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結婚より「卵子の凍結保存」を希望する米国女性

米国NPの診察日記 緒方さやか

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NIKKEI STYLE

 米国の医療機関などで働きながら、出産・育児を経験した著者が、仕事・出産・子育て・文化の違いなど、さまざまな切り口で、米国社会とそこで働く女性の現状を紹介。読めばリアルな米国が見えてきます。さて、今回取り上げるテーマは、米国シングル女性の妊活――。結婚を焦る前に、卵子を冷凍保存する人もいるのだとか。

米国では、医師以外に、処方も含めて「診療行為を行う者」が多種類存在している。私の仕事はその一つ「ナースプラクティショナー(NP)」。簡単にいうと、看護師と医師との間に存在する職種。医師と並んで担当患者を持ち、診察、診断、処方などができ、州によっては開業することもできる。日本に同様の職種はまだない。

現在、ニューヨーク、マンハッタンの外来クリニックで、主に移民の患者さんを担当している。成人のプライマリケア(総合診療)を担うナースプラクティショナーとして、風邪や肺炎、糖尿病、高血圧などの疾患のほか、時には性病検査、鬱病、生理不順にまで対応する。

ナースプラクティショナーになるには、米国では、2年間程度の厳しい修士課程を一定以上の成績で終え、さらに認定試験を通らなければならない。

さて、このコラムでは米国ニューヨークに暮らし、現役ナースプラクティショナーとして働く著者が、日常診療のエピソードなどを交えながら、リアルな米国の姿を紹介する。1回目はニューヨーク女性の妊活事情だ。

不妊症ではないのに…なぜ?

久しぶりに、心理セラピストの女性の友人Aと会うことになった。「2人に1人は、セラピストか精神科医が必要」と冗談交じりで言われるマンハッタンで、セラピストとして開業するAは、多くのクライアントを持って成功しているニューヨーカーである。

30代後半になり、成功したワーキング・ウーマンらしく自信に満ちあふれた彼女だが、お化粧や買い物のような「女性っぽい」ことは大の苦手だという。いずれは結婚したいし、子供も欲しいと思いつつ、仕事で忙しい毎日を送ってきた。女性の多い分野で働いてきたこともあって出会いがなく、ここ数年はもっぱら結婚相手探しに熱中している。幸い、3カ月ほど前に結婚相談所を通じて出会った男性とは、気が合い、とてもうまくいっている、と彼女は電話でうれしそうに話してくれた。

そんな彼女が最近、マンションを購入したというので、ブランチをごちそうになりにお邪魔した。

「本当に、会うのは久しぶりだね!」とすてきなお宅でベーグルをかじりながら言うと、「そうね。先月とかは、体の調子が良くなかったから、あんまり人と会わなかったしねー」とA。

「え、なんか病気でもしたの?」

「いや、卵子を採取した後、なかなか疲れが取れなくてさ」

卵子を採取し、受精した卵を子宮に返すIVF(体外受精)は、不妊治療としては一般的だ。IVFによって生まれた子供も知っている。

しかし、彼女は不妊症ではないし、すぐに卵子を戻す予定もない。本人によると、まだ今は結婚する相手がはっきり決まっているわけではないから、40歳になる前に卵子を凍結保存したかったのだという。若い女性が、がん治療を受ける前に卵子を凍結することがあるのは知っていたが、健康な女性が行うのは非常にまれなケースだとばかり思っていた。しかし、よく考えてみると、最先端技術を複数の病院が競うニューヨークに住む、裕福な独身女性こそ、まさにその「非常にまれなケース」なのだった。

医学的理由なしに「卵子凍結希望」が8割

例えば、ニューヨーク大学病院の生殖医療センターの卵子凍結に関するサイトを見てみると、同センターで卵子を凍結した依頼者のうち約8割は医学的理由なしに凍結を希望する人々で、平均年齢は38歳とある。もちろん、ホルモン注射を打ち、卵子を摘出する手術を受けるわけだから体に負担はかかる。ジムに行くのが日課の彼女は、「一番つらかったのは運動を数週間禁止されたことね」と言っていた。そんな話を聞き、「こんな、ブランチを取りながら話題に出るような、気軽な話なのか」と、再び驚いた。ちなみに、手術の費用は1万5000米ドル(日本円で約150万円:1ドル100円で試算)だったという。ちょうど、IVFを1回(1周期)行うのと同じくらいの値段だそうだ。

「子供が欲しくて、焦って気が合わない人と無理に結婚して、後に離婚調停でお金がかかったり、逆に年をとってからいい人が見つかって不妊治療代を払うことを考えたら、今お金を使って健康な卵子を保存する方が、貯金しておくより断然いいわ」と、きっぱり言う彼女。

「いくら凍結保存といっても、早めに使う時が来るといいね」

「そうねえ」

そうして、話題は新しい恋人のことに移っていった。彼にとっても、新しい彼女から「子供を作るのにタイムリミットがあるから早く結婚したい」と言われて重荷に感じるより、 「卵子を凍結してあるから、時間をかけてお互いを知り合おうね」と言われる方が、気が楽なのだろうか? 面白い時代になったものだ!

中流社会の結婚観は超ロマンチック

アメリカの中流社会では、結婚の際には収入や学歴より、「魂のマッチング」を重視する。結婚は「真の親友、ソウル・メイトを探し当てた証し」だという、超ロマンチック主義なのだ。

日本でも同じかもしれないが、多くの働く女性にとって、恋人探しは決して簡単ではない。優秀な女性は専門職や会社の幹部など、能力に合わせてキャリアを伸ばせるようになってきた。同時に、アメリカの職場はヨーロッパ諸国に比べて勤務時間も長いことが多く、相手探しに費やせる自分の時間や趣味の時間が限られているといわれている。そこで結婚相手を妥協するよりも卵子の凍結を選択する、その合理性は実にアメリカ人らしい。

もちろん、 いくら彼女が(比較的)若いとはいっても、解凍後の卵子での妊娠、出産は確率的に低く、保証があるわけではない。卵子の凍結を「神を冒とくする行為」として反対するキリスト教団体も多くある。新しい分野のため、生まれた子供に健康上の問題がないのか、またホルモン注射を受けた女性の卵巣がんのリスクはどうなっているのかなど、はっきりしないことも多い。しかし、リスクや倫理的な反対論はあるにせよ、今のアメリカで、ごく一部とはいえ既に女性の生き方の選択肢として存在していることは否めない。

生物学上、このような選択を迫られない男性を羨ましく思いつつ、この分野が将来どう伸びていくのか、変わりゆく生殖分野の将来を、興味深く思っている。

緒方さやか(おがた・さやか)
 婦人科・成人科ナースプラクティショナー(NP)。2006年米イェール看護大学院婦人科・成人科ナースプラクティショナー学科卒。「チーム医療維新」管理人。プライマリケアを担うナースプラクティショナーとして、現在、マンハッタンの外来クリニックで診療にあたる。米ニューヨーク在住。

[日経メディカルオンライン 2012年5月18日付記事を基に再構成]

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