かさつき、ひび割れ、かゆみ… 冬に手が荒れる理由
日経ヘルス
冬は手荒れの季節。毎年、手のかさつきやひび割れ、かゆみなどに悩まされる人も多いのではないでしょうか。
そもそも、なぜ冬になると手荒れが起きるのでしょうか。「気温が下がり、空気が乾燥することで手の水分が蒸発しやすくなるため。手指が冷えて血液循環や新陳代謝が鈍くなり、角層が硬くなるのも手荒れの原因です」と話すのは、野村皮膚科医院の野村有子院長。
本来、手の表面からは汗や皮脂が分泌され、「潤いバリア」が作られています。これが水分の蒸発を防ぎ、さまざまな刺激から守っているのです。しかし、潤いバリアは手を洗っただけで落ちてしまいます。
「しかも冬は、お湯を使う、カゼ予防で手洗いや消毒の回数が増えるなど、バリアが再生しかかると落とされるという繰り返しで、いっそう手荒れリスクが高まる」と、東北労災病院皮膚科の谷田宗男部長。
手のひらは、酷使に耐えられるように角層が厚い構造になっていますが、油断は禁物です。
「潤いバリアがなくなると角層の表面はカサカサになり、さらに乾燥しやすくなります。角層は硬く、ひび割れが起きやすくなる。また、ダイレクトに刺激を受けてしまうため、傷ついた角層から刺激物が内部へ入りこみ湿疹などができることもあります」(谷田部長)
手を酷使する職業は手荒れの進行に注意
手荒れがひどくなると、進行性指掌角皮症(ししょうかくひしょう)という症状を招くこともあります。
「指先のかさつきや指紋の消失に始まり、手のひら全体の乾燥・角化、そして手湿疹へと進行していきます。夏に良くなって、冬にひどくなるのが特徴です。水仕事や指先に刺激が加わる作業の多い主婦、美容師、飲食店員、銀行員などに多いといわれています」(谷田部長)
手荒れを防ぐには、手洗いや水仕事のあとはハンドクリームで潤いバリアを補い、外出時には手袋をするなど乾燥から守ることも大切。ちょっとしたセルフケアの積み重ねが手荒れを寄せつけない秘訣です。
~冬は手荒を招く要因がいろいろ~
お湯をよく使う
お湯は食器の油汚れを落とすように、潤いバリアの油分も奪ってしまうもの。バリアの保護がなくなった角層から水分が蒸発することがカサカサの原因になる。
空気が乾燥している
冬の外気はもちろん、室内も暖房のせいで乾燥気味。空気が乾燥すると、体の水分が蒸発しやすく、潤いバリアのもとになる汗もかきにくくなる。暖房を入れたら加湿も忘れずに。
大掃除で水を使う機会が増える
ほこりがついたり、掃除のためにいろいろな場所を手で触れること自体が手荒れのもと。さらに換気扇やレンジまわりなどの掃除に、強力な汚れ落とし洗剤を使うことも手には悪影響。
カゼ予防で手を洗う回数が増える
カゼ対策で、手洗いや消毒剤で手を殺菌する機会が増える。薬用石けんや消毒の殺菌成分にはアルコールが含まれていることもあり、手の水分、油分を奪う原因になるので要注意。
手や指が冷える
冬は、末端の血液循環が悪くなり、手指が冷えやすく、新陳代謝も鈍くなる。そのため角層のターンオーバーもうまくいかず、角層が硬くなり、ひび割れの原因に。外出時には手袋を。
この人たちに聞きました
東北労災病院皮膚科部長。物理的因子疾患研究センター主任研究者として職業性皮膚障害の研究にあたり『理・美容師の手あれ予防ガイドブック』を作成。染毛剤のパラフェニレンジアミンによる皮膚炎に注意を促す。
野村皮膚科医院院長。慶応大学医学部皮膚科教室を経て開業。「ひどい手荒れでも諦めないで」と女性にエールを送る。共著に『やさしい治療+こころのケア アトピーカウンセリング』(日本医療企画)。
(ライター 海老根祐子、日経ヘルス 大屋奈緒子)
[日経ヘルス2012年2月号の記事を基に再構成]
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