40代後半から免疫力低下 健康なうちに始める湯治札幌国際大学観光学部教授 松田忠徳氏

「温泉」というと旅館に1泊2日宿泊して楽しむものと思うシニア層が多いのではないだろうか。しかし、身体の免疫力を高めるような目的で温泉につかろうとするならば、2泊以上の滞在が望ましい。温泉教授として知られる札幌国際大学観光学部の松田忠徳教授は「これからは、できれば1週間の休みを取って湯治を楽しみましょう」と提案する。

江戸時代には「箱根で1カ月湯治」の習慣

――江戸時代には温泉地で長い期間過ごし、身体を癒やす「湯治」がブームだったそうですね。

まつだ・ただのり 1949年北海道洞爺湖温泉生まれ。東京外国語大学大学院、モンゴル国立医科大学大学院修了。文学博士、医学博士。現在、札幌国際大学観光学部教授(温泉学、観光学)、モンゴル国立医科大学伝統医学部教授(温泉健康医学)。旅行作家。日本で初めて温泉を学問として捉え「温泉学」という分野を切り開いた“温泉教授”の異名で知られる温泉学の第一人者。 著書に「江戸の温泉学」(新潮社)、「温泉力」(ちくま文庫)、「温泉教授の温泉ゼミナール」「温泉教授の日本百名湯」(光文社新書)、「温泉教授の新日本百名湯」(日本経済新聞出版社)、「温泉手帳」(東京書籍)などがある。

松田 現代の日本人は時間に追われる生活をずっと続けていますが、江戸時代にはもっとゆっくり過ごしていました。江戸っ子は1カ月休みを取って、箱根で湯治をしていました。往復、歩いて4、5日。箱根湯本から一番奥の芦之湯までの“箱根七湯”を、3週間くらいかけて順番に巡っていたのです。

――いろいろな温泉を巡るのですか。豪華ですね。

松田 そういう余裕が日本人にはありました。「湯治」は日本人の文化的なDNAにしっかり記憶されていると思うのですが、現代の日本人は忙しくて、なかなか湯治に行こうという踏ん切りがつかないようです。フランス人が1カ月もバカンスを取るようになったのは近年になってからですが、我々日本人は、約400年前の江戸時代から1カ月の休みを取って湯治に行っていたわけです。世界でも最もぜいたくな過ごし方ではないでしょうか。そういう習慣が日本人にあったということはぜひ、知っておいてほしいです。

温泉のない生活考えられない

――だいたいが1泊2日ですね。そして、最近でこそ、個人で温泉に行って、ゆっくり湯につかるのが主流になってきましたが、高度成長のときは団体旅行で温泉に行くことが多く、温泉をゆっくり楽しむ間もなく、宴会場に向かっていました。

松田 それで旅館の風呂場も必要以上に大きくなりました。

――松田さんは、いつごろから温泉に興味を持たれ始めたのですか。

松田 2008年に「洞爺湖サミット」が開かれた北海道の洞爺湖温泉が私の産湯です。混浴の共同浴場に入りながら育ちました。

――もうどのくらいの数の温泉に入られているのですか。

松田 温泉の数で言うと4700カ所以上に入りました。いまは札幌市の郊外にある定山渓温泉のすぐ近くに住んでいます。温泉のない生活は全く考えられません。