ライフコラム

子どもの学び

入試問題でわかる 名門中学が求める子ども (1)武蔵中「おみやげ問題」 教育ジャーナリスト おおたとしまさ

2013/9/26

中学入試は、小学生を選抜する無慈悲な装置と思われがち。しかしそこでは、単に知識量や正確性だけが求められているわけではない。

各学校は、試験問題の中に、独自のメッセージを込めるように工夫している。「こういう問題を面白いと思える子に来てほしい」「普段からこういう視点で世の中を見ている子を求めている」「この学校に入ったらこういう勉強ができるよ」など。求める生徒像に基づき、論理的思考力、粘り強さ、発想力、着眼力、読解力、表現力から、場合によっては素養や性格までも見抜こうとしている。

入試問題は、いわば「わかる子にだけわかる暗号」。正解に至るための暗号を一つひとつ解いていけば、そこに込められた学校からのメッセージが見えてくる。そして、受験生たちはその暗号を解くために、勉強をしているといえる。

この企画では、毎回1校に、実際の入試問題に込めた狙いを聞く。そこから、各校の学力観・教育観を明らかにしていこうと思う。

■入試会場で観察・実験する名物「おみやげ問題」

創立当初の観察問題

今回紹介するのは、御三家の一角として、また、自由でアカデミックな校風で知られる武蔵中学校(私立、以下武蔵)。

1922年、旧制7年制高校としての開校以来、「自調自考」の理想のもと、教養主義の「本物に触れる教育」を実践している。

武蔵の理科の入試問題では、ほぼ毎年「おみやげ問題」と呼ばれるユニークな問題が出題される。

問題用紙と解答用紙とともに手渡される封筒の中に、何かしらの「モノ」が入っており、実際にそれを見て、触って、操作して、設問に答えるのだ。

入試のその場でまさに「自調自考」をさせる。

2008年の「おみやげ問題」に使われた2枚のマグネットシート

「モノ」は通常、生活の中でもよく目にするものが多い。

たとえば、ファスナー、画びょう、貝殻、キャスター、ポリ袋など。

試験が終わったらそれを持ち帰ってよいことになっているので、「おみやげ問題」と呼ばれている。戦前から続いている、武蔵の入試の伝統だ。

2008年の「おみやげ」は2枚のマグネットシートだった。ホワイトボードや冷蔵庫に貼り付ける、ソフトタイプの磁石の板だ。

袋の中に、同じ磁石の板が2枚入っています。2枚を重ね合わせていろいろと動かしながら、この磁石の板について考えてみましょう。(試験が終わったら、2枚とも袋に入れて持ち帰りなさい。)

問1 一方の磁石の板を動かないようにして、磁石の黒い面どうしを重ね合わせたまま、もう一方の磁石の板を図の矢印のように回転させなさい。このとき、2枚の磁石の板が引き合う強さについて、気がついたことを書きなさい。図をかいてはいけません。

ライフコラム 新着記事

ALL CHANNEL