キーワードは「少女マンガ的」

登場人物をイラスト化したカバーが一般化したことも、キャラノベの間口を広げることにつながった。かつては若年層向け作品に限定されていたイラスト表紙が、ここ数年で大人も読む時代小説や一般文芸でも多用されるようになった。一般読者のイラスト表紙への抵抗感が薄れただけでなく、主要人物が表紙にビジュアル化されることで作品の世界観や人物イメージをひと目で把握できると喜ぶ読者も少なくない。装丁からは中身が分からないという小説本のデメリットを、イラスト表紙で解消できるようになったともいえる。

「単にイラストを表紙に使うのではなく、内容とイラストを1つのパッケージとして小説を売る手法が広まったのです」(関口氏)

もともと大のマンガ好きで知られる三浦しをんは、デビュー当時から作風がマンガ的だとも評されてきた。『舟を編む』は表紙こそシンプルだが、帯には登場人物のキャラクターが飾られている。

「30代以上の、マンガやテレビドラマの黄金期に育った世代が書く小説は、分かりやすいエンターテインメントの志向が強いと思います」という関口氏の見解は、現在活躍しているキャラノベ作家にぴったりと当てはまる。マンガやテレビのビジュアル的な発想が反映された小説だからこそ、イラスト表紙との相互作用も生まれてくる。柏井氏も、「キャラクターノベルを書ける作家は、マンガをきちんと楽しめる人だと思います」と、作家の傾向を読み解いている。 キャラノベ人気を支えているのは、コアな女性読者。そこにがっちり愛されるには、男性作家であってもマンガに慣れ親しみ、どこか女性的な感覚を備えていることが重要になってくる。その観点から注目なのが、左上の朝井リョウ、青柳碧人(あいと)、相沢沙呼(さこ)。女性的な感受性を備えた男性が生み出す物語は、このジャンルをさらに面白くしてくれるだろう。

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シリーズ累計350万部「心霊探偵八雲」シリーズ