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どっこい生きている「田中角栄」 没後20年この10冊

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NIKKEI STYLE

「決断と実行」「庶民宰相」「闇将軍」――。田中角栄元首相(在任期間1972~74)が死去して12月16日でちょうど20年。戦後政治の光と影を体現した元首相のいわゆる「『角栄』本」の出版はいまだ後を絶たない。金権・金脈の権化、派閥政治の象徴といった批判から、「角さん」と呼ばれ、高等小学校卒の学歴にもかかわらずただ一人宰相まで上り詰めたカリスマ的な魅力を慕うものまで様々だ。全盛時を知らない若い世代からは政策の再評価を試みる動きも出てきている。最近刊行された中から10冊を選んでみた。

「最後の秘書」が口を開くとき

田中元首相は1918年(大正7年)に新潟県二田村で生まれ、72年(昭和47年)には54歳で首相に就任した自民党の領袖。日中国交正常化などを実現したが2年後には「金脈」批判を受けて退陣した。76年にはロッキード事件で逮捕、起訴された。ただその後も最大派閥の田中派を率い、病気に倒れるまで影響力を政界に及ぼし続けた。93年(平成5年)に75歳で死去。細川護熙元首相、小沢一郎氏らが田中派の出身。自民党の石破茂幹事長は田中派の事務局に勤めていたことがある。

今月初旬に出版されたのが「角栄のお庭番 朝賀昭」(講談社)。大学生時代から田中元首相の秘書を務めた朝賀氏の回想録だ。「越山会の女王」といわれた佐藤昭子氏、「田中神話」の語り部・早坂茂三氏といった名物秘書の多い中で朝賀氏は「仕えた政治家のことは話さない」といった古風な不文律を守ってきた最後の秘書。自らも後輩秘書にはそう指導してきたという。

しかし「自民党実力者との会談内容に始まり、ゴルフのマナーに至るまで誤った田中像があまりにも世間に流布され過ぎている」(朝賀氏)。親しい新聞記者の取材に応じる形で出版を決めた。田中事務所に務めた日々を顧みながらヒーローでも巨悪でもない、いわば等身大の田中角栄像を描き出している。

「政治は力なり、力は数なり」の手法を推し進めたとみられる田中元首相。しかし朝賀氏は「折に見せる人間的な優しさ、弱さに皆ひかれた」と話す。人間臭くも温かみのあるエピソードを今日の2世出身や官僚OBの政治家から聞くことは少ない。そういった事情も「角栄本」が出版され続けている一因のようだ。「田中角栄秘録」(大下英治著、イースト・プレス)は本人の言葉やエピソードを分かりやすくまとめたもので、若い世代向きのいわば入門書。

1人の政治家に密着して取材する番記者「元田中番」の本も多い。代表的な1冊は「田中角栄」(早野透著、中央公論新社)だろう。著者は「とりわけ恵まれない地域を繁栄に導いた人物と、札束を配って権力を求め権力から札束を生み出した人物のどっちが田中角栄か」と自問しながら75年の生涯を詳述する。田中流の「利益還元政治」は見方を変えれば「社会民主主義」だったとも評価している。

したたかな外交手腕を発揮

伝記や評伝は通常47年(昭和22年)に衆議院で初当選してから72年(昭和47年)に首相に就任するまでのスピード出世物語を中心に置いている。しかし「戦場の田中角栄」(馬弓良彦著、毎日ワンズ)は逆に政界進出前の「青年・角栄」の軌跡に焦点を当てた意欲作。全体の4割を費やし克明に再現している。著者は「戦後政治の鬼才としての田中角栄を再評価すべきだ」とも説く。

若い世代による田中政権の政策検証も始まっている。「日中国交正常化」(服部龍二著、中央公論新社)は元首相の外交家としての優れたリーダーシップを指摘した。政権誕生から僅か2カ月半、当時の「日中ブーム」の勢いに乗って電撃的に実現させたかに見えたが、その裏には緻密な戦略があった。

「外交の素人」を自認していた田中元首相だったが「ポスト佐藤」を巡る自民党総裁選の約1年前には中国問題の勉強会を立ち上げていた。ニクソン訪中の1カ月前にあたる72年1月には対中国レポートが完成していたという。新政権の外相には元外相で政治的盟友の大平正芳氏を起用、さらに(a)日米安保体制を揺るがせない(b)台湾との民間交流などの余地は残す(c)「日本軍国主義」という言葉は使わない――といった原則を守った交渉だったという。

田中元首相は「政権が一番力のある時に一番困難な問題を手がける。毛沢東、周恩来の目が黒いうちに勝負を決めなくてはならない」と強調していたそうだ。著者の服部龍二・中央大教授は「先見の明があり国交正常化の時期を見切っていた。国内政治にも目配りが利いていた」と高く評価する。

