都会で幸せに長生きするには 東大と柏市の取り組み東京大学特任教授 辻哲夫氏

東京大学は、超高齢社会の課題を解決するために2009年4月に高齢社会総合研究機構を設け、各学部が一体となって、「ジェロントロジー(老年学)」の研究を始めた。企業や自治体とも積極的に連携。高齢者がいきいきと安心して暮らせる社会システムの構築に取り組んでいる。高齢社会総合研究機構がどんな未来社会の青写真を描いているのか、辻哲夫特任教授に聞いた。
つじ・てつお 1971年、東京大学法学部卒業後、厚生省(当時)入省。年金局長、大臣官房長、保険局長、厚生労働事務次官などを経て、2009年4月に東京大学高齢社会総合研究機構教授。現在、東京大学高齢社会総合研究機構特任教授。主な著書として「2030年 超高齢未来」(共著、2010年、東洋経済新報社)「日本の医療制度改革がめざすもの」(2008年、時事通信出版局)がある。

「幸せな長生き」を学際的に研究

――東京大学の高齢社会総合研究機構とはどんな組織なのですか。

 「ジェロントロジー」という学問を研究する組織です。長生き社会になり、お年寄りの人口が総人口の20%を超えるようになってきました。高齢化は世界の中で日本がトップを走っています。このような社会の在り方をこれから、どのように見据えていくのか、それを総合的に研究します。

今までは「長生き」を中心に研究してきたのですが、最近は「長生きの質」を研究するようになってきました。単に長生きをするだけではなく、幸せな長生きや、それを実現する社会システムをどのようにつくっていくのかということを研究します。高齢社会総合研究機構は大学のほぼ全学部が協力して作った、日本で初めての組織だと思います。

――日本はすでに超高齢社会を迎えていますが、どんな変化が訪れているのでしょうか。

 これからの大きなテーマは、05年の75歳以上の人口が1100万人だったのが30年には2200万人と一挙に倍増することにどう対応するかです。個人差はあるのですが、一般的に言えば75歳あたりから心身が下り坂になってきます。そういう方が倍増する社会というのは、世界でまだどの国も経験したことがありません。負担と給付をどうするかという問題だけでなく、高齢者がそういう社会でどのようにすれば幸せに生きていけるのかということを考えていく必要があります。

高齢化社会、いかに安心できるようにするかが大事

――人口も減ってきます。社会のあらゆる分野で、変化が起こるわけですね。

 人口減少も、世界に先駆けて、07年を境に始まっています。少子化対策は重要です。お子さんが生まれやすい社会を作って急速に人口が減っていくことを防ぐべきだと思います。人口が減っていくことを確実なものとして、自然現象のようにとらえるのではいけません。ヨーロッパの国々も少子化対策をしています。日本では結婚したいという男女が9割いるという調査もあります。結婚したら、子どもを2人くらいほしいというのが平均的な考えです。そのような願いを実現できるような社会をつくるのがまず、第一だと思います。

そういうなかで、高齢化していく社会を、いかに安心できる社会にするのかということを併せてやらなければいけません。

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