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仕事と子育ての「両立」は米国でも容易でない

米国NPの診察日記 緒方さやか

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 米国の医療機関などで働きながら、出産・育児を経験した著者が、仕事・出産・子育て・文化の違いなど、さまざまな切り口で、米国社会とそこで働く女性の現状を紹介。読めばリアルな米国が見えてきます。さて、今回取り上げるテーマは、米国におけるキャリアと家庭の両立問題――。米国でも「両立」は容易ではないのだとか。

職場近くの保育所は一週間で5万円もかかる

2012年に妊娠が分かってから、漠然と思い描いていたキャリアと家庭の両立の夢が、現実の課題として迫ってきた。アメリカでの制度上の産休・育休は、わずか12週間(注1)。上司に頼めば、2~3週間ほど延ばしてもらえるかもしれないが、いずれにしても保育所やベビーシッターを活用せざるを得ない。

仕事場の近くの保育所は、お昼休みに授乳しに行けるのがありがたいが、1週間500ドル以上と高額で、経営者の印象が悪かった。家の近くの保育所は2割ほど安くなるが、空きが出る保証がない。掲示板などを通して日本人の留学生などをベビーシッターとして安く雇うことは可能かもしれないが、子供の命を預けるわけだから、どうしても不安だ。仕事を週2~3日に減らし、しばらくは子育てに注力することも考えられるが、できれば今まで通り働きたい。でも、ダンナは、今のところ主夫になる気はなさそうである。

私はかつて、日米どちらの大学に進もうか迷った際、「将来、女性としてキャリアと家庭を両立しやすそうだから」という理由でアメリカを選んだ。日本に戻る道を諦めてまで欲しかった「両立」の道だが、いざ周りで子供を持つ人が増えてみると、アメリカでも「両立」は決して容易でないことが分かる。

男性が家に残って「主夫」となったケースもまれには聞くが、ほとんどの同世代の知り合いの家庭では、女性が勤務時間や日数を減らすか、「子供が1~2歳になるまでは」と仕事を辞めて対応しているようだ。アジア系やラテンアメリカ系の家庭では、親が近くに住んでいる場合、子供の世話を親に頼むこともある。もう少し裕福な家庭では、通いの乳母を雇って子供の世話を任せ、夫婦ともフルタイムで働き続ける例もあるが、子供への影響が心配で非常に苦しい決断のようだ。

子供が生まれる前は仕事に戻る気でも、「生まれてみたらどうしても置いていく気になれなくて…」という女性の話もよく聞く。自分はどうなるのだろうか。

注1)育児介護休業法 (Family Medical Leave Act)によって、 過去12カ月にその会社で1250時間以上働いた経験がある人は、自分の病気、病気の家族の世話、もしくは出産などの理由で、12週間まで無給の休みが保障されている。ただし、会社に5人以上の従業員がいなくては適用されない。育児介護休業法に加えて、長めの産休が取れる法律が制定されている州もある。

「仕事をしつつ母親でいたい」との決断に批判が…

さて、女性のキャリアについて、知り合いの間で評判になっている雑誌記事がある。米総合誌『アトランティック』に掲載された、"Why women still can't have it all"――なぜ女性はいまだに全てを手中にすることができないか――という刺激的なタイトルの記事だ。「地雷地帯に踏み入れていることを承知の上で書いた」という著者のアン・マリー・スローターさんは、元アメリカ合衆国国務省の政策企画本部長という超エリートの女性。2年間プリンストン大を休職し、政府内の非常に高い地位に就いた。女性としてこの仕事に就くのは彼女が初めてだったという。

スローター氏は、オバマ氏開催の重要なパーティーに出席しながら、学校でトラブルを起こしがちな14歳の息子のことが頭を離れなかった。2年の契約期間が終わって、自ら望んでプリンストン大に戻ると、「なぜワシントンD.C.に残らなかったの? 」と様々な女性に残念がられたという。確かに、政府内に残ればアメリカの外交政策にさらに大きく関わる機会があった。

とはいえ、プリンストン大での仕事が「簡単な仕事」なわけではない。教授として学生たちを教え、多くの著書を出し続け、年40回以上講演するキャリアを続けるのである。それでも、大学での仕事は政府の仕事と異なり、夫と2人の息子と同じ家に帰ることができ、ティーンエージャーとして難しい時期を迎えている息子たちのそばで、母親として見守ることもできる。だが、彼女は「仕事をしつつも、同時に母親でいたい」と、大学に戻る決断をしたことで、批判をされてしまうのである。

