各停女子、特急女子、回送女子…離婚式プランナーが見た恋愛列車模様
地味めな服装に、化粧っ気のない顔。お世辞にもあか抜けているとは言い難い十人並みの容姿。一見、モテを象徴する"女子力"とは無縁の存在ながら、なぜだかいつも男性から好意を持たれ、常に彼氏が途切れない――。アナタの周りに、こんな女性はいないだろうか――
地味めだけど彼氏が途切れない 魔性系「各停女子」
"男性にしか分からない独特のフェロモンでも出ているのかしら…"。そんな風に思わざるを得ないモテぶりは、時に"魔性の女"と思えるほど。とりたてて努力するわけでもなく、恋のチャンスを確実にモノにしていく彼女たちは、同性からすれば、ある意味うらやましい存在だ。しかし、じっくり腰を据えた恋愛関係を作りあげるのは苦手なようで、1人の相手と長続きすることがなく、結婚には、なかなかたどり着くことができない――。
そんな恋愛スタイルを繰り返す女性たちを電車になぞらえて、「各停女子」と呼ぶのは、離婚式プランナーの寺井広樹さんだ。
「彼女たちは、結婚という"終点"にはなかなか到着せず、まるで"恋の各駅停車"を繰り返しているようにも思えます」
後ろめたさの伴う"離婚"を、前向きな門出に変えるべく、これまで150組以上の「離婚式」のセレモニーをとりおこなってきた寺井さんのもとには、結婚に関するさまざまな恋の悩みが寄せられるという。「各停女子」という言葉を思いついたのも、"結婚にたどり着けない"という女性たちの悩みから、ある共通点を感じたことがきっかけだった。
「皆さん、付き合った彼氏の数は多いのに、交際期間が短いんです。1年以上続く人はまれで、なかには3カ月程度で出会いと別れを繰り返す人も。正直、行き当たりばったり感は否めません」
しかし、"恋多き女"と言っても、一度に何股もかけて男性を手玉に取るわけでもなく、自ら駆け引きを仕掛けるような"策士"でもない。「各停女子」の恋は、あくまで一途なのだと、寺井さんは言う。
「恋愛には、真面目で一途。のめり込みやすい"恋愛体質"なのですが、熱しやすく冷めやすいのです。しかも、前の恋を振り返る間もなく彼氏ができるので、失敗を省みる機会を持たないんですね」
壁にぶつかっても、関係修復のために努力をしたり、粘ることなく、次の恋へと駒を進める。その結果、じっくりと恋愛を育てることができず、同じ失敗を何度も繰り返してしまうのだ。
また、「各停女子」には、人懐っこく、いわゆる"天然キャラ"のタイプが多いのも特徴だと言う。楽しい時には大きな口をあけてゲラゲラと笑い、不機嫌な時は、顔にそれが表れる。そんな天真爛漫(らんまん)な無邪気さと、他人に壁を作らない無防備さが「隙」となって、恋のきっかけを呼び寄せるのだろう。
だが、自覚のないその魔性性ゆえ、知らないうちに相手を振り回していることも少なくないようだ。
「良く言えば純粋、悪く言えば、身勝手で視野が狭い。そんな『各停女子』が"心の赴くままに"行動した結果、酷い別れ方をして相手の恨みを買い、元彼がストーカー化してしまう人もいます。なかには、『もう二度と、あの人が住む街の駅では降りられない』という駅を10個以上持つ人がいて驚きました」
堂々巡りの恋の旅を繰り返す「各停女子」が、目的地にたどり着ける日はくるのだろうか――。寺井さんは、こうアドバイスする。
「さみしいからと、すぐに次に向かうのではなく、ある程度の間隔を置いて、"1人で振り返る時間を持つ"ということも大切なのだと思います。自分が何を目指しているのか、何を幸せだと感じるのか、ゆっくりと考えることではないでしょうか。晩婚化が進み、そもそも結婚自体を目指さない女性も増えています。自分にとっての幸せを考えるきっかけになればいいですよね」
次の恋に移行する前に、ふと立ち止まって、クールダウンの時間を作ってみる。目的地はどこなのだろう…そんな問いかけをすることで、各駅停車の気ままな旅を見直す人もいれば、自ら各駅停車の旅を楽しもうとする人もいるかもしれない。それもひとつの価値観だ。駅弁とお茶を旅のお供に、車窓から眺める景色を楽しみつつ、気になる街で下車。そんな鈍行の旅をしながら、乗り換えのタイミングを図るのも悪くない。
「各停女子」の対極!? 「特急女子」とは?
