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走る! ウチの元気な教頭

~ママ世代公募校長奮闘記(14) 山口照美

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NIKKEI STYLE

10月26日、敷津小校区の大国町交差点付近では「ファイト! チーム敷津」ののぼりがはためき、「小さな学校 大きな家族 チーム敷津でLet's Go!」の横断幕が掲げられた。歩道はもちろん、車道には車でなく人・人・人。大阪マラソンのその日、敷津小の子どもたち・保護者・教職員・地域の方は沿道に集まり、首を伸ばしてランナー達の間に見慣れたメガネ姿を探した。

「そろそろみたいですよ!」

「白いTシャツだそうです!」

待ちわびた彼が登場すると、スター選手でも現れたかのように子どもたちは歓声をあげた。汗にまみれた彼は、沿道の私達に向かってカメラを構え、シャッターを押した。そして、応援団と握手やハイタッチを交わし、去って行った。その背中に、プリントされていた文字を見て私は笑いが止まらなかった。

「敷津小教頭」

いつ作ったのか、敷津小が大好きな糸井先生らしいなぁと思った。

大阪マラソンの夜、日曜の夜の学校に出勤して業務を片付けた翌朝、関西空港から彼は韓国へ飛び立った。糸井教頭は、敷津小の教頭であるだけでなく、国際理解教育や英語教育のプロでもある。アジア圏英語教育の視察団に選ばれ、4日間の韓国出張に出かけた。

私が公募校長として充実した日々を送れるのは、パートナーである「教頭先生に恵まれた」点が大きい。ネットやマスコミに発信する際も、いやがるどころか背中を押してくれる場面も多い。この8カ月、本当にたくさんのことを教えてくれた、私にとっての先生でもある存在。今日は、めったに表に出ない「民間人校長を支える教頭先生」のインタビューをお届けしたい。

――「大阪マラソンに今年は絶対出たい!」と、なぜですか?

2年前に、第一回大会でたまたま当選したんです。いつも、教頭はどちらかというと陰の存在ですが、その日は校区の大国町で大応援団に迎えられ、感激しました。それがきっかけでコツコツとトレーニングを始め、昨年は落選したので何としても今年は走りたかったです。

――「全ての運を使っても当たりたい!」とまで言ってましたよね(笑)

2年間走ってきた成果を、こんなおじいちゃんに近い年齢(51歳)になってもまだまだチャレンジできるんだぞという姿を、何より子ども達に見せたかった。今回も「チーム敷津」の垂れ幕や歓声で迎えてもらって、見慣れた校区を気持ちよく走りました。

――人生ベスト記録の4時間33分、2年前は5時間38分だったそうなので、1時間以上縮めたことになりますね。

5時間を切るのが目標だったので、自分でも驚きました。夏休みから、子どもたちと学校の周りを毎朝走るようになったのが大きいですね。二日酔いでも、しんどくても子どもとの約束だから休めない(笑)

――今は保護者の方も一緒に走って、「敷津ランナーズクラブ」が地元子ども会にできたぐらい、定着しましたね。マスコミなどでは、教頭先生が心身ともに疲れている、しんどい職だというマイナスイメージが先行していますが、糸井先生の印象はかなり違います。

あまりネガティブな報道ばかりされるのは、残念ですね。忙しい中でも仕事を楽しみながら自分の時間を使って、色んなことにチャレンジしている教頭先生たちがいることは、知ってほしいと思っています。

――教頭業務のやりがいは、どんな点にありますか?

最初、自分では「一生一担任」で、子どもたちと汗にまみれてやっていくイメージを持っていました。しかし、年齢を重ねるにつれ学校全体を見通す仕事がしたい、「職員室の担任になりたい」と思うようになりました。自分の担任クラスだけでなく、先生を育てることで学校を動かしていく、別の面白さがあります。また、保護者と地域と学校をつなぐことで、教職員が動きやすいようにするやりがいもあります。

――その地域や保護者との関わりの部分が、しんどいと思われがちですよね。

それを「しんどい」と言い出したらキリがないし、どうせやるなら楽しもう、と思って取り組んでいます。ただ、しんどい面があるとしたら、次の2点ですね。1つは、出勤簿がカードリーダーになったりパソコン管理になったり、「紙からデジタルへ」の過渡期にあるしんどさです。この時期を越えたら、より効率よくなるだろうと、期待をこめて乗り切っています。あとは、ベテランより若手教師の比率が上がり、指導が年々難しくなっています。これは、全国的な課題ですよね、

――日本の教育の話になりましたが、先日、韓国の教育視察に行って気づいたことはありますか?