神戸学院大の下村太一講師は「田中角栄と自民党政治」(有志舎)で内政面を分析した。田中元首相は「都市改造」「工業再配置」といった官僚、政治家、知識人のアイデアを貪欲に取り込むことによって、高度成長によって生じた政治課題に対応できる新しい政治家としての自分像をつくり上げていく。ただ最大の公約だった「日本列島改造論」推進に欠かせない「工場追い出し税」創設を自民党支持層の反対で自ら取り下げた時に、政策の核を失ったとしている。

服部教授は68年(昭和43年)生まれで、72年の「田中ブーム」時はまだ物心つかない幼児にすぎない。下村講師に至っては77年(昭和52年)生まれで、既に退陣、ロッキード事件で逮捕された後になる。特別な思い入れを持たずに田中元首相を分析する研究者が育ってきている。「史料公開が進んだことで70年代の外交政策の解明が可能になった」(服部教授)。さらに当事者へのインタビューを通じ現代史を再構築する「オーラルヒストリー」手法の普及も田中政治の見直しにつながっている。

田中角栄に消えた闇ガネ」(森省歩著、講談社)は田中政権時代の「金大中事件」を扱った。当初は長期政権が予想されながら実際は約2年5カ月で退陣を余儀なくされた。そこから国際的な謀略説を唱える本も出ている。もっとも現代史を研究する大学教授らからは疑問、否定の声が上がってはいる。

「日本列島改造論」に厳しい批判

あえて一歩距離を置いて観察した田中角栄像が浮かび上がってくるのが「政客列伝」(安藤俊裕著、日本経済新聞出版社)。日経電子版の連載を単行本化した。戦後史に深く関わった川島正次郎、保利茂、椎名悦三郎、金丸信といった保守領袖と田中元首相との一筋縄ではいかない政治的関係が活写されている。

国内の経済政策には批判が多い。「高度成長――昭和が燃えたもう一つの戦争」(保阪正康著、朝日新聞出版)では高度成長の末の「大衆の欲望がつくり出した首相」と表現する。「あなたの欲望を政治的スローガン、政策にして実現していきます」という型破りの首相だったとしている。国際的なインフレ兆候の中で発足した田中政権を「初めから悲劇的な様相を帯びていた」と結論づける。

藤井信幸・東洋大教授はより厳しい。著書「池田勇人」(ミネルヴァ書房)の中では民間の活力を引き出したとする池田政権に対し、田中政権を「国家主導の経済政策」と指摘する。列島改造論は「ふるさと回帰というロマンティシズムで彩られ、実現可能な具体的政策に乏しかった」と批判している。

もっとも、田中元首相の伝記や評伝にはまだまだ開拓の余地がありそうだ。たとえば64年(昭和39年)の東京五輪との関わりだ。番外の11冊目、月刊誌「東京人」11月号(都市出版)には、国立屋内総合競技場に建築家の丹下健三氏の要望を受けた田中蔵相が多額の予算を付けたというエピソードが紹介されている。田中真紀子元文科相はインタビューの中で「朝に丹下先生と話した後の父(=田中元首相)は嬉しそうで夜まで機嫌が良かった」と話している。

「父は建築と都市計画が趣味だった」(真紀子氏)。政治の重要性を熟知していた丹下氏との間で将来の東京像についてどんな会話がされていたのか。対立する派閥の幹部からは「良くも悪くも300年に1人の政治家」と皮肉られたこともあるという田中元首相。今後の研究からは現代史の意外な一面を見つけ出せるかもしれない。(電子整理部 松本治人)

角栄のお庭番 朝賀昭

著者:中澤 雄大
出版:講談社
価格:1,890円(税込み)

田中角栄秘録 (イースト新書)

著者:大下英治
出版:イースト・プレス
価格:966円(税込み)

田中角栄 - 戦後日本の悲しき自画像 (中公新書)

著者:早野 透
出版:中央公論新社
価格:987円(税込み)

戦場の田中角栄

著者:馬弓 良彦
出版:毎日ワンズ
価格:1,575円(税込み)

日中国交正常化 - 田中角栄、大平正芳、官僚たちの挑戦 (中公新書)

著者:服部 龍二
出版:中央公論新社
価格:840円(税込み)

田中角栄と自民党政治 列島改造への道

著者:下村 太一
出版:有志舎
価格:2,520円(税込み)

田中角栄に消えた闇ガネ 「角円人士」が明かした最後の迷宮

著者:森 省歩
出版:講談社
価格:1,785円(税込み)

政客列伝

著者:安藤 俊裕
出版:日本経済新聞出版社
価格:2,310円(税込み)

高度成長――昭和が燃えたもう一つの戦争 (朝日新書)

著者:保阪正康
出版:朝日新聞出版
価格:861円(税込み)

池田勇人―所得倍増でいくんだ (ミネルヴァ日本評伝選)

著者:藤井 信幸
出版:ミネルヴァ書房
価格:3,150円(税込み)

東京人 2013年 11月号 [雑誌]

著者:
出版:都市出版
価格:900円(税込み)

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