「ぽっこりおなか」をへこます呼吸法
日経ヘルス
太っていなくてもおなかだけはぽっこりしている。食事制限して減量しても腹は全くやせない。そんな人は、試しに腹式呼吸をしてみてほしい。腹部がぺちゃんこにへこむまで、息を吐くことができるだろうか。
■腹式呼吸し筋肉動かす
「おなかがぺちゃんこになるまで息を吐ききるには、おなか周りの筋肉がしっかり働く必要がある」と、呼吸器疾患の専門医、雪谷大塚クリニック(東京都大田区)の雨宮隆太院長はいう。深呼吸する、歌う、泳ぐといった、横隔膜が大きく上下する活動をほとんどしていない人は、肋骨の間の筋肉や、腹部と腰部の周りを腹巻きのようにぐるりと取り囲む腹筋群を、あまり有効に使えていない。
安静時の呼吸で使われるのはほとんどが吸気のための筋肉で、吐くときも吸気に使う筋肉が緩んで自然に空気が排出されるだけ。腹筋は収縮しない。腹部周りの筋肉を日ごろから意識して動かしていないと、腹筋は怠けたまま次第に収縮しにくくなって緩み、内臓を支えられなくなっておなかがぽっこりとしてしまう。
「運動などで酸素をたくさん消費するとき体内では炭酸ガスや乳酸がたくさん発生する。それを体の外に吐き出すときに最も働く筋肉がおなかの筋肉」(雨宮院長)。だから、息を目いっぱい吐いて腹をへこませる腹式呼吸は、緩んだ腹筋群が原因の「ぽっこりおなか」を引き締めるのに役立つ。
息を吐いたときに腹がへこまなかった人は、胸や背中、脇腹の筋肉の動きも鈍って、胸郭と横隔膜の動きが妨げられている可能性がある。太極拳の師範でもある雨宮院長が考案したぽっこりおなか解消のためのストレッチで、腹式呼吸をしながら、呼吸に関わる筋肉(呼吸筋)をほぐそう。
「斜めスライド呼吸」では脇の筋肉、「三角ひねり呼吸」では背骨の周りの筋肉が、それぞれ伸びるのを感じながら息を吐こう。コツは、ゆっくりと鼻から息を深く吸い、口笛を吹くように細く長く吐くこと。
時間をかけて息を吐くことで「普段、意識しにくい体の奥にある筋肉までしっかり動く」(雨宮院長)。
やってみると、背骨の周りや胸部と腹部の筋肉が、斜めに引き伸ばされたり、縮んだりするのがわかる。繰り返すうちに上体がほぐれてきて、末梢(まっしょう)血管が拡張、血流が改善され、体の中からじんわりと温かくなるはず。ゆっくりと、息を吸ったり吐いたりしているうちに、視界が明るくなることもある。血流が良くなるためだ。
呼吸は1分間に10回程度のゆっくりしたペースで、息を吸うスピードの倍以上をかけて息を吐くことを心がける。「呼気を長くすると、副交感神経が優位になって血圧が降下し、脈拍も遅くなりリラックスする」(雨宮院長)。息を吐くときに体を強く硬直させたり、息をこらえたりして血圧の上昇を招かないためにも「ゆっくり、長く」は大事なポイントだ。
■姿勢もよくなる
腹部が引き締まる以外にも、深い呼吸をするときに使う背中や胸、腹部の筋肉は、姿勢を維持する役割もある。「呼吸が上手になると、姿勢がよくなり、スタイルが改善される」と、雨宮院長。
さらに、深い呼吸で横隔膜の上下振幅が大きくなると「その刺激が脳内神経を安定させる。呼吸法に習熟してくると、心を平穏にさせる脳内物質、セロトニンを合成する神経も活性化される」(雨宮院長)。
ゆっくりしっかりと吐ききることで腹筋が目覚めて引き締まり、リラックスできる。朝や昼間眠くなったとき、夜眠る前には軽く、習慣にしてみよう。
ご飯などに多く含まれる糖質を控えることで血糖値の急上昇が抑えられ、インスリンの分泌も増えない。余分な糖質を脂肪として蓄える働きをするため「肥満ホルモン」とも呼ばれる、このインスリンの分泌を抑えることが、肥満予防に有効だという。
「ある40代の女性は4カ月半で体重が約9キログラム減った。そのうちの7キログラムが食事制限では減りにくいとされてきた皮下脂肪だった」と服部院長は話す。さらなるサイズダウンを狙うなら運動を。食事後30分以内に運動すると、筋肉がブドウ糖を消費して血糖値の上昇を防げる。
(日経ヘルス編集部)
[日経プラスワン2012年7月7日掲載]
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