バガボンド井上雄彦が魅せられた 式年遷宮棟梁の手伊勢神宮へ墨絵を奉納

宮間棟梁の手。井上氏は対談中、ずっと棟梁の手を見ていた。60年以上の間、木をずっと触ってきた大きくて優しい手だ

手は、道具の延長

井上 手を見せてもらっていいですか? ずっと見てたんですけど大きいですね。指がすごい太い。

宮間 そんなに大きくは…。ある程度力仕事してたら、こうなるんですわ。

藤森 でも、柔らかい感じですよね。

宮間 やっぱり何遍もやっとったら、血豆つくったり、一年中刃物が相手ですから、鑿の角で引っかけたりすることもありますけどな。そやけど絶対、木に血とか汚れなんか付けたらいけないんで、怪我をせんように。白い木だから汚れとか、汚れた血の染みなんかつくったら大変なことになりますからね。だから、それは気をつけて。

井上 怪我しちゃ駄目なんですね。

宮間 そうかといって、道具はみな研いで、よう切れるようにしてあるんで(笑)。鉋でも何でも、はじめのうちというか、弟子の習いたてはよく怪我するわけです。それも慣れるというか、目ふさいでも絶対手をたたかないというぐらい、体で感覚というか、そんなのができてくるんですね、人間というのは。

井上 そうなるともう大丈夫。

宮間 そういうことですな。そこまで経験というか、熟練、年月掛けて積み重ねがあるんですな。

カメラマン 井上さんの手も並べてみてください。

井上 僕は特に小さいほうですから。見てください、この白魚のような(笑)。全然違うな。こうも違うものかと。

宮間 手は、道具の延長ですもんでね。手のつかみ方で道具の振りも全部とれないかんですから。手が震えたり、揺れたら、鑿でも横っ面、曲がっちゃうもんで、自分の思っているとおり真っすぐに突くということは、自分の体の延長で気持ちと手の働きとが一致せないかんわけですね。そこのところは、慣れというか、経験で補うわけです。

(構成・ライター 佐野由佳、編集 高津尚悟=ケンプラッツ)

[ケンプラッツ2013年9月30日、10月1日、同2日付の記事を基に再構成]

[参考]井上雄彦著『承 井上雄彦 pepita2』(2013年9月30日発売)は、日本の伝統行事である「遷宮」を、漫画家の井上雄彦が書き下ろしの絵やスケッチ、エッセイや対談などで解き明かす書籍+DVDとなっている。

承 井上雄彦 pepita2

著者:井上雄彦
出版:日経BP社
価格:1,995円(税込み)