「周囲に迷惑をかけたくない」と思わない
前回までで、育児や介護との両立を考えると短時間勤務を選択せざるをえない人が今後ますます増えるだろうという話をしました。
そうなると20代~30代前半の時期は、自分の時間を100%自由に使える貴重な時期です。ぜひ自らのキャパシティーを広げることに時間を投じてみてください。
まずは目の前の仕事に真摯に取り組み知識やスキルを身に付けましょう。さらに1時間あたりの生産性を上げるように効率的な働き方を研究するのもいいでしょう。自己投資もぜひ積極的にしてほしいですね。こうして仕事人としての自らのキャパシティーを広げてみましょう。
社内外の人とのオープンで協力的な関係を築いておくことも大切です。人間関係は早急に育めるものではないですから、日々の関係の積み重ねを大事にしたいものです。
育児や介護による時間的制約の中で働く場合、周囲の協力体制は不可欠な要素です。サポートされるばかりではなく、時間的制約の中で自らがサポートできる部分だってあるはずです。助けたり助けられたり…そうした関係を日頃から築いておくことが求められます。
真面目で優秀な女性ほど「周囲に迷惑をかけるなんてありえない」「周囲に迷惑をかけてまで働けない」と言い、育児や介護との両立に悩んで「仕事を辞める」という選択肢を選びがちです。しかし、今は給与が右肩上がりとはいかない不安定な時代です。一方で年金の支給開始年齢引き上げの問題もあり、多くの人が65歳くらいまでは男女関係なく可能な限り働き続ける可能性が高まっています。その時、必要なのが周囲の力です。周囲に時に頼ったり頼られたりしながら、働き続ける道を選んでほしいと思います。
「管理職的な視点」を持ちながら働こう
見ていると、女性は目の前の仕事をこなすことに精いっぱいになってしまっている人が多いように感じます。ある程度、仕事に没頭することで身に付くスキルはありますし、決して悪いことではありません。けれども「働き続ける」ということから考えると、20代の頃から「自分はどうありたいのか」といった長期的なイメージを持ったうえで、そこへ向けて必要とされるスキルや経験を積んでいくことを意識して行動することは重要です。
誰もが管理職を目指す必要はありません。しかし、「管理職的な視点」を持つことは職業人として成長していく上で、すべての人にとって必要なのではないでしょうか。「管理職的な視点」から、今、自分が担っている仕事の意味や自分の振る舞い方を考えることで、成長に向けての課題が見えてくると思います。
会社全体、プロジェクト全体から見て自分の仕事の意味をとらえ、アウトプットを出していく姿勢で仕事に取り組んでみましょう。
この人にお話を聞きました
三菱UFJリサーチ&コンサルティング女性活躍推進・ダイバーシティマネジメント戦略室室長。中央大学大学院戦略経営研究科客員教授。近年は、特に、「職場における短時間勤務の運用方策」や「短時間勤務等多様な働き方に前提としたキャリア形成のあり方」、「仕事と介護の両立支援」に着目した調査研究を行う。著作に、『女性の働き方』」(共著、ミネルヴァ書房)、『国際比較の視点から日本のワーク・ライフ・バランスを考える』(共著、ミネルヴァ書房)、『ワーク・ライフ・バランスと働き方改革』(共著、勁草書房)など。内閣府「少子化社会対策推進点検・評価検討会議」委員(2008年)、文部科学省「女性のライフプランニング支援総合推進事業」委員(2009年~2011年)、東京都「次世代育成新行動計画評価懇談会」委員(2010年~)などを務める。http://www.murc.jp/corporate/cnsl_intl/diversity
(ライター 田中美和)
[nikkei WOMAN Online2013年12月30日付記事を基に再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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