まず、国と自治体をあげて本気で教育改革を進めようとしている点です。人件費のかけ方を見ても明らかでした。そして、何よりも先生達が自信と誇りを持って仕事に励んでいる。本当に先生が尊敬されていました。

――日本でもかつて、教師が尊敬されていた時代がありましたよね。

できれば、尊敬される流れになってほしいですし、そのためにこちらもがんばらないといけないのですが……。日本の教育の問題点は、「かつての日本の教育の良い点が失われつつあること」ちゃうかな、と考えています。

――かつての日本の教育は、どの点で優れていたと思いますか?

「読み・書き・そろばん(計算)」の基礎学力を全ての子どもに定着させようという、ボトムアップに強い点ですね。30カ国ほど訪問して見てきた中で、アメリカは中学・高校での選択肢の広さや、レールを外れてもやり直せる点が仕組みとして優れている。でも、小学校教育は日本が圧倒的に優れています。「共生」という視点を持ち、さまざまな子どもが同じ学校に通い、関わる中で学力と生きる力をつけていく、懐の深さが日本の教育の良さだと思います。

――その良さを伝えるために、敷津小学校の子どもに対して意識していることはありますか?

まずは目の前の子どもを、一人ひとりを見つめる、関わるということですよね。小さなことでも認められる材料を提供したり、できないことをできるようにしたり。具体的な実践は担任に指導しながら、子どもの成長を保障し、実感できる学校にしていきたいと思っています。

――教頭先生の影響を受けて走り始めた子もいますし、あちこちの地域行事へも背中を押して活躍の場を作っていますよね。私はそれを褒める役回りだと思っています。

小さな学校だけに、外に出ていく、外から色んな方に来てもらう場面は作りたいですね。

――ところで、こうして縁あって一緒にお仕事させてもらっていますが、公募校長を支える立場として、「公募校長制度」についてはどう思っていますか?

公募であれ内部からの校長であれ、基本的に関係ないと思っています。目の前の子ども達の事実からスタートし、そこに課題を見出して、教職員と一緒に取り組めるかどうか。内部からの校長先生でも、いきなり来て「~をやりたい」と学校の実情に合わないことを言って、うまくいかないケースはあります。

――私としては、担任や教頭経験のない分、分からないことだらけの人が上にいるってやりにくいだろうなぁと思うのですが……

聞くなり調べるなり慣れるようにしてくださるので、ありがたいです。僕だって、教務主任になった時、教頭になった時は、その時その時で分からないことだらけだった(笑)。まずは、子どもをよく見るところから初めてもらうことの方が、大事です。

教頭の仕事は校長の意を体現することが職務なので、一緒にやる以上は関係をよりよくすることも仕事のうちだと思っています。

――教頭先生に受け入れてもらったお陰で、私は楽しく仕事をさせてもらっています。糸井先生は、楽しいですか?

ますますこれからです!僕は今までいた学校のどこでも、最後には「自分の子どもを通わせたい学校」にして去りたいと思って仕事をやってきました。敷津小は小さな学校ですが、逆に大規模・中規模校にない良さもメリットもある。今ある学校ならではの良さを生かして、子どもたちを育てたいです。

――私も同じ気持ちで、取り組みます。明日からまた、よろしくお願いします!

学校のホームページに掲げた「小さな学校 大きな家族 チーム敷津」は糸井先生の作ったフレーズだ。この言葉通り、「大きな家族」である子ども達・教職員・保護者・地域をつなぐために、今日も糸井教頭は校内を走り、校区を走り、自分のために休みも走り続ける。私も、負けていられない。

山口照美(やまぐちてるみ)
同志社大学卒業後、大手進学塾に就職。3年間の校長経験を経て起業、広報代行やセミナー講師、教育関係を中心に執筆を続ける。大阪市の任期付校長公募に合格、2013年4月より大阪市立敷津小学校の校長に着任。著書に『企画のネタ帳』(阪急コミュニケーションズ)『売れる!コピー力養成講座』(筑摩書房)など。ブログ「民間人校長@教育最前線レポート」(http://edurepo.blog.fc2.com/)も執筆中

(構成 日経BP共働きプロジェクト・日経DUAL編集部)

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