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タイ菓子が呼び込む金運、人運、仕事運

世界のおやつ探検隊

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NIKKEI STYLE

ナショナルジオグラフィック日本版

NHK放送文化研究所が2007年に行った調査によれば、日本人が一番好きな数字は「7」であるらしい。ラッキーセブンのほか七福神など、7にはよく知られた縁起物のイメージがあるからだろう。一方、「9」という数字は「苦」と結び付いて日本では好まれない。

逆にこの「9」が縁起がいい数字とされるのがタイだ。タイ語で9は「ガーオ」といい、「前に進む」というタイ語の発音と似ているのだ。

「だから、タイには9つの縁起菓子があるんです」。おやつ探検隊が訪れた東京・錦糸町のタイ教育・文化センター スアンドゥシットラチャパット大学東京校(以下、タイ教育・文化センター)でこう教えてくれたのは、ダー先生ことダムロンティララット・チョンシターさん。そして、その縁起菓子の1つ「カノムフォイトーン」(カノムはお菓子の意味)はなんと日本由来のお菓子だという。日本との交易が盛んだったアユタヤ王朝時代(1351~1767年)に、日本人とポルトガル人の血を引く女性がタイの王室に伝えたものなのだ。

日本の鶏卵そうめんにそっくりなお菓子

フォイトーンはフォイが糸、トーンが金、つまり金の糸という意味。煮立てたシロップの中に卵黄を細く垂らして作る。こう説明すればピンとくる読者もいると思うが、日本の鶏卵そうめんとまるで同じお菓子なのだ。細長い形状から「長く一緒にいられますように」という意味を込め、タイでは結婚式で見かけることの多いお菓子だそうだが、そんなところもしばしば結婚式の引き出物になる鶏卵そうめんと同じだ。

「ただし、ジャスミンの香りが付いているんですよ」と説明してくれたのは、同センターで通訳を務める石川智子さん。卵黄を垂らすシロップに香りを付けるらしい。鶏卵そうめんにジャスミンの香り…懐かしの甘~い和菓子のイメージが、ふっと見知らぬ異国の食べ物に入れ替わった。

フォイトーンだけでなく、タイのお菓子には香りを付けたものが多いという。「パンダン(香りや色付けに使う植物の葉)を使ったり、香料が入ったロウソクでいぶしたりしてお菓子に香りを付けるんです。ジャスミンやイランイランなどお花の香りが多いですね」と石川さん。特に、タイの家の庭でよく見かける花、ジャスミンが香るお菓子が多いそう。度々タイを訪れ同国の食事情にも通じた石川さんだが、このお菓子にまとわりついたジャスミンの香りは苦手らしい。

一方、卵はお菓子作りではおなじみの食材だが、実はタイではアユタヤ王朝の時代に、ようやく海外からの影響で使われるようになったものだという。そして、お菓子には、鶏卵よりも発色がいいアヒルの卵を使うことが多いそうだ。「卵は生臭いでしょ。だから、ジャスミンなどの香りを付けるんです」とダー先生。「タイの人は日本人よりも卵の生臭さに敏感なようですね」と石川さんが続ける。なるほど、これも香り付けの理由の1つなんですね。

効きそうな気がする、1つひとつに意味があるタイの縁起菓子

フォイトーンのような、黄金を思わせるきれいな黄色のお菓子を作るのに適した卵は、縁起菓子にうってつけの材料と考えられたようで、9つのうち7つが卵を用いた黄色いお菓子だ。そして、それぞれが昇進、金運など、かなり具体的な意味を持つ。例えば、花の形をしたお菓子「トーンイップ」のイップには、取る、という意味があり、金銀財産が取れますように(入ってきますように)、という願いが込められ、緑豆あんのお菓子メットカヌン(メットは種、カヌンはジャックフルーツ)は、援助するという意味の「ヌン」という言葉にカヌンが似ていることから、協力する人がたくさんいますように、といった意味が込められている。

一方、仕事運を上げてくれるのが、卵を使わないお菓子「カノムチャン」(チャンは層という意味)。タピオカ粉などを使った透明感のある薄い生地を何層にも重ねたもので、層状であることが一段一段上がっていく様子をほうふつとさせることから、どんどん高い地位についてください、昇進しますようにという意味を持つ。現地では好きな人が多く、タイ菓子の専門店にしか売っていない縁起菓子もある中、市場などでもよく見かけるお菓子だという。

漠然と縁起がいい感じがする日本の紅白まんじゅうなどと違って、タイの縁起菓子は込められた意味が具体的でなんとなく「効く」気がする。本来は、お祝いの席などで食べることが多いお菓子なのだろうが、普段食べても運を運んできてくれそう。これって、日本人にも良運をもたらしてくれるのかしら。そこで、前回紹介した池袋のタイ菓子専門店「バーンカノムタイ」で、縁起菓子を買ってみた。

おめでたいお菓子を食べてみた

店のショーケースの中には、濃い黄色をした縁起菓子がいくつも並び、日本人から見ても「めでたいお菓子」という雰囲気が伝わってくる。その中から、トーンイップとメットカヌン、カノムチャンを手に取った。

カノムチャンはインドネシアの「クエ・ラピス」に似ている。ただし、3色も4色も使ったカラフルなものも目に付いたクエ・ラピスとは異なり、全体の色調は統一され、白い層と色の層を交互に重ねることで一層一層がはっきり見えるようにしている。「階段」のように見えることが重要なのだろう。ココナツミルクが入っていて、ういろうより少しぷるんとした食感。タイの人にも人気という同店のカノムチャンだが、思ったほど甘くなく食べやすい。

