やっぱり「家めしこそ最高のごちそう」だ【特別対談】冨田ただすけ×佐々木俊尚

家族がいても平日の食事はバラバラ。1人分ならと、コンビニで買って簡単に済ます――。そんな晩ごはんが続いていないだろうか。家で作らなくても豊富な食の選択肢がある時代だが、人気和食レシピサイトを運営する料理研究家の冨田ただすけさんと、話題の料理本『簡単、なのに美味い! 家めしこそ、最高のごちそうである。』(マガジンハウス)の著者でもあるジャーナリストの佐々木俊尚さんは、それぞれさまざまな食体験を経て、「家の料理が最高のぜいたく」との結論に至ったという。そこで今回、『日経おとなのOFF』では“家めし派男子”2人に、その魅力について語り合ってもらった。

【冨田さん】(以下【冨】) 『家めしこそ、最高のごちそうである。』を読みました。佐々木さんは、毎日ごはんをご自分で作られているんですね。IT(情報技術)ジャーナリストとして多忙な毎日を過ごされ、ツイッターのフォロワーが20万人もいらっしゃって、料理の時間を捻出するのは大変ではないですか。

【佐々木さん】(以下【佐】) いえいえ、僕の日常はごくシンプルなんですよ。朝6時に起きてメールチェックとネットでの情報収集。ツイッターでその日気になった記事を20本ほど上げたら、スポーツジムへ行って体を動かし、帰宅後に妻と自分のブランチを作って洗い物をし、昼頃から仕事。取材や講演がない日は自宅で作業し、遅くとも19時には仕事を終えて晩ごはん作り。食事が済んだら風呂に入って22時には寝てしまいます。

執筆の最中、「冷蔵庫に何が残っていたかな……」なんて考えるのが、気分転換にもなるんです。冨田さんが運営するレシピサイト「白ごはんドットコム」も今後参考にさせてもらいます。料理の手順の数が少ないのがいいですね。

【冨】 はい、そこはこだわっているところです。家の料理は毎日のことだから、続けるためにも面倒でないことは大切だと思っています。

【佐】 「白ごはんドットコム」のユーザーは若い人が中心ですか。

【冨】 そうですね。ただ最近アクセスを解析したら、実は佐々木さんと同じ50代の方が意外に多いと分かり、驚いたんです。

50代は“非”家めし世代

【佐】 それ、納得するなあ。僕、1961年生まれの53歳なんですが、僕らの世代って「家でまともなごはんを食べてこなかった」っていう人、多いんですよ。

【編集部】 まさに『おとなのOFF』読者のど真ん中。おいしいモノ好きが多いんですけれど。

【佐】 80年代後半のバブル時代に、会社の接待費で高いめしを存分に食べて美食に目覚めてしまった最後の世代ですからね(笑)。一方で、僕らが子供の頃、家庭にインスタント食品や化学調味料がどっと入ってきて、戦前からの和食文化が途絶えてしまった。高校生のときに食べた母親の料理って、「ひき肉をいためて缶詰のミートソースと煮込んだスパゲティ」とか「冷凍ミックスベジタブルといためたチャーハン」ですから。おふくろの味と思っていた味噌汁のだしが、化学調味料だったと後で知ったり(笑)。

【冨】 佐々木さんたち世代が働き盛りの30代後半を過ごした90年代は、コンビニが急速に広がり始めた時期でもありますしね。

【佐】 だけど50代に突入して、いいかげん、そんな食事に胃もたれしてきたわけです(笑)。高級フレンチでも手軽なコンビニ食でもなく、家でごく普通のおいしいものを作って食べたいという「家めし欲求」が高まっていると思います。

【写真左】佐々木俊尚、作家・ジャーナリスト。1961年、兵庫県生まれ。1988年に毎日新聞社に入社し、社会部記者として警視庁捜査一課などを担当。1999年にアスキーに転籍し、現在はフリージャーナリストとしてIT・メディア分野を中心に執筆。仕事の傍ら、妻と自身の食事を毎日作っており、その料理哲学などを収めた著書『簡単、なのに美味い! 家めしこそ、最高のごちそうである。』(マガジンハウス)が話題 【写真右】冨田ただすけ、料理研究家。1980年、山口県生まれ。愛知県在住。大学卒業後、総菜の製造・販売会社に勤務し、調理師専門学校を経て、日本料理店で修業。その後、食品メーカーで商品開発職に就く傍ら、2008年から和食のレシピサイト「白ごはん.com」の運営を開始。1日当たり約10万ページビューの人気サイトとなり、2013年から雑誌『AERA』で連載をするなど料理研究家として本格的に活動を開始。近著に『家族の顔を見ながら、毎日ごはんを食べたいと思った。』(リベラル社) (写真 中本浩平、以下同)