東大寺学園 感覚の鋭さを見る算数、類推する力を見る国語入試問題でわかる 名門中学が求める子ども(12)

今回紹介するのは、奈良県の男子校、東大寺学園中学校・高等学校。もとは大仏で有名な東大寺の境内にあったが、1986年に現在の校地に移動した。働きながら学びたいと志す青年に学問の機会を提供する目的で開かれたのが始まりで、仏教校ではあるが宗教の授業というのはない。徹底的に自由な学校として知られ、校則はない。ピアス・茶髪についても規制も設けていない。

東大寺学園中学校・高等学校。約8割が東大・京大・国公立医学部のいずれかに進学している

しかし進学実績は全国随一。1学年約220人と大規模校ではないが、2014年の大学入試では、京大に58人、東大に31人、国公立大医学部医学科に83人の合格者を出している。約8割が東大・京大・国公立医学部のいずれかに進学しているのだ。教育目標には「基礎学力の重視」「進取的気力の養成」「豊かな人間性の形成」の3つを掲げている。

東大寺の入試は「国語・算数・理科・社会の4教科」または「社会をのぞいた3教科」の選択によって行われる。入試日は年によって異なるが、関西の入試解禁日から3日目に行うことが通例。2014年には1月20日に行われた。

図形センスがないといきなりつまずく

さっそく2014年度の算数の入試問題、大問3を見てみよう。

下の図のような三角形ABCと半径1cmの円Pがあります。円Pを三角形ABCの辺にそって離れることなくその内側を一周させると、三角形ABCの内部で円Pが通らなかった部分は、頂点A,B,Cの近くと中央の三角形DEFの、合わせて4つあり、その面積は全部で47.86平方センチメートルでした。
次に、円Pを三角形DEFの辺にそって離れることなくその外側を一周させたところ、三角形ABCの内部で円Pが通らなかった部分の面積は全部で53.44平方センチメートルでした。このとき、次の問いに答えなさい。ただし、円周率は3.14とします。

私はこの問題文を読んで、なぜそんなことが起こるのか、まずそれがわからなかった。大きな三角形の内側に沿って円を動かすと、その軌跡の中に小さな三角形ができることはイメージできる。とりあえず、与えられている図に、三角形DEFを描き入れてみる。

しかし、その小さな三角形の外周に沿って同じ円を動かしたところで、その軌跡はさきほどの軌跡と同じではないのか、であれば円Pが通らなかった部分の面積は同じではないかと思ったのだ。図形センスがない人間がこの問題を解こうとするとまずそこからつまずく。

「そうなってしまうと先に進めないので、(1)があります」と数学科の布村浩二教諭は私を優しく笑いながら言う。

(1)(1)三角形ABCの内部を一周させたときに、円Pが通らなかった4つの部分のうち、頂点Aの近くの部分を、解答欄の図に斜線で表しなさい。

(2)三角形DEFの外側を一周させたときに、円Pが通らなかった4つの部分のうち、頂点Aの近くの部分を、解答欄の図に斜線で表しなさい。


問題文にあった2つの作業を解答用紙上で再現してみろということだ。「実際に作業をしてみると、似たような作業をしたにもかかわらず、円Pが通る軌跡が微妙に違い、それが面積の差になって表れることがわかります」と布村教諭。

1について、三角形ABCの内側にそって円Pを転がす図を描いてみる。円Pは、三角形ABCの辺ABに沿って進み、点Dを離れ、辺ABと辺ACの両方に接するところまで行く。そこで向きを変え、辺ACに沿って進む。ということは、点Aの近くの部分で円Pが通らなかったのは、円Pが辺ABと辺ACの両方に接しているときにできる隙間だけである。正解は下図(矢印は解説用で、実際の回答には不要)。

2は、円Pが点Dに接したところから、辺ABを離れ、点Dに接したまま回転を始める。このとき軌跡は、円Pの直径を半径とする弧を描く。その外側が、円Pが通らなかった部分である。正解は下図(矢印は解説用で、実際の回答には不要)。

これでようやく2つの軌跡と面積の違いが具体的にイメージできた。

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