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常識破りこだわりでブームを加速、『けいおん!』音楽の秘密

日経エンタテインメント!

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NIKKEI STYLE

 1980~90年代のバンドブームをほうふつとさせる、「放課後ティータイム」の前向きなガールズ・ロックや、超ハイテンションなオープニング&ハードかつクールなエンディング……。「究極のこだわり」で作られた『けいおん!』の音楽はブームをけん引、原作マンガやアニメには出せない部分を補い、その余波はCDや楽譜の販売から、関連する各種楽器の売り上げにまで及んだ。

バンドブーム全盛から一大音楽バブル期を迎えた1990年代ですら、バンドマンガはマンガ誌から敬遠され続けた。「誌面から音は聴こえないうえに、説得力のある歌詞を書くのも難しく、リアリティーがある作品はとても望めない」というのが、当時の編集者たちの一貫した見解だった。

それでも2000年代、『NANA』『BECK』とようやくバンドマンガが、アニメ&実写化されるほどの商業的成功を獲得した。前者は恋愛マンガ、後者はダメ少年の成長マンガという二層構造作品だったが、それでもマルチメディア化する際の最重要マターは、劇中で流れる「音楽」のリアリティーにほかならない。『NANA』は実在の人気アーティストたちに楽曲を任せ、『BECK』は主人公の神の歌声を無音にして全編インストにするという荒業で、各々しのいだ。制作陣の苦労がしのばれる。

さて『けいおん!』だ。最大の懸案は、劇中歌がただの女子高生部活バンドの演奏だという無茶な設定にある。しかも軽音楽部に入部して初めて、ギターを持った子までいる。そんなリアリティーと、アニメというファンタジーの狭間で、しかし『けいおん!』サウンドは見事に、オンエア中から全国の学園祭でこぞってコピーされるほど、大歓迎されたのだ。

仮想「5ピースの素人女子高生バンド・放課後ティータイム」の音楽は、どのようにして説得力を持ちえたのだろう。

「彼女たちが使っている楽器のメーカーや種類は、最初から指定されていました。原作で既に描かれていますから」(音楽プロデューサーのF.M.F小森茂生氏)。

「その楽器を逸脱しない音で録っています」(音楽プロデューサーのポニーキャニオン磯山敦氏)。

つまり、音楽室や講堂の舞台上で演奏された劇中歌群は、彼女たちの楽器で出せるであろう音だけで、レコーディングしている。

「演奏自体もプロっぽくならないよう、かなりざっくりとした生演奏に近いテイクを心がけました。『あまり難しいことをやるな』と(苦笑)」(音楽コーディネーターのF.M.F深井康介氏)。

こうした演奏パフォーマンス面での気配り以外にも、音楽制作チームのリアリティー追求の姿勢は、随所に見受けられる。

その端的な例が、劇中歌集であるアルバム『放課後ティータイム2』で聴ける、「カセットミックス」だろう。ラジカセで彼女たちが「せーの」で録音した音源を、未放送分も含めて再現してしまったのだ。モノラル録音で、しかもカセット録音の質感も漂っていて、見事なそれっぽさなのだ。

「最初は劇中と同じようにラジカセで録ってみたんですけど、あまりにも商品として出しづらいものになり(苦笑)」(小森氏)。

「で、マイクを1本立てて、録り終えた演奏をプレイバックして録ってるんです。その間は皆、息を潜めてました(笑)」(深井氏)。

「いろんなマイクで試したなかから、一番リアルな音を選びました。そこがどんな場所で、5人とラジカセはどんな距離感で、どんな靴を履いているのか。当然、きぬ擦れの音も…、とにかく想像力を働かせましたね」(磯山氏)。

