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鉄道ミステリー界の重鎮が伝授 時刻表トリックの読み解き方 日経おとなのOFF

2013/3/13

「時刻表は列車の発着時間を調べるだけのものではありません」と話すのは鉄道ミステリー界の重鎮の作家・辻真先さん。情報の宝庫である時刻表。それを独自の手法で読み解くことによって、数々の鉄道トリックが生み出された。トリック作りのポイント、読み解き方について聞いた。

1963年に小説家としてデビューし、数多くのトラベル・ミステリーを生み出した辻真先さん。そのなかには鉄道を舞台にしたトリックも多く使われている。

「トリックをひねり出すときに、時刻表は欠かせない。今ではパソコンで乗り換え方法などが検索できますが、時刻表でなければ見えてこない情報もあります。例えば、熱海駅には新幹線のひかりが一日3回だけ停車する。その関係で先に東京を出発しても、後発車に抜かれて、新大阪に到着するものもある。時刻表を眺めると、そんな運行状況が具体的に見えてきて、トリック作りに結びつくのです」。

時刻表は意外な情報の宝庫だ。細かく見れば、車両形式、ディーゼル車と電車との区別、駅弁販売の有無などの情報も掲載されている。

「胃の内容物から駅弁を特定し、犯行現場を割り出すなど、時刻表には小説の種が詰まっています」(辻さん)。

【時刻表はトリックの宝庫】

トリック1 「再婚列車」でアリバイが手に入る

(c)交通新聞社2013

かつて“再婚列車”と呼ばれていた列車がある。鳥取─博多間を結ぶ急行列車が有名で、途中駅でいったん分岐して、再び合流して連結されるという珍しい運行方式が採用されていた。この列車は西村京太郎さんの『再婚旅行殺人事件』の舞台になっている。辻さんは長編推理小説『仮題・中学殺人事件』で、さらに複雑な“再婚特急”「かもめ」を使った。

「別々の起点から出た同じ名前の列車が、途中の佐賀駅にとまり、再び異なる線路を走って小倉へ。路線はほぼ異なるのに、名前は一緒。その複雑さをトリックに用いました。今はこの奇怪な列車はありません。でもトリックの種になりそうな、分岐した線路が再び合流する路線は残されています」。

どちらの線路を経由すれば目的地に早く到着できるのか、それぞれの線路の間は車で移動できるくらいの距離なのか。そうした疑問が、推理小説のトリック作成の原点になるという。

トリック2 「D」か「M」かで誘拐事件は解決?

誘拐され、列車でどこかに連れ去られようとしている。自分がどこにいるのか探ろうとしても、目隠しをされているため、全く手がかりがつかめない。

(c)交通新聞社2013

「でも鉄道好きな被害者は、事件解決の大きなヒントを得ます。それがDとMの違いです」と辻さんは話す。時刻表には列車番号が記されているが、その末尾には原則としてDかMのアルファベットが付いている。Dは気動車列車(ディーゼル車)、Mは電車列車(モーター車)を表しているのだ。

「誘拐された被害者は、音と揺れの違いによって、どちらの列車に乗せられたかを知ります。それが事件解決の糸口になるのです」。

時刻表からトリックのアイデアを得ると、現地へ足を運んで検証。

「ディーゼル車は北海道や東北に多いですが、山梨・長野県を走るJR小海線でも使用されています。ただし小海線はハイブリッド列車のため、揺れが少なく、トリックには不向きでしたね」。

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