2012/10/19

集まれ!ほっとエイジ

――長寿遺伝子はだれでも持っているのですか。

白澤 だれでも持っています。長寿遺伝子と聞くと、長寿遺伝子を持っている人が長生きをして、そうでない人は短命に終わると考えがちですが、そうではない。

どうして、全員が長寿遺伝子を持っているのにだれもが長寿にならないかというと、この遺伝子はスイッチが入っているときと入っていないときがあるのです。どういうことでスイッチのオンオフが決められるかが研究課題になります。

例えばどれくらいのカロリーをとるか、どれくらいの運動をするか。つまり生活習慣、ライフスタイルがスイッチを入れるか入れないかを決めているというのが研究で分かってきました。

――「遺伝子で決まってしまう」と聞いたときは、何をしても同じという気がしたのですが、カロリーや運動に左右されるというのならば努力のしがいもありますね。

白澤 もちろん、遺伝子で決まっている部分もあります。南デンマーク大学のカーレ・クリステンセン教授が一世紀にわたって一卵性双生児と二卵性双生児を調べた研究から、寿命を決めている要因の25%は遺伝子であることをつきとめました。あとの75%が非遺伝的なもの、つまり環境要因ということです。ですから長生きの家系に生まれた人は十分に長生きの遺伝的な素因があると考えていいのですが、それは4分の1で、あとの4分の3でそれを台無しにもできるという話なのです。逆に言うとご両親が短命であったとしても、4分の1は影響を受けても4分の3で挽回できるチャンスがあるわけです。

40代からの生活習慣がカギ

――環境要因ということになると、40代くらいからの過ごし方が重要ですね。

白澤 40代、50代になってからは男女で、気をつけなければならないことが若干違ってきます。女性の場合は40代は閉経になっていないので、女性ホルモンが出ていて、アドバンテージがあります。最大のアドバンテージは、血管がほとんど老化しないことです。心筋梗塞とか脳卒中のリスクが男性に比べてずっと低くなります。ところが女性の場合は出産や子育てがあります。出産とか授乳とか子育てをするときにちゃんと栄養をとっておかないと骨の中のカルシウムとかミネラルが不足する場合があるんです。

男性の場合は血管から老いていきますので、血管のアンチエイジングを考える必要があります。血管が老化するリスクはたくさんあります。高血圧、コレステロールの値や血糖値が高いことでリスクは高くなります。肥満も血管の老化を進めます。忘れてはいけないのはタバコです。これが血管を老化させます。

血管老化リスクを減らす努力を

血管を老化させるリスクを一つでも多く減らしていくというのが大事です。血管の場合は自覚症状がほとんどありません。ある日突然胸痛があって心筋梗塞を発症したり、ある日突然麻痺がきて、脳卒中、脳の梗塞を起こしたりします。症状が出た時には血管が詰まっているということなので、血管が老化した揚げ句の果てなんですね。

そうなる前に、自分の血管がどれだけ老化しているのかという評価を最近はすることができるようになりました。「脈波」というものを測るのです。

血管というのはだんだん硬くなってくると鉛のパイプのようになってくるわけです。もともとはゴムのパイプのようだったわけですが、それがだんだん硬くなると鉛のようになってきます。心臓から血液が出るときに脈を打っていますが、ゴムのようなホースだと、脈打つのも滑らかですが、鉛のようだと、脈打たないです。そうすると脈の伝わる速度が速くなるわけです。脈の伝わる速さを測るとどのくらい血管が硬くなっているかというのが分かるんですね。これは痛みもなく5分くらいでできる検査です。血管年齢も出てくるので分かりやすいです。

これはアンチエイジングを専門にしているところに行くと必ずやってくれます。一般の病院でも循環器科には、これをやってくれる医師がいます。

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