K-POPについては、YouTubeのトップページには、常に韓国アーティストの最新映像がアップロードされている。事務所にとって、アーティストを飛行機に乗せて海外でプロモーションさせるには莫大なコストがかかる。しかし、新しい映像をインターネットで発信すれば、配信コストはタダだ。こうした、ネットを巧みに使った戦略を評価する日本の音楽関係者は多い。

「今や、iPhoneに曲をダウンロードして聴いて、YouTubeで映像を見るというスタイルが世界の若者には定着している。そういう聴き方に合った“音の付いた映像”を提供したから、K-POPは成功した」(元ソニー・ミュージック社長で韓国最大の芸能プロダクション、エスエム・エンタテインメント・ジャパンの特別顧問の丸山茂雄氏)。この点で、日本は立ち遅れているというのだ。

この10年でエンターテインメント産業の人材も育った

右の図の中の世界地図は、YouTubeのサイト上で公開されている、どの国のユーザーが映像を見ているかが分かるデータ。比べてみると、K-POPアーティストがうまく本国以外のユーザーの興味を引いていることが分かる。

一方、韓国のコンテンツ企業や政府は将来の業界を担う人材の育成にも注力していきた。1997年、アジアの通貨危機により、韓国はいわゆる“IMF危機”に陥った。株が暴落し、多くの企業が倒産する国家的な経済危機に直面し、韓国政府は財政再建と同時に、世界に勝つための経済政策として、IT産業や、文化事業の振興を選択した。

「その結果、2000年前後から、音楽や映像のプロを育てる大学や専門学校が数々、韓国内に設立された。その後の10年で、音楽、映像の専門教育を受けた人材が育ち、今の韓流ブームを現場で支えている」(韓国の音楽専門テレビ局、CJ E&M 日本支社のベ・ソンミン氏)。

東方神起や少女時代といったスターが所属するエスエム・エンタテインメントにおいて、日本で韓国アーティストが活躍する先駆的な例を作ったのはBoA。彼女が日本で最初のミリオンヒットを記録した2002年当時、彼女は日本に活動の場を置き、完璧な日本語を習得して成功した。それから約10年を経て、後輩の少女時代が、アルバム「GIRLS' GENERATION」でミリオンを達成(日本レコード協会発表)。韓国アーティストとしてはBoA以来の記録だ。

もっとも、少女時代は、日本に拠点を移していない。それでもヒットに導いたのが、YouTubeといったネット配信技術と、この10年で育った韓国の若いスタッフたちだった。今後、日本においても、海外で日本人アーティストが活躍できる体制を立て直す必要がある。ネット環境も音作りの技術も日本には整っている。必要なのは、過去のしがらみにとらわれず、今のファンのニーズを形にできる若い世代の人材育成だろう。

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映像で音楽は国境の外へ ネットを使って速さの勝負