次にトライしたのが、黄色い縁起菓子トーンイップだ。トーンイップのイップには、ギャザーを寄せるという意味もある。シロップを染み込ませた、卵黄と砂糖で作った生地を器に入れた後、手でギャザーを作り花の形にしているのだ。「食べるとジュワーっとシロップがにじみ出てくるんですよ」との石川さんの説明を思い出し、どんなに甘いのだろうと恐る恐る口にしてみた。ところが、これが意外に上品な味わいの卵菓子。確かに甘いが、卵の香りが立っておいしい。

さらに驚いたのはメットカヌン。緑豆あんに卵黄をまぶした小さなカプセル形のお菓子なのだが、正直、初めはあまりおいしそうには思えなかった。出来たてではなかったのか、つまんでみるとかなり硬かったからだ。

そういえば店のオーナーであるソンブン・パンカシコさん、「粉を使ったお菓子など、少し硬くなったものは電子レンジで何秒か加熱するとおいしいですよ」といっていたなぁ。そこで、粉は使っていないお菓子なので邪道かも…と思いながら、レンジで温めてみたところ、卵黄で覆った表面に照りが出て食欲をそそる様子に。そして、ポンと口に放り込むと、これがとても美味。緑豆あんにココナツミルクを混ぜ込んでいて、よい香りもする。甘さもほどよく、様々なタイ菓子を試食する中、リピートするならこれ、と思ったお菓子のひとつでした。

意外な組み合わせがクセになるタイのお菓子

さて、今回の探検では出会ったみなさんに好きなタイ菓子を聞いてみた。これが、みな意外なセレクション。まず、「ほんとに?」と思ったのが、「バーンカノムタイ」で働いていた女性お薦めの「ロッチョン」だ。

ロッチョンは、上新粉を用い、パンダンで色や香りを付けた麺のような生地を甘いココナツミルクと一緒に食べるお菓子。ロッチョンに似た緑色の麺はインドネシアやシンガポールにもあって、これを使ったデザートを食べたことがある。特に印象的な記憶がなかったことから、思わず「どんなところがいいの?」と聞いたら、彼女は一言「アロイ!」(タイ語でおいしいの意味)。ソンブンさんも、「日本人にもすごく人気ですよ」と教えてくれた。同店は、毎年代々木公園で開催されるタイ王国大使館主催のタイ・フェスティバルに出店、お菓子を販売しているのだが、ロッチョンはそこでの人気デザートらしい。

小さな穴がいくつも開いたロッチョン作りの道具に生地を上から注ぐと、穴から下に落ちる生地が自然に麺状になっていくそうだが、「麺の硬さの具合を調節するのがすごく難しい。硬すぎてもいけないし、軟らかすぎてもいけないんです」とソンブンさんはいう。

「バーンカノムタイ」でも売っていたので、これも食べてみた。緑の麺とココナツミルクは別々の袋に入っていて、食べるときにこれを合わせる。盛り付けてみても特にそそるデザートには見えなかったのだが、食べてみてびっくり。ほどよい弾力のある、つるりとした食感の麺がとてもおいしいのだ。6、7センチほどの短い麺が、ノドをするっと通り抜けていく。シンプルなのに、味わったことのないノドごしでやみつきになりそう。ソンブンさん、お姉さん、すみませんでした。

ソンブンさんにも好きなお菓子を聞いたところ、子どもの頃お母さんがよく作ってくれたという「カオニャオナーサンカヤー」を挙げてくれた。甘いココナツミルク味の蒸したもち米(カオニャオ)の上に、サンカヤーと呼ばれる卵とココナツミルク、砂糖で作ったプリンを載せたお菓子だ。「バーンカノムタイ」のカオニャオナーサンカヤーには、甘いココナツミルクが添えられていて、これをかけて食べる。

ご飯の上にプリン、その上、ココナツミルクもかけるの…とやはり不思議に思いながら食べてみると、これも意外なおいしさ。プリンとご飯って合うものなんだと、異次元の体験。

さて、こんな風に、タイのお菓子にはココナツミルクを使ったものがとにかく多い。ところが、タイ教育・文化センターのダー先生はココナツミルクが好きではないという。そんな彼女がお気に入り菓子として挙げてくれたのは、少し塩を入れた上新粉を食用の黄色い花にまぶして蒸し、削ったココナツと砂糖を合わせかけた素朴な食べ物。子どもの頃、お母さんが手作りしてくれたものをよく食べたという。

でも、これまで同センターで作ったお菓子の写真を一緒に見ていたところ、「あ、これはおいしいわよね」とダー先生が声を上げたのが、「カノムパンヒマ」。パンはパン、ヒマは雪という意味で、シロップと練乳をかけてトーストを添えたかき氷のこと。近年、ポピュラーになってきたスタイルのかき氷だそうで、サクッとした食感のトーストとかき氷との相性がよいそう。「タイの"ミルク屋さん"には必ずあるメニューですね」とは石川さん。ミルク屋とは、牛乳を使ったドリンクやコーヒー、軽食などを売るお店で、タイの人は夕食後によくお茶を飲みに行くらしい。

最後に探検の相棒、ユカリ隊員に今回紹介のタイ菓子の中で好きだったものを聞いてみた。すると、前回紹介した「カノムモーゲーンが一番!」とのこと。「あとは甘すぎて…」と嘆息。今回の探検、筆者は甘すぎとは感じなかった。タイの味覚にすっかりなじんでしまったらしい。ここまでくれば、縁起菓子の効果もばっちりかも…。

今回のおやつの生息地
タイ教育・文化センター スアンドゥシットラチャパット大学東京校
住所:東京都墨田区江東橋 1-11-9 ピーケイサイアムビル
電話:03-3634-9993
ホームページ:http://www.thaitec.jp


バーンカノムタイ
住所:東京都豊島区池袋2-62-3
電話:03-3971-1518

[Webナショジオ 2014年4月11日付の記事を基に再構成]

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