一方、そんな「各停女子」の対極にいるのが、「特急女子」の存在だ。
"どこで降りるか旅まかせ"の「各停女子」と違い、「特急女子」は、最善・最短のコースで"結婚"という終着駅に向かおうとする。地図を持たない気ままな旅など、「特急女子」には単なる時間のムダ遣い。「各駅で止まることに、意味あるの?」――。それが特急女子の総意だ。
「フワフワと流されがちな『各停女子』に比べ、『特急女子』は、計画的な戦略派です。自分の意志をしっかりと持ち、結婚に対する判断基準もブレがないので、照準を定めたら、それに向かってトントン拍子に事を進め、婚期を逃さずゴールインします」(寺井さん)
効率的な考え方を望み、ムダを嫌う「特急女子」。計画を練るのが得意で、段取り上手。与えられた業務をきちんとこなすため、職場では信頼される存在だ。彼女たちは、マストアイテムである「手帳」を活用し、自己管理。しっかりと将来の姿を見据えている。
「安定志向が強く、人からどう見られているかをもっとも重んじるのが『特急女子』です。結果的に、"望んだものは手に入れる"ケースが多いのですが、挫折を知らないため、シナリオ通りに事が進まなかったり、突発的な出来事には弱いという一面もありそうです」
一生懸命!メンテナンス女子
終わりの見えない各駅停車の旅に疲れてしまったり、あるいは、特急電車にも乗り切れず、進むべき道を見失ってしまったり――。恋の旅に疲れて、休憩する間、「自分磨き」にいそしむ女性たちも少なくない。いわば、恋愛戦線から一時的に離脱し、内なるエネルギーを蓄えている状態。寺井さんは、そんな彼女たちを「メンテナンス女子」と名付けている。
「恋愛はとりあえず、横に置いておいて、仕事や趣味に打ち込んで自分を高める時期にある人たちです」
線路から一旦車庫に戻り、一生懸命に車両をピカピカに磨きあげている「メンテナンス女子」。目指すのは、「恋愛や周りに振り回されない自分」だ。"今の私じゃダメ"という自己否定感があり、ブレない自分を手に入れようと、滝行や座禅にいそしみ、自分と向き合う人も…。恋も全力なら、自分磨きも全力。「メンテナンス女子」は、生真面目なのだ。
しかし、寺井さんは、そんな「メンテナンス女子」には、次の恋愛が早めに訪れることが多いと話す。
「実は、離婚式のお客様でも、『誰かいい人がいたら紹介して欲しい』とおっしゃる方がたくさんいらっしゃるのですが、そういった方は、なかなか次の方にめぐり逢うまでに時間がかかるようです。逆に、『しばらく恋愛はいいから、仕事や趣味に打ち込もう。男性に頼らず生きていこう』という方のほうが、魅力的に映るようで、意外とすぐに恋人ができたりしていますね」
メンテナンス女子にあって、各停女子にないもの――。それは、自分と向き合うという作業なのかもしれない。
悟りをひらいたような回送女子
そして最後は、最終列車も見送り、悟りをひらいたかのように、我が線路を進むこんな電車――。
「どの駅にも止まらず、車庫に向かう『回送女子』です。結婚を焦る時期を通り越し、すでに老後の人生設計を視野に入れて、自分にとって心地よい暮らし方を手に入れているタイプです」
豊富な人生経験によって、自分の人生の行く道を定めているが、そこに"恋愛"はない。
「昔は婚活など積極的に行ってきた人でも、ある時期をさかいに、吹っ切れてしまう。回送列車は誰も乗っておらず、明かりすらついていません。けれど、車庫に向かうという目的地は定まっており、気持ちも安定している。その生き方は、どこか余裕すら感じさせます。ですが、結婚や恋愛といった幸せからは一線を引いているので、"特急女子"からすれば、"ああはなりたくない…"と思われ、彼女たちが結婚に向かう起爆剤になる存在でもあるようです」
"なるほど"と、小さくうなずいてしまったのは、アラフォー世代の記者の周辺で、結婚する人が急増しているせいかもしれない…。
果たして、アナタはどの列車に乗っているのだろうか。「どれが幸せかというのは一概に言えない」と寺井さんは言う。もちろん、結婚はひとつの選択肢であり、決してゴールではない。自分にとって、どんな生き方が心地よいのか。どんな未来が幸せだと感じるのか――。少し立ち止まって考えてみるのも、いいかもしれない。
→ 以下ではあなたの「列車」タイプをチェック
~あなたの「列車」タイプを診断~
自分に当てはまるものをチェックしましょう。A~Dのうち、一番当てはまるものの数が多かったところがあなたのタイプです!
【Aタイプ】
□ やや天然の入った癒やし系のタイプ
□ メイクは薄めで、ネイルも自然のまま
□ 何事にも飽きっぽい体質だ
□ 人懐っこくて甘え上手
□ 恋愛が1年以上続かない
□ 恋愛の終わりにトラブルになりがち
□ 比較的自由な職種だ
【Bタイプ】
□ 過去の恋愛に未練はない、
□ 何事も計画を立て、その通りにすすめたいほうだ
□ ちゃっかりしているほうだと思う
□ ムダを嫌い、何事も効率を重視するほうだ
□ 手帳を活用するのが大好き
□ 目標のためには少々の犠牲もいとわない
□ 段取りをしっかりたてて行動するほうだ
【Cタイプ】
□ ブレない自分を手に入れたいと考えている
□ 今の自分に満足していない
□ 恋愛に興味がないわけではない
□ どちらかといえば生真面目な性格だ
□ 女子同士で集まる女子会への参加が好き
□ 熱中している習い事や趣味がある
□ 男性に依存したいとは思わない
【Dタイプ】
□ 仕事に厳しく、イケメン相手にも容赦ないお局タイプ
□ 老後までの人生設計が見えている
□ ある程度の蓄えがある
□ 結婚を焦る時期を通り越して、どこか余裕すら感じさせる
□ 周囲にしっかりしていると言われる
□ 趣味など、自分の楽しみも持っている
□ 感情が穏やかで安定している
(ライター 西尾英子)
[nikkei WOMAN Online 2012年12月28日掲載]
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