2013年、韓国・北欧…政治で「女性トップ」誕生のなぜ
スウェーデンから見る日本 高見幸子
2013年に韓国で女性の大統領が誕生しました。日本では2012年末の総選挙で、戦後初めて女性議員比率が下がり、8%とひとけた台に逆戻り。女性政治家の勢いが少し後退した印象があります。世界経済フォーラムが発表した「ジェンダー・ギャップ報告」では、日本は135カ国中101位と、前回の98位からさらに後退しています。韓国は111位です。なのにどうして女性大統領が誕生したのでしょう? またスウェーデンでは女性政治家が多いですが、どのような経緯を経て現在のようになったのでしょうか? (40歳・会社員)
女性のトップがトレンドに
2013年2月に韓国で女性の朴槿恵(パク・クネ)大統領が誕生したことは、2013年の大きなニュースの1つでした。日本の女性は、多いに刺激になったのではないでしょうか。
ヨーロッパでは、ドイツでメルケル首相、デンマークでヘレ・トーニング・シュミット首相が、女性首相として活躍しています。北欧では、すでにノルウェー、アイスランド、フィンランドで女性の首相、大統領を誕生させています。また、2011年にタイとブラジルで初めて女性首相、大統領が誕生するなど、女性の政治のトップへの進出に旋風が吹いているように思います。
この中で、韓国とタイに共通点があります。それは、「ジェンダーギャップ指数」の順位が低いこと、両者とも父親が首相だったことです(韓国のジェンダーギャップは111位、タイは65位、日本は105位、2013年発表)。政治家として優秀でカリスマがあることがトップになった一番の理由でしょうが、アジア的な世襲の文化も背景にあるように思います。
世襲の是非は別にして、女性の首相が誕生したことは歓迎すべきことだと思います。
国会議員に女性が増えることが、女性首相誕生のポイント
スウェーデンのジェンダー・ギャップ指数の順位は4位ですが、残念ながら女性の首相はまだ登場していません。
とはいえ、国会議員の45%が女性で、24人の大臣のうち54%の13人が女性です。彼女たちは、法務大臣、産業大臣、防衛大臣、環境大臣、平等大臣、労働市場大臣、インフラ大臣など社会的に影響力のあるポジションにいます。
また、最近、若い女性が政治界で影響力を持つようになってきています。例えば、現在、環境党と中央党に若い女性の党首がいます。また、連立保守政権に属している中央党の党首は、29歳で党首になり、産業大臣を務めています。
このように、女性首相の予備軍は着実に育ってきており、スウェーデンで女性首相が誕生するのは、時間の問題だと思います。
かつてのスウェーデンは男性優位の考え方が強かった
スウェーデンが女性と子どもに優しい社会を構築することができた最大の理由は、この30年間で、政治界に女性の存在を増やせたことだと考えています。
今のスウェーデンの若い女性たちは、女性の権利や子育て支援を、ずっと以前からあった当然のものと思っていますが、そうではありません。女性がおとなしく待っていて与えられたものではありません。
かつてのスウェーデンは父長制度の国で、男性優位の考え方が強かったからです。そのうえ、狩猟の文化があるせいか、日本に比べ、非常にマッチョな男性像があります。今の女性の地位は、現在60歳以上の世代の女性たちが30年かけて闘って勝ち取った権利なのです。
クオータ制を採用し女性議員の数が倍増 韓国も同制度を導入
スウェーデンで女性議員が45%と多いのは、女性が頑張って、強く要求して導入したクオータ制のお陰でした。
スウェーデン最大の政党が立候補を立てる時、必ず半数は女性が当選する「クオータ制」を導入したことから、ほかの政党もクオータ制を続々と導入したのです。70年代20%台だった女性議員が、クオータ制を導入した1994年に40%台に上がりました。そして、大臣も半分は女性にすることも実現できました。
韓国に女性の大統領が誕生したことはすばらしいと思いますが、2000年に比例代表の候補の30%を女性にするというクオータ制度を導入したことはもっとすばらしいと思います。制度に問題があってあまり成果が出ていないともいわれていますが、2000年に女性議員が5.9%だったところを2004年に13%、2012年に15.7%と伸ばしています。
日本は、女性の政治参加が少ないことを長らく問題にしながらも効果的な政策が何も導入できていません。韓国のように、トライする勇気がほしいと思います。
いつまでも男性だけに政治を任せないで
現在の自民党政権では、閣僚のうち2人しか女性がいません。日本の政治を、いつまでも男性だけに任せていてはいけないと思います。
国民の声を代表するためには、国民の50%は女性なのですから、議員も50%女性になることを目指すのが当然だと思います。そうすれば、国民の意志を反映した政治になるでしょう。女性の力の活用の本格化は、待っているだけではいつになっても実現しません。
日本のみなさん、あきらめないで頑張ってください!
1974年よりスウェーデン在住。15年間、ストックホルムの基礎学校と高校で日本語教師を務める。1995年から、スウェーデンへの環境視察のコーデイネートや執筆活動等を通じてスウェーデンの環境保護などを日本に紹介。2000年から国際NGOナチュラルステップジャパンの代表。現在、顧問として企業、自治体の環境ファシリテーターとして活動中。共著『スウェーデンは放射能汚染からどう社会を守っているのか』(合同出版)など
[ecomomサイト2012年8月7日付記事を基に再構成]
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