喫煙、運動不足、間違った食生活…がんのリスクに注意
――男女ともに気をつけなければいけないのががんですね。どんな注意が必要なのでしょうか。
白澤 がんはタバコが一番大きな原因です。それから、食事ですね。野菜中心の食生活をすることが重要です。最近は太っていることががんのリスクになっているという研究成果もあります。あとは運動不足です。
女性は乳がんが増えています。僕が医学部を出たころは、あまり若い人の乳がんは見なかった。乳がんになるのは50代、60代だったのですが、最近は30代、人によっては20代で乳がんになる方がいらっしゃいます。
20代でがんになるというのは子供のころからの食事が問題なのだと思います。乳幼児期、小学校、中学校の食事から直していかないと。
――具体的にはどんな食生活が問題なのでしょうか。
白澤 今の子供の食事は、加工食品が多いですね。お皿の上にリンゴが1個置かれていれば、それはその状態で木に生(な)っていたわけですね。一方、オリジナルの形が何か分からないようなものが加工食品です。口のなかに入るものの半分以上が加工食品になった場合は、われわれの体の免疫系がついていけないんですね。いまの子供の食事を写真に撮ったら、80%から90%がオリジナルの形が分からないものばかりではないでしょうか。
――食生活は大事なのですね。
白澤 特に最近増えてきている乳がんや前立腺がんは、食生活の変化に応じて増えてきました。食生活が間違った方向に進んでいると僕は思っています。
カロリー制限、大事なのは食事の内容
――食生活を含めた生活習慣を変えるきっかけになるのが健康診断です。メタボと診断されると、医師はパンフレットを見せながら、まず「カロリーを減らしなさい」と言うのですが、どう減らせばいいかがよくわかりません。
白澤 まず、僕は朝食を抜くことはお勧めしません。朝食を取らない人に要介護になる人が多いからです。われわれの調査で、朝食をとった人のほうが健康を維持できるということがわかっているので、朝は抜かないでもらいたいですね。
カロリー制限で、老化のプロセスが遅くなることは動物実験で分かっているんですけれども、大事なのは内容だと思います。日本人の場合はお米を主食にしているので、朝昼晩お米を食べた場合、だいたい総カロリーに占める炭水化物の割合が60%以上になります。おかわりなどをすると70~80%になるわけです。これが太る原因になります。
炭水化物はインスリンというホルモンを分泌させます。インスリンが脂肪細胞の中にエネルギーを蓄積させるホルモンになります。炭水化物が減ってくれば減ってくるほど、インスリンというホルモンは出なくなるんですね。カロリー制限をするときに炭水化物を減らすのがいい方法だと思います。どのくらいまで減らすべきか。60%を20%くらいまでに減らしていいと思います。ご飯をゼロにしてもおかずのなかに炭水化物が入っていて、それが20%くらいです。ですから、ご飯を食べなくても十分にバランスはとれます。
おかずは野菜とお魚の組み合わせが一番いいです。でも魚と肉は1対1の比で食べたほうがいいでしょう。