「自己責任」だけではやっていけない

――老後のことを漠然と考えると不安になるだけですね。

香山 20代、30代はお金を消費するよりも貯蓄に回そうと考えたり、節約を考えたりしているようで、それがクルマ離れやブランド離れにつながり、消費を冷え込ませるという悪循環が起きています。

だれもがこの世を去るときまで元気でいたいと口では言うんですが、そんなにうまくはいきません。年をとれば当然、いろいろな病気になりやすくなります。そうなったらきちんと医療や介護を受けられるといった心の安全装置が必要です。「なんとかなるさ」ではやっていけないですよね。

21世紀になって小泉首相が小さな政府を目指したのがとん挫して、やはりそれでは駄目と言われているところに、また同じ考えが出てきたりもしています。それぞれが自立して、自分のことは自分で面倒みましょうという自己責任の考え方です。ただ、それでやっていけるのかなというのが私の正直な気持ちです。

去年、大震災もあって、多くの人たちがやはり一人ではやっていけないとか、いざとなったら助けを借りなければいけないというのを身にしみて感じたと思うのです。

――香山さんは2006年に出版された「老後がこわい」で、終(つい)の棲家(すみか)や介護、医療、いつまで働けるか、といった老後の不安について具体的に調べて「すべての問題はいま過渡期にある」という結論を得ました。でもいまだに過渡期のままですね。

30歳全員に介護手続き講習の義務付け必要

香山 介護などは訪問介護サービスなどが出てきましたし、住まいもいろいろな高齢者向け住宅が出てきていますけれど、自分たちで暮らしやすくする試み、例えば女性たちでコレクティブハウスをつくるといった試みはうまくいっていません。医療などの状況は悪化していますね。

社会学者の上野千鶴子さんとお話をしたときに、上野さんはしっかりした自立の考えの持ち主ですから、きちんと自分でお住まいの近くで、介護はこのステーションに、医療はこの先生にとか、準備万端整えて、もう安心とおっしゃっていました。でも、だれもがそんなにきちんと自分のことを自分でできるわけでもなく、「私はますます老後が怖い」と言って「あなた、何やっているの?」と笑われました。

地域差もありますし、本人の経済状況もあるし、そこまで自分できちんと意識的にいろいろな人に頼んだりするのは、なかなか難しいですね。

――そこまでできなくてもいいのかもしれませんが、逆に日本人はあまりにも介護など高齢期に必要な知識が不足していますね。

香山 介護は、実際に親の介護をする場面にならないと、何をどう手続きしていいかも分からないですね。親の介護はとても大事な問題なので、30歳くらいで全員が介護の手続きなどについて講習を受けなければいけないという義務を課すべきではないかと思います。

(ラジオNIKKEIプロデューサー 相川浩之)

[ラジオNIKKEI「集まれ!ほっとエイジ」9月25日、10月2日放送の番組を基に再構成]

「集まれ!ほっとエイジ」(ベネッセスタイルケア、野村證券提供)は、変化を恐れない果敢なシニアたち=ほっとエイジが、超高齢社会をどう生き抜くか、を考えるラジオNIKKEIの番組(http://www.radionikkei.jp/hot-age/)。月曜日が、ライフワークに生涯を捧げることを提案する「目指せ!生涯現役」。火曜日が、学校では教えてくれない親の介護、マネープラン、人生90年時代の人生設計を学べる「シニア予備校」。水曜日が、介護サービスを検証するとともに、どんなシニア向けビジネスに可能性があるのかを探る「シニアビジネス研究所」。木曜日が、どうすれば幸せな長寿社会を生きられるかを考える「理想の長寿社会を語ろう」。バックナンバーはネットで聴くことができます。キャスターは相川浩之、町亞聖(月~水)、大宮杜喜子(木)。
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