制作会社がレーベルを持つケースも
アニメ制作会社が音楽部門を強化するケースも増えている。
今年4月に『銀河機攻隊マジェスティックプリンス』でアニメ制作に参入した東宝は、同時に「TOHO animation RECORDS」という音楽レーベルも立ち上げ、主題歌やキャラソンを自社からリリースした。
「音楽はアニメ作品にとって重要なファクターなので、自社で手がけたかった。また原盤制作費が映像に比べて安価で、他のメディアで使用されたときの二次収入が期待できることも魅力的だった」と東宝アニメ事業室の古澤佳寛室長は狙いを話す。
ワーナー・ホーム・ビデオも2年前にアニメ制作への参入と同時に同名の音楽レーベルを設立。参入1作目の『ロウきゅーぶ!』から生まれた5人組声優ユニットのRO-KYU-BU!は、9月29日にさいたまスーパーアリーナでライブを行うほどに成長している。
SMEグループのアニプレックスは3年前ほどから、独自の音楽部門に力を入れ始めた。LiSAが11年のデビューから2作連続で10万枚クラスのヒットシングルを発表したほか、人気声優の花澤香菜のソロデビューを手がけるなど、存在感を増している。
ワーナーやアニプレックスが、音楽レーベルとしても成果を出せているのは、アニメ制作会社の強みを十分に生かしたためだ。
「LiSAがブレイクできたのは、強力な自社アニメの主題歌に抜てきされたのが大きかった。同じ社内ということもあって、アニメ作品担当プロデューサーと互いの作品のクオリティーを高めるために、遠慮のない深い議論ができる」とアニプレックス企画開発部の山内真治次長は語る。
アニソン市場はタイアップ先のアニメ作品がヒットしたり、曲自体のクオリティーが高ければ、ヒットを望みやすい。「アニメファンの思いをくみ取り、いくつかある方法論に従って制作すれば、ある程度はさばける数が見える手堅い分野」(アニメ業界関係者)との見方もある。
CD市場が頭打ちのなか、固定層が多いアニメファンに支えられているアニソンは、相対的に存在感を増し、マーケットを下支えしていると指摘されることが多い。再びアニソン市場が盛り上がり始めたことで、レコード業界全体の勢力図に影響を与えるようなパワーを持ちつつあると言える。
(日経エンタテインメント! 上原太郎)
[日経エンタテインメント!2013年10月号の記事を基に再構成]