入試問題でわかる 名門中学が求める子ども(1)武蔵中「おみやげ問題」教育ジャーナリスト おおたとしまさ

「封筒の中に何か入っていると、つい触りたくなるでしょう。でも、そこでこらえて、まずは落ち着いて問題文を読むことが大切です」と言うのは理科主任の島崎亮浩教諭。

まずは指示通りにやってみる素直さが第一関門なのだ。

言われた通りに磁石を重ね、一方を固定し、一方を回転させる。

問題文には「2枚の磁石の板が引き合う強さについて、気がついたこと」とあるので、回転させながら、2枚の磁石の板が、どのくらいの強さで引き合っているかを確かめなければならない。

要するに、2枚の磁石の角度と磁石の引き合う力という2つの要素の間にある関係性を見いだせという問題だ。

この問題を解くには、磁石の板を回転させつつ、ところどころで磁石を引き離してその手応えを確かめるという作業を同時にしなければならない。

実際にやってみると、2枚がぴったり重なっているときは、磁石が強く引き合っていることがわかる。しかし上になった磁石をわずかに回転させるととたんに引き合う強さは弱くなり、十字になったときには最も弱く感じられる。さらに回転し、再び2枚がピタリと重なり合うところにくると、2枚の磁石は強く引き合う。

「気がついたことを書きなさい」であるから、それをそのまま書けばいい。

ただし、問題文には「図をかいてはいけません」とある。

図を描いて、「このときが一番強い」、「このときが一番弱い」と矢印で書き入れれば簡単だ。しかし、それは認められない。なんとか文章で表現しなければならないのだ。それがなかなか難しい。

武蔵が発表している解答例は……。

磁石の板が引き合う強さは、二つの磁石が十字に交差した時が弱く、ぴったり重なった時が一番強い。

目の前で起きたことを科学的に捉える力を試す

「目の前で起こっている自然現象を、素直に、ただし、他人にもきちんと伝わるように表現してくれればいいのです。それが科学の基本ですから」と島崎教諭。

難しい理科用語や込み入った表現はいらない。ただし、科学的で客観的な記述力が求められているのだ。

武蔵が発表している講評には次のようにある。

問1では、約半数の受験生が磁石の重なる方向によって引き合う強さが変化することに着目でき、きちんと文章で表現できていた。一方で、磁石を回転させていくに従って、引き合う強さが変化していくことに気付きながらも、どの時点で強くなるのかと言う“方向性”の記述が不十分な答案が、かなりの割合を占めた。また、答案の中には、「最初の状態から回していくと~」と記したり、「90度回すと強くなる(弱くなる)」と記したりするものが見られた。一見正しそうであるが、この場合「最初」とはどういう状態か、また「どの状態から回していったのか」を明記しなければ、客観的な説明とはいえず、不十分である。日ごろから自身の記した説明が、他人に正しく伝わるかどうかを確認する癖をつけて欲しい。

大人でも身につまされる講評ではないだろうか。