近年アメリカの若い世代は、雇用面や社会面から見た男女の平等について、かなり楽観的になっている。男性たちは、女性のパートナーが出産しても働き続けることを前提にしていることが多く、若い女性たちに対しては、「頑張りさえすれば、そして、結婚相手の選択さえ間違わなければ、家庭と仕事の両立は可能」というメッセージが繰り返される。

その一方、実際にはどんな壁が立ちはだかるのか、そしてそれがどんなに大変なのか、本音での議論はめったに交わされない。子供を預けることが女性にとってどんな心理的な負担を引き起こすのか。子供の発育のために母乳が奨励され、粉ミルクをあげる親は陰口を叩かれる一方、仕事場で十分に搾乳することがどんなに難しいか。男女の、子供に対する感情や行動のどこまでが社会のプレッシャーによって作られたジェンダーの幻想で、どこからが生物学的な違いなのか。そんな討論をしようとすれば、「女性の社会進出を遅らせる、偏見持ちだ」とのレッテルを貼られかねない危険があるのである。

男女平等になって、逆に家庭に入るようになった女性たち

スローターさんは、今のアメリカでは、「性別に関係なく、キャリアと家庭の両方を手に入れること」に対するサポートが不十分だと主張する。フルタイムのキャリアと家庭をうまく軌道に乗せている女性たちを見てみると、努力家で、職場の理解があり、協力的な相手と結婚しているなどの幸運に恵まれていることはもちろん、IQが150以上の天才だったり、住み込みのお手伝いさんを雇えるお金持ちだったりと、一般的な女性には真似できない条件がそろっている。それなのに、「現在のアメリカでは、女性は全てを手中にできる」と、努力次第では何もかも可能かのように言われている。これはアメリカのいわば「建前」で、アメリカンドリームにはかなっているかもしれないが、現実ではないと、彼女は指摘しているのである。

女性がキャリアと家庭のバランスを取りやすいように法律や慣習を変えていくには、政策立案者や企業のトップに女性がもっと増え、キャリアを追う女性にとってのロールモデルが増えていく必要がある。にもかかわらず、そのような生き方をしている女性たちさえも家庭を理由に一線を退くことがあるのだ。スローター氏の場合を見ても、プリンストン大のポストは確かに重職だが、結局、家庭とキャリアを秤にかけて家庭を選んでいる。実際に、どうアメリカを変えていくべきかという点については、残念ながらスローター氏は具体的な記述に至っていないが、それでも地雷を踏むことは承知で、色々な人々の間で正直な議論を巻き起こした彼女に、敬意を表する。

米国女性も、子育てとキャリアの両立に頭を悩ませている

ちなみに、アメリカで男女の平等化が進んできたといっても、ヨーロッパ、特に北欧には非常に大きな遅れを取っており、平均給与で女性の稼ぎは男性の81%にとどまっている(個人差も大きいようで、結婚している共働きの家庭で、妻の方が夫より稼ぎが多いケースも年々増え、現在では3割近いというデータもある)(注2)。

多くの母親、父親1年生たちが、子育てとキャリアの両立に頭を悩ませているのは、日本でもアメリカでも、そして男女雇用平等の先進国であるヨーロッパでも変わらないだろうと思う。どの国でも、仕事と自分の人生(子育てだけでなく、例えば子供を産まないことを選択した人なら、友達との時間や趣味など)の両立を目指すことは可能だし、目指すべきなのだと強く思う。女性だけの問題ではない。仕事や給料のために個人の生活を犠牲にするよう求められることの多い、男性の方こそ、むしろバランスを築くのが難しいのではないか。

皆が、基本的な生活のバランスと幸せの追求(PURSUIT OF HAPPINESS)を、人生におけるまっとうな権利として考え始めたら、身体のケアやメンタルヘルスへの意識はどう変わっていくだろうか? 一人の女性として、そして近い将来は母親として、悩みつつも、考えていきたいと思う。

注2)U.S. Department of Labor, U.S. Bureau of Labor Statistics, Women in the Labor Force: A Databook, December 2011 Report 1034 (accessed 22 July 2012)

緒方さやか(おがた・さやか)
 婦人科・成人科ナースプラクティショナー(NP)。2006年米イェール看護大学院婦人科・成人科ナースプラクティショナー学科卒。「チーム医療維新」管理人。プライマリケアを担うナースプラクティショナーとして、現在、マンハッタンの外来クリニックで診療にあたる。米ニューヨーク在住。

[日経メディカルオンライン 2012年10月31日付記事を基に再構成]

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