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やっぱり大政党に有利? ドント方式の数学的な証明 桜美林大学教授 芳沢光雄

2012/9/18

大半の野党が欠席の中、与党の賛成多数で可決された衆院選挙制度改革関連法案(8月28日、衆院本会議)

 次期衆院選に向けた政界の動きが激しくなってきた。選挙で思い出すのが、1990年代半ば、数学の大切さを訴える活動を始めたころのことだ。政治学者から「日本の比例選挙で使われるドント方式は大政党に有利に働くはずだが、数学的な説明を書いた文献がないか」と尋ねられた。この質問がきっかけで、ドント方式の性質を著書で紹介するようになった。少数政党が合併して1つの党になると、同じ得票数でも当選者数は合併前の合計数以上になるのである。今回はこの性質を、中学校で習う範囲の数式で証明したい。

■2つの党が合併すると当選者は同じか1人増える

 ドント方式とは、各政党の総得票数をそれぞれ1、2、3、4…と自然数で割っていき、割った得票数(商)の多い順に議席を配分する方法だ。衆院選や参院選の比例区で使われている。まずは具体例を用いて、どのようなものなのかを説明しよう。

 当選者数が10人のドント方式による比例選挙があり、A、B、Cの3党が立候補したとする。そして選挙での得票数は、A党が7200、B党が5040、C党が3960とする。表1を見てほしい。


 当選者数は10人なので、表の中の大きい方の数字から10個を選び出す。青で囲んだ部分で、Aの下に5個、Bの下に3個、Cの下に2個ある。そこで、当選者はA党から5人、B党から3人、C党から2人とするのである。

 続いて、合併すると当選者数が増えることを示そう。B党とC党が合併してD党になり、選挙を行ったとしよう。D党の得票数はB、Cの合計になると仮定する。このとき、表1は次の表2に修正することになるが、A党の当選者数は合併前と比べると1人少なくなり、逆にD党は1人増えることになる。それぞれに合併効果が働いた。


 一般的には、ドント方式の比例選挙で2つの政党が合併すると、合併後の当選者数は前の合計と同じか1議席増える。わずかな差ではあるが、政治学者の指摘するように、大政党に有利な制度になっている。具体的な証明法は最後に載せておいた。

 ところで表2に1800という数字が2つあるが、実際問題として最後の議席を争って複数の政党の商が同じ数で並ぶことは、理論的には否定できない。それに関して、90年代半ばに当時の自治省に電話をして尋ねたところ、「ほとんどあり得ないことですが、そのような場合には抽選になるでしょう」と親切に教えてもらったことが忘れられない。

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