やっぱり「家めしこそ最高のごちそう」だ【特別対談】冨田ただすけ×佐々木俊尚

家めしへの目覚めは断食体験

【冨】 佐々木さんの“家めし歴”はどれくらいですか。

「シンプルなのが現代の『家めし』。凝り過ぎの『男の料理』とは違う」と佐々木さん

【佐】 若い頃から料理は好きでしたが、本格的に毎日料理をするようになったのは十数年前からですね。新聞記者をしていた1998年に脳腫瘍が見つかり、以後数年は病気のオンパレード。長年の激務と不摂生のつけです。先輩に「社会部記者の平均寿命は63歳だ」って聞かされてゾゾーッとして、さすがに何とかしなければならないと思っていた頃、妻に付き合って断食道場に行ったんです。

【編集部】 断食をすると、味覚が一新されるといいますね。

【佐】 ええ。断食は味覚を実に鋭敏にする貴重な体験でした。素材の持つ豊饒(ほうじょう)な味を鮮烈に感じることができたんです。この体験をきっかけに、野菜中心の薄味の食を志向するようになりました。素材の味を生かした、シンプルで健康的な料理を毎日食べるには、自分で料理するのが一番だなと。

【冨】 よく分かります。僕は、総菜販売の会社や食品メーカーで製造や商品開発に携わってきましたが、総菜や加工食品は一口食べておいしいと感じさせるために、どうしても濃い味つけになってしまう。

【佐】 そういう強い味は後を引くから、食べ過ぎちゃうんだよね。

【冨】 総菜が濃い味つけになるのは、調理してから食べてもらうまでに時間がかかるため、「食感」や「香り」が損なわれてしまうから。つまり、作ってすぐに食べる家のごはんは、食感や薬味などの香りでアクセントをつけ、薄味でも十分においしいと感じられる料理にできる。自分にとってちょうどいい分量、塩分、栄養が取れるようコントロールできるんです。さまざまな食の仕事を経験してきた結果、「家ごはんに一番メリットがある」と感じたことがレシピサイトを立ち上げるきっかけになりました。

【佐】 そう。家めしはおいしくて経済的で健康的で、さらに自分で自分の体や生活をコントロールできるようになるのが大きなメリット。今の世の中はいろんなことが不確実で将来が予測できない。だからこそ、自分の生活の基本となる食くらい、自分で構築できるようでありたい。家めしは今の時代に最も適した食スタイルだと思います。