2013/12/16
航空会社の客室乗務員を思わせる服で、参加者に「旅」の気分を味わってもらう

カンボジアの会は「第55便」、すなわち55回目だった。これまでの参加者の中心は20代から30代。「食・旅・学び」が好きな人たちが集まる。「ガイド」が女性だったためか、今回の参加者は圧倒的に女性が多かった。

シリアの回では、トルコに避難している学生がインターネット経由のテレビ電話で話をした。大手企業の社内企画として開いたこともあった。東京以外の街での開催もどんどん増えている。場所も中身も半ば自然に広がるのは、土台となった発想に魅力があるからだろう。

一緒に食べればみんな友達

シリアスな講演会では、シリアスな面しか伝わらない。参加者も広がりにくい。1つの国の持ついろいろな面を伝えたい。そう思ったとき、食事は「文化の多様性」を肌で実感でき、なおかつ楽しい体験をシェアできるツールだ。「人を知りたい、親しくなりたいと思ったとき、一緒に食事に行きますよね。国も同じだと思うんです」と松沢さんは言う。

3人がランチトリップを始めたのは2008年。発端は松沢さんが早稲田大学在学中に体験した米国留学だという。もともと食べることと旅が好き。留学中も日本を知らない友人を集め手巻きずしパーティーを開くなど、楽しい時間を過ごした。そうした中、近所で1つの殺人事件が起きる。

ターバンを巻いた男性が「米国の敵であるイスラム教徒」とみられ、殺されたのだ。異文化を憎悪する人々がいる。しかも、そもそもこの男性は「シーク教徒」であり、イスラム教徒ではなかった。無知による誤解、偏見、そして偏狭さが重なったところで、1つの命が失われた。

「犯人には『知る機会』がなかったのでは」と松沢さん。良い面も悪い面も含め、ある国や地域の「意外な面」を知る機会をつくりたい。おいしいものを食べながらであれば、伝える側も聞く側も、楽しいだろう。学生時代からの友人である畠田さん、長谷川さんを誘い、ランチトリップが始まった。

開会直前、スタッフと機材をチェックする(中央が松沢さん)

遠からず日本にも外国人がもっと増える。無知、誤解、憎悪による犯罪が起きてほしくない。そのためにはまず「相手の国のことを知ろうとする」こと。その手段が、例えば旅行だ。現地の人とふれあい、生活を見て、知らない一面を知り、固定概念が覆る。現地の人の目線でその国や世界を見る人が増えれば、憎悪による犯罪のない世の中が近づく。

そうした体験を、実際の旅行だけではなく、日本にいながら可能にしたい。それがランチトリップだ。

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海外に日本を“出前”したい