日本橋、謎を呼ぶ「MN」問題 「Niho“m”」か「Niho“n”」か東京ふしぎ探検隊(14)

駅と交差点で表記が違う

東京都中央区日本橋。江戸時代から続く商業の街を歩いていてふと気がついた。日本橋のローマ字表記が場所によって違う。ある場所では「Nihonbashi」、別の場所では「Nihombashi」。にほんばしの「ん」の表記が「n」の場合と「m」の場合があるのだ。一体どうしてなのか? 何か法則があるのだろうか? 謎を探っていくと、日本語が長年抱える問題が潜んでいた。

道路・銀行は「n」、駅は「m」?

日本橋交差点に立って空を見上げると、信号機の横に交差点名を書いた看板がある。「日本橋」という漢字の下は「Nihonbashi」。「ん」は「n」で書かれていた。視線を歩道に移すと、そこには地下鉄の出入り口があり、駅名は「Nihombashi」。こちらは「m」だ。

周囲を見渡してみた。地下鉄出入り口のすぐそばにあるビル、「コレド日本橋」は「n」、「日本橋三井タワー」も「n」だった。ビルの壁面に取り付けられた青くて細長い住所表示板のローマ字表記も「n」になっていた。

駅はすべて「m」。JR新日本橋駅も、東京メトロも都営地下鉄もすべて「m」だ。老舗百貨店、日本橋三越本店と日本橋高島屋もパンフレットなどの記載は「m」になっていた。

銀行はどうだろう。みずほ銀行と三井住友銀行では自動ドアにローマ字で支店名が書いてあり、「n」になっている。三菱東京UFJ銀行は店舗にはローマ字の支店名はなかったが、ホームページでは「n」になっていた。外国資本はどうか。シティバンク銀行も「n」で書いていた。

同じ「にほんばし」なのにどうして表記が2つあるのか。国立国語研究所に尋ねると、次のように教えてくれた。

「ローマ字には、英語の発音をベースに作ったヘボン式(標準式)の流れをくむものと、日本語の五十音に子音と母音を当てはめて作った日本式、両者を折衷した訓令式があります。ヘボン式の中には『n』の後ろに『b』『m』『p』がくる場合、『n』を『m』にする書式があるのです。修正ヘボン式と呼ぶ場合もあります」

Nihombashi」という表記はヘボン式の一種、ということか。

「n」の後ろに「b」「m」「p」がくる言葉は、「しんぶん」「さんま」「あんぱん」などもある。この修正ヘボン式に従うと「shimbun」「samma」「ampan」となる。

どうやらこの方が英語圏の人には読みやすいらしい。実際の発音に沿った表記にもなっているようだ。『ん 日本語最後の謎に挑む』などの著者で日本語の発音に詳しい大東文化大学の山口謡司准教授に聞いてみた。

「コレド日本橋」前の案内板には、「n」と「m」の両方の表記が混在していた

「NMB48」は「NNB48」だったかも?

「試しに『にほんばし』『かんだ』と声に出してみて下さい。nの次にb・m・pがくる『にほんばし』は唇を閉じた形で『ん』と発音していますが、b・m・p以外がくる『かんだ』だと唇は離れたままです。さんま、あんぱんでも同じです。発音上区別するために、『n』と『m』とで書き分けているのです」

地名では、大阪市の難波にもこの法則が当てはまる。難波は道路標識では「Nanba」だが、駅などの修正ヘボン式では「Namba」となる。もし秋元康氏が道路と同じローマ字表記を採用していたら、「NAMBA」のNとMとBが語源となった女性アイドルグループ「NMB48」は、「NNB48」となっていたかもしれない。

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