあれば、たとえ60、70歳になってもやり直せるケースが多くあります。今の関係がずっと続くと思わないでください」(本岡さん)。

【80歳のある妻の回想】
夫婦も年齢とともに変わるもの。根底に信頼感があれば、違う関係も生まれます
40~50代は、いつもイライラしていたような気がします。自覚はなかったですが、当時は夫や娘、息子に当たることが多くなり、言い合いもたびたび。家の中の空気が重くなったこともありました。子どもたちが成長し、気がつけば家の中でひとり。今までの人生は何だったんだろうって、もんもんとすることも。息子や娘が巣立ち、家を出ていったときは、円形脱毛症がいくつもできました。この時期、犬を飼い始めたら少しずつ気分が楽になりました。
夫は優しい人ですが、元来、無口なのでほとんど会話はありませんでした。それもイライラの原因だったと思います。ところが、60代に入り、夫が仕事から離れたころから徐々に変化が。テレビや新聞を見て感想を言い合うことも多くなり、ここ数年は時間が許す限り旅行をしようと、二人で出かけるようになりました。知らない同年代の人とも出会え、「楽しかったね」と会話も多くなり、時とともに人は変わるものと感じています。人生の残り時間を意識する年になり、あとどれだけ一緒にいられるかを考えると、いとおしさも増しました。

(日経ヘルス プルミエ 黒住紗織、ライター 新井亜古)

[日経ヘルス プルミエ2010年3月号の記事を基に再構成]

ウェルエイジング 健康で豊かな人生のヒント
注目記事
ウェルエイジング 健康で豊かな人生のヒント