エンタメ!

歴史博士

どっこい生きている「田中角栄」 没後20年この10冊

2013/12/16

「決断と実行」「庶民宰相」「闇将軍」――。田中角栄元首相(在任期間1972~74)が死去して12月16日でちょうど20年。戦後政治の光と影を体現した元首相のいわゆる「『角栄』本」の出版はいまだ後を絶たない。金権・金脈の権化、派閥政治の象徴といった批判から、「角さん」と呼ばれ、高等小学校卒の学歴にもかかわらずただ一人宰相まで上り詰めたカリスマ的な魅力を慕うものまで様々だ。全盛時を知らない若い世代からは政策の再評価を試みる動きも出てきている。最近刊行された中から10冊を選んでみた。

「最後の秘書」が口を開くとき

死去から20年経ても人々の関心が衰えない田中角栄元首相

田中元首相は1918年(大正7年)に新潟県二田村で生まれ、72年(昭和47年)には54歳で首相に就任した自民党の領袖。日中国交正常化などを実現したが2年後には「金脈」批判を受けて退陣した。76年にはロッキード事件で逮捕、起訴された。ただその後も最大派閥の田中派を率い、病気に倒れるまで影響力を政界に及ぼし続けた。93年(平成5年)に75歳で死去。細川護熙元首相、小沢一郎氏らが田中派の出身。自民党の石破茂幹事長は田中派の事務局に勤めていたことがある。

今月初旬に出版されたのが「角栄のお庭番 朝賀昭」(講談社)。大学生時代から田中元首相の秘書を務めた朝賀氏の回想録だ。「越山会の女王」といわれた佐藤昭子氏、「田中神話」の語り部・早坂茂三氏といった名物秘書の多い中で朝賀氏は「仕えた政治家のことは話さない」といった古風な不文律を守ってきた最後の秘書。自らも後輩秘書にはそう指導してきたという。

自民党総裁選で記者会見する(左から)大平正芳、三木武夫、田中角栄の各氏=1972年7月2日、東京・ホテルオークラ

しかし「自民党実力者との会談内容に始まり、ゴルフのマナーに至るまで誤った田中像があまりにも世間に流布され過ぎている」(朝賀氏)。親しい新聞記者の取材に応じる形で出版を決めた。田中事務所に務めた日々を顧みながらヒーローでも巨悪でもない、いわば等身大の田中角栄像を描き出している。

「政治は力なり、力は数なり」の手法を推し進めたとみられる田中元首相。しかし朝賀氏は「折に見せる人間的な優しさ、弱さに皆ひかれた」と話す。人間臭くも温かみのあるエピソードを今日の2世出身や官僚OBの政治家から聞くことは少ない。そういった事情も「角栄本」が出版され続けている一因のようだ。「田中角栄秘録」(大下英治著、イースト・プレス)は本人の言葉やエピソードを分かりやすくまとめたもので、若い世代向きのいわば入門書。

【関連キーワード】

田中角栄

エンタメ!新着記事

ALL CHANNEL