音楽そのものというよりも、それが生まれた場所や状況も含めて、音楽を空気としてとらえたことが、『けいおん!』サウンドに生命を吹きこんだと言っていい。

【音楽面での作り手のこだわり】

1 限りなく嘘がないサウンド
 各々の使用楽器の物理的な制約を厳守したうえに、例えばツッコミ気味の律のドラムの癖など隠れ原作ネタもしっかり遵守したことで、音はとてもリアルに。
2 アニメと演奏の完全連動
 監督自ら「絶対譲れない」と言っただけあり、見事に音の一つひとつと演奏シーンの映像の動きがシンクロ。作画と音楽の垣根を越えた制作陣の連係は秀逸。
3 実験魂が支えるリアリティー
 「演奏シーンは、実際のレコーディングもほぼそれと同じ楽器編成で音を録っていきました」(小森氏・談)。驚愕の裏技連発は、音楽のプロならでは。

そして京都アニメーションの作画陣もまた音楽的リアリティーを追求して、演奏する指の動きが音とリンクするよう描いているのだから、心地よい。

「劇中歌のレコーディングを終えるたびに、もう一度楽器パート別にミュージシャンがアテブリするんです。で、ビデオを回してその手元を撮って、作画資料として京都アニメーションさんに送ってます。毎回欠かさず」(深井氏)。

「想像ですけど、作画される方たちの仕事場には、楽器の実物が置かれてるんじゃないかな。ギターなんかディテールが難しいし、光沢も反射もあるし、ちょっと角度が変わっただけで見え方が全然変わりますしね。でもそれが見事に表現されてますから」(磯山氏)。

この徹底的な生真面目さは、音楽&アニメスタッフのみならず、声優陣にまで及んでいる。2度のライブイベントでは、声優自身が役柄同様に生演奏したのだ。

「彼女たちも劇中のキャラと同じように、楽器を持ったことないレベルから始めて、曲をちゃんと演奏できるまでになりました」(小森氏)。

「すごいですよね、本当に。忙しいのにあれだけ気合い入れて練習して、家にまで楽器を持ち帰って。きっとあそこまでやってるからこそ、音楽シーンでリアリティーを持って演じられるんだと思うんですよ。ピンとくるものがあるんでしょうね。楽器を持ったときの挙動とか」(磯山氏)。

そういう意味では、考えに考え抜かれた音楽が『けいおん!』にリアリティーを与え、スタッフとキャスト全員の真摯(しんし)さが結集した『けいおん!』が音楽にリアリティーを持たせている。まさに理想的な共依存と言えよう。

音楽でキャラの内面を見せる

するとこうして生まれた「ほのぼのとした部室感」あふれる劇中歌と、素人の演奏とは思えぬほど完成度が高すぎるオープニング(OP)/エンディング(ED)曲との整合性が気になるが、実はそこもしっかり考慮されていたりする。

「聴いてる方たちはもしかしたらOPもEDも彼女たちの演奏曲というイメージがあるかもしれないけど、制作している我々の考え方としては、今この瞬間の彼女たちの演奏曲ではないんです」(磯山氏)。

「彼女たちが成長し、仮にデビューして誰かがサウンドメイキングして作ったとしたら――という設定の楽曲。僕たちの中だけで、ですが(笑)」(小森氏)。

それこそ小森氏のような外部の人にプロデュースされた、「未来の放課後ティータイム」の楽曲か。気軽にコピーしてもらえるようCDにスコア譜まで封入した劇中歌のパターンとは異なり、OP曲作曲者のTom・H@ck氏は「弾けるものなら弾いてみろ」と、逆に楽曲の難易度を上げてチャレンジ精神を煽(あお)っている。実際、ニコニコ動画では「○○を弾いてみた」的な投稿映像が、急増中のようだ。

また各メンバーごとにリリースされている一連のキャラクター・イメージソングは、「表題曲には一人ひとりの担当楽器を必ずフィーチャーするのが基本(小森氏)」。実際のバンドがライブでメンバー紹介する際、各々短いソロを演奏するお約束を思い出させる。

「僕らは音楽で、登場人物のキャラクターの内面を少し踏み込んでお見せする役目だったと思います」(磯山氏)。

劇中歌・OP/ED曲・キャラソンのすみ分けを超えて、『けいおん!』は音楽の楽しさを伝えてくれる貴重なソフトなのだ。

(ライター 市川哲史)

[日経エンタテインメント!2011年12月号の記事を基に再構成]

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