花粉症の薬は市販薬より処方薬が「安い」
「関西は10倍飛散」「関東でも7~8倍は飛ぶ」と、ちょっと騒がれ過ぎな感もある2011年春の花粉飛散量予想。もっとも「10倍」というのは飛散量が極めて少なかった2010年と比べた数字であって、ここ10年の平均値と比べると、「2倍程度」だとみている専門家が多い。
ただ、2倍とはいえ、花粉の量が多いことに変わりはない。既に花粉症だと分かっている人は飛散開始前から準備を整えておきたい。また、飛散量の多い年は、今まで症状がなかった人の"花粉症デビュー"も多くなる。くしゃみや鼻水が10日以上続くようなら病院でアレルギー検査(採血)を受けてみよう。
ここで花粉症治療の基本を復習しておこう。
一般的に処方されているのが、「アレグラ」や「クラリチン」といった第2世代の抗ヒスタミン薬(抗アレルギー薬)だ。第2世代の抗ヒスタミン薬は眠気などの副作用は少ないが、やや効きが弱く、効き始めるまでに数日掛かる。そのため、7~10日前から飲み始め、体を慣らしておく必要がある。ちなみに関東の平均的な飛散開始日は2月14日(バレンタインデー)あたりだ。
2011年は1日1回服用型の新顔経口薬ザイザルが登場し、注目されている。海外で行われた患者調査では既存の薬より眠気や無気力感などの副作用が出にくかったと報告されている。ただし、新薬なので、今シーズンいっぱいは最大14日分までしか処方してもらえないのが難点だ。
また1日1回投与で「効きがいい」と点鼻ステロイド薬も人気が高まっている。MSDのナゾネックスは今年のリニューアルで無香になり、使用感が良くなった。「いつもは経口薬だけ」という人でも、飛散量の多い2011年は症状の悪化を防ぐため点鼻薬も処方される可能性がある。
花粉飛散前から薬の処方を受けている人は2割以下
このように、処方薬には魅力的なものがあるが、「病院に行くのは面倒だ」という人はかなり多いようだ。2010年にグラクソ・スミスクラインが発表した花粉症に対する意識調査では、基本通りに「花粉飛散より前から医師に薬を処方してもらっている」人はたったの16.5%で、飛散開始後に処方を受けている18.4%と合わせても4割にも満たない。逆に薬局やドラッグストアなどでOTC(市販薬)を買い、「自分なりに対処している」という人が半数近いのだ。
だが、下の比較表を見てほしい、健康保険が適用になる処方薬はOTCに比べてかなり窓口負担額が少ないことが分かる。眠気が出にくい新薬にはまだないが、ジェネリック医薬品を選択すれば、花粉症の薬代はかなり軽減できそうだ。花粉症はスギだけの人で約2カ月、ヒノキにも反応する人なら3カ月と長い間薬をのむことになる。この差は決して小さくないのではないだろうか。
■忙しい人にOTC、かさばらないフィルムタイプ初登場
しかし、そうはいっても、夜遅くまで開いている薬局やドラッグストアで手軽に買えるOTCはやはり忙しい人々の強い味方だ。注目したいのは、初めて登場したフィルムタイプの鼻炎薬で、佐藤製薬と興和から新製品が発売された。どちらも切手1枚程度の大きさのフィルムを口の中で溶かすだけ。水なしで服用でき、個別包装でかさばらないため、ポケットや定期入れなどに入れておけるところも便利だ。
また、点鼻薬には2010年まで処方薬にしか配合できなかったステロイド成分を配合したOTCがグラクソ・スミスクラインと佐藤製薬から発売された。ステロイドは鼻詰まりや鼻水などを抑える効果が高い。鼻腔(びくう)内の局所使用なので、全身的な副作用の心配がほとんどなく、眠気も出ない。
とにかく鼻詰まりがつらい人、絶対に眠くなっては困る人、ステロイドには抵抗感のある人など、症状やライフスタイル、好みによって合う薬は人それぞれ。花粉症に効く薬は処方薬でもOTCでも種類が多いので、医師や薬剤師とよく相談して、自分のニーズに合った薬を見つけよう。
(ライター 竹島由起)
[WOMAN Online 2011年1月24日掲載]
健康や暮らしに役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。