入試問題でわかる 名門中学が求める子ども(1)武蔵中「おみやげ問題」教育ジャーナリスト おおたとしまさ

「結局答えは何ですか?」と聞くような子は武蔵には向かない

講評には次のようにある。

問2は、問1で動かして分かったことの他に、さらにいろいろと動かしてみて分かったことを基に磁石の配列を考え、ふさわしいものを選ぶ問いであるが、問1で分かった事だけを基に選んだ理由を書いている答案が多く見られた。また、磁石の動かし方とその結果を正しく把握しているのに、短い辺と長い辺を勘違いして選択肢を選んだ受験生も少なからずいた。文章をよく読んで、思い込みで解答しないように注意して欲しい。選択肢が間違っていても、選んだ理由で観察に基づく考察ができている場合は加点した。

選択肢が間違っていても、理由がしっかり書かれていれば加点されるというのが武蔵らしい。

2013年の入試問題大問2

「おみやげ問題」は毎年1題だが、武蔵の理科ではそのほかの問題も、「おみやげ問題」と同様に、科学的な視点と表現力と、論理的思考力を求める問題が多い。

たとえば、2013年の大問2には、2つの実験結果がグラフで与えられ、その実験グラフからどんなことが考察できるか、答えさせる問題が出題された。

島崎教諭は「どの問題にも共通するのは、『どうしてそう考えたの?』という根拠を問うことです。知識量よりも、科学的にものごとを捉える姿勢を試しています」と言う。その姿勢こそ、武蔵が受験生たちに求めるもの。

武蔵では、入学後、たくさんの科学実験を行う。

目の前で起きていることを素直に観察し、それがどういう原理に基づいているのかを自分の頭で考察し、内容が正確に伝わるリポートにまとめるという訓練を徹底する。

「生徒たちはみんな、最初は実験授業を喜ぶのですが、中3くらいになると、だんだんつらそうな顔になってきます。この段階では、現象を量的に扱うために、毎回、泥臭い作業を繰り返し、地道にデータを積み上げていく実験を行うからです。それが科学の基礎であり、学問の礎です。そう簡単に答えが出るわけがないのです」と島崎教諭。

「で、結局どういう結論になるんですか?」と答え急ぐような生徒は武蔵には向いていないということだ。

ためしに、理科が苦手という大人にこの問題を解かせてみた。

磁石を手にしながら、問題を読むと、手を動かすよりも先に、答えを予測し始めた。

しかし、何をどう答えていいのかすらわからない様子。問2に至っては、自分の選んだ選択肢が間違っていると知るやいなや、考えるのをやめ、「じゃ、答えは何?」と聞いてしまった。

「おみやげ問題」は、見事に理科の素養を見抜く問題であるようだ。

武蔵高等学校 中学校http://www.musashi.ed.jp
・募集定員 男子160名(高校からの入学枠なし)
・入試日 2月1日
・所在地 東京都練馬区
・最寄り駅 西武池袋線「江古田」から徒歩約7分、西武有楽町線「新桜台」から徒歩約7分、都営大江戸線「新江古田」から徒歩約7分
おおたとしまさ
育児・教育ジャーナリスト。心理カウンセラーの資格、中高の教員免許、私立小学校での教員経験もある。著書に『中学受験という選択』(日本経済新聞出版社)、『子どもはなぜ勉強しなくちゃいけないの?』(日経BP社)、『中学受験 名門中学の子どもたちは学校で何を学んでいるのか』(ダイヤモンド社)などがある。

(構成 日経キッズプラス)

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