老後のモデル、若いときより多様

――政府は、財政が厳しく、社会保障などの給付を減らしたいので、高齢者に元気で働いてくれと言っているような気もします。

香山 「島耕作」の漫画を描かれている弘兼憲史さんも委員をされていましたが、だれでも島耕作的な生き方をしたいと思うでしょう。教える側に回ったり、コミュニケーションを楽しんだり、それなりにリッチな生活もするというのはだれでも憧れる老後だと思いますけれど、だれもがそのようにできるとは限りませんし、また、そうなる必要もないと思うんです。

一人ひとりの老後のモデルは、若い時以上に多様だと思うんです。身体を壊した方や、「もう仕事はしたくない」という方もいらっしゃる。そういった方たちにも安心して過ごせる居場所をつくりたいし、出番もつくりたいですね。

――地域とのつながりが希薄化している中で、地域のコミュニティーの再構築を図る必要があるというのは分かったのですが、それを支えるのも高齢者なのですか。

香山 高齢者だけではなく、世代間交流も促したいです。高齢の方は若い人に知恵を与え、若い人たちはITの使い方みたいなものを高齢者に教えるような形で。

50代の自分、同世代の凡庸なサンプル

――香山さんは、なぜ“高齢者問題”に関心を持ち始められたのですか?

香山 高齢者問題と言うより、老後問題がきっかけです。

50代になった私自身は、同世代のものすごく凡庸なサンプルだと思っているんです。バブルのときが20代、30代。そのときには浮かれて、先のことなどは考えずにその日を楽しく過ごしました。ちょうど、私が社会に出たのは男女雇用機会均等法が施行されたあたりで、「これからは女性も仕事だ」と言われ、そのときはその気になりました。

ちょうどトレンディードラマがはやり、「これからは女性は早くから結婚や出産をしなくても、おしゃれに生活をエンジョイすればいいんじゃない」と言われ、「シングルが格好いい」みたいな時代が来ました。「そうかな」と思ってちゃらちゃらしているうちに、(エッセイストの)酒井順子さんが「負け犬の遠吠え」を書かれたり、少子化が社会で非常に深刻な問題となったりして、はっと気づくと「産まず嫁がず」の40代になっていた。

そのうちに親もだんだん老いてくる。気持ちでは20代のころと変わらず、趣味を楽しんだり、仕事をしたりしていたのですが、エイジングが忍び寄り、年齢に応じた課題、私でしたら親をどう介護をするかということが差し迫ってきて、50代になると周りにもそういう友達がたくさんいる。

美魔女にも老いは必ずやってくる

今度は「自分はどうする?」となるわけです。自分自身の介護とか人生の終盤の問題は先送りにして、全然考えてこなかったし、「なんとかなるさ」という一言のもとに、棚上げしてきたということに気づくのです。周りで身体を壊す友達とか、女性の孤独死がとりあげられ、実際に周りでもそういう方が出てきたりして、それでいいのかといった話にようやくなりました。

私は子育てとか、途中のステップはすっ飛ばして、いきなり子どもから老人になるみたいな、凡庸なサンプルなのですが、そういう人は周りにたくさんいるんですね。子どもがいない40代、50代女性や、結婚していない、あるいは結婚したけれどまたシングルになった女性。男性も同様で、生涯非婚という方も増えている。そういう人たちがこれからどういう老いを迎えていくのかというのは個人的問題であると同時に、非常に大きな社会問題なのではないかなと思うのです。

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