ナメクジまつる奇祭、興味津々のぞいてみた団塊オヤジのナメクジ探索

私が最初に岐阜県の加子母(かしも)村(現在は中津川市加子母)を訪れたのは、2004年の夏のことだ。

そのころ、日本経済新聞の日曜朝刊に「遅咲きのひと」という連載を書いていた。鎌倉時代の僧侶で3度も流刑になる文覚(もんがく)上人を取り上げようと、あれこれ調べていた。加子母の大杉地蔵尊の脇にある上人の墓に出現するナメクジをまつる「なめくじ祭り」があるとの情報に出合った。

岐阜・加子母の「なめくじ祭り」で文覚上人の墓石を登るナメクジを見る人たち(2010年8月、岐阜県中津川市)

既にナメコロジー研究会を立ち上げてもいたので、興味津々で祭りをのぞいてみることにしたのだった。

上人は若いころ、人妻である袈裟(けさ)御前に恋をして、誤って殺害。罪を悔いて出家する。仏教の九万九千日に当たるこの日は、袈裟御前の命日にも当たり、今は罪を許した彼女はナメクジに化身して上人を慕い、墓を這(は)う。それが旧暦の7月9日で、もともと住民が参拝する習慣があった。

当初100人足らずの参加者、4000人に膨らむ

ロマンチックな伝説を「祭りにしてみよまいか」と地蔵尊の周辺、小郷(おご)集落の農家の人たちがアイデアを持ち寄り、「なめくじ祭り」を始めたのが1986年。なめると字が浮き上がるダジャレ企画「なめクジ」を販売したり、やぐらを囲んで盆踊りを楽しんだりの祭り第1回は、集まったのが100人足らず、クジも80枚しか売れなかった。

4枚1000円分の「なめくじ」

ところが、年がたつにつれ奇祭としての知名度が上がる。2012年8月26日のなめくじ祭りは、わずか144戸の集落に4000人の人たちが詰めかけた。三角くじに形を変えたなめクジ(1枚250円)は2400枚が完売となる盛況ぶりだ。ちなみにこの日文覚上人の墓に現れたのは、在来種のフタスジナメクジ10匹だった。

海の向こう米国にもなめくじ祭り(Slug Festival)はある。北西部に位置し、全長25センチほどのバナナナメクジなどが生息するナメクジの宝庫、ワシントン州のノースウエスト・トレック・ワイルドライフ・パークでは、6月末の土日に開催している。

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