東京駅ドーム、迫力の1枚に iPhone撮影塾セミナー
3月8日(土)正午すぎ。会場となった東京・銀座の「アップルストア銀座」3階シアターには事前予約制にもかかわらず、当日参加の希望者も大勢来場。入り口前にはiPhoneを手に待つ人の長い列ができていた。集まったのは若者から年配者まで85人。会場は満席で、立ち見となる参加者も出た。
午後1時、ヘッドマイクを付けた講師役の小林健カメラマンと寺沢将幸カメラマンがステージに登場すると、会場の参加者がいっせいに手にしたiPhoneをかかげ、ステージに向かってパシャパシャ。大勢の人前で話す機会の少ないカメラマン2人は少し面食らった様子で、「さすがiPhone撮影塾セミナーの参加者ですね」とおどけた。
小林・寺沢両カメラマンはiPhone撮影を始めたきっかけや、これまでにiPhoneで撮った写真をスクリーンに映しながら説明した。
2人がそもそも取材現場でiPhoneを使って撮影を始めたのは2012年10月ごろから。当時について「サッカーの競技場などでは同業のカメラマンがみな大きな望遠レンズを付けたプロ仕様の一眼レフを携えて臨む中、私たちが手にしているのは小さなiPhoneだけ。奇異の目で見られ、本当に恥ずかしかったです」などと明かした。
セミナーでは、電子版の連載記事で紹介した撮影テクニックなどをあらためて実演。「食べ物撮影編」では(1)被写体(料理)にぐっと寄る(2)光源を前方斜め上45度の角度から当てる「半逆光」を活用する(3)暗いところでもブレないよう正しい構えをする――などの具体的なコツを紹介した。
一般の人がiPhoneで撮った写真の例をスクリーンに映した後、両カメラマンがiPhoneで同じものを撮った写真を投映。作例として示した焼き肉の写真について「ぐっと寄った写真。肉がジューシーでごはんがほしくなりますね」などと話すと、参加者からは「おお~」と感嘆の声があがった。
パノラマ撮影編では、東京駅舎内の復元ドームを縦180度の範囲で撮った写真を示し、「パノラマ写真は横長のイメージが強いが、iPhoneを縦に動かせば、頭上を見上げて地面と地面の間に天井が映り込む写真も撮れるんです」と解説。「水平移動でパノラマ撮影するテクニック」では、キャスター付のイスに座ってiPhoneを構えた寺沢カメラマンを小林カメラマンが手で押し、会場内の参加者を実際に撮影して見せるなどした。
参加者から事前に投稿してもらった写真作品も紹介。投稿作品1点1点について両カメラマンが講評していった。なかでも「私たちの間では1等賞」と2人が評価したのは、ふとした瞬間に子供が見せたしかめっ面の写真。iPhoneの写真は画質などでは一眼レフに劣る部分が多々あるとした上で、「肌身離さず持っているiPhoneだからこそ撮れる瞬間がある。それがiPhone撮影の魅力でもある」と締めくくった。
質疑応答も含め約1時間20分におよんだセミナー。一般的なセミナーとは違い、参加者はメモ帳ならぬiPhoneのカメラで、終始、熱心に記録をとっていた。
この日、友人と2人でセミナーに参加した都内に住む会社員、田中祐里那さん(22)は、日ごろツイッターやフェイスブックにiPhoneで撮った食べ物の写真などを載せている。もっと奇麗に撮れるようになりたい、とセミナーに参加した。「ブレずに撮るためのiPhoneの構え方など、とても参考になりました。紹介してもらったアプリもぜひ活用してみたい」と満足そうな表情。
事前に作品投稿もしていた都内在住のキャリアカウンセラー、三沢めぐみさん(55)は「パノラマ撮影の仕方やiPhoneの音量ボタンがシャッター代わりになることは目からうろこでした」と興奮気味。iPhoneは撮影したその場ですぐにツイッターやフェイスブックで発信できるのが最大の魅力といい、「教わったテクニックをさっそく試してみたい。プロのワザを直接教わったのだから、今日ばかりは息子に自慢できる」とうれしそうに話した。
(松本勇慈)
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