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50年の流人生活、天下のご意見番支えた食生活

戦国武将の長寿食(2)

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NIKKEI STYLE

 国盗り合戦が繰り広げられた戦国時代に、驚くべき長寿を全うした武将たちがいた。平均寿命がわずか37~38歳であった当時、70歳を超えて生きることはたやすいことではなかった。長寿で知られた武将たちの息の長い人生と健康の秘密は、日々の食へのこだわりにあった。
宇喜多秀家(84歳)×アシタバ飯】

生涯 流人の島でたくましく生きた

備前岡山の大名にして、豊臣政権の五大老の一人でもあった宇喜多秀家。眉目秀麗で秀吉からもかわいがられ、秀吉の猶子(養子の一種)として若くして従三位中納言に任じられたエリートは、関ケ原の合戦を境に人生が一転する。石田三成とともに西軍副大将として戦った秀家は、家康率いる東軍に大敗。島津家を頼って薩摩に落ち延びるが、結局は家康側に引き渡され、八丈島に流罪となってしまう。

罪人として八丈島で過ごした秀家が、過酷な島の生活のなかで84歳まで長生きできた秘訣。それはアシタバ飯にあった。アシタバは長寿草とも呼ばれ、伊豆七島に多く自生するセリ科の植物。秀家は麦、アワなどの雑穀に、煮たアシタバを混ぜて主食にしていた。

「アシタバは、ポリフェノールの一種で抗菌・血行促進作用があるカルコンという成分を含み、老化を防ぐカロテンなど長寿に役立つ成分が豊富です。さらに当時の八丈島では米が取れず、秀家はほとんど白米を食べなかった。このため血糖値が上がらず、健康に過ごせたとも考えられます」(食文化史研究家の永山久夫さん)。

また、海に囲まれた島暮らしで、サザエなどの魚介類や海藻を捕ることができた。アシタバ飯とわずかな魚介のおかずという質素な食事が、長寿の要因となったようだ。

秀家の妻は、前田利家の娘、豪姫である。豪姫は夫と子が流罪となった後、兄・前田利長のもとに移り住み、金沢で余生を送った。秀家は加賀前田家から、食料、衣類などの援助を受けていたが、それでも生活は困窮を極めた。江戸から八丈島に赴任した代官が、秀家に握り飯をごちそうすると、1つだけ食べ、残りの2つは家族のみやげに大切そうに持ち帰ったという逸話が残る。

「自然のなかで暮らし、ひたすら島中を歩いた秀家は恨み・つらみを忘れ、仏の境地に達していたのかもしれません」(永山さん)。

家康の死後、恩赦で刑が解かれても秀家は八丈島にとどまり、島での暮らしは実に50年間にも及んだ。亡くなったときはすでに4大将軍家綱の治世であった。悲劇の武将・秀家こそが、関ケ原で戦った戦国武将のなかで誰よりも長く生き延びたのである。

うきたひでいえ。1572~1655年。備前岡山城主、宇喜多直家の次男として生まれる。元服の際、豊臣秀吉から「秀」の字を与えられ秀家と名乗るなど、秀吉の寵愛(ちょうあい)を受ける。小田原征伐などに参加して豊臣政権を支え、五大老として活躍するが、関ケ原の合戦に敗れ八丈島に流刑となった。
大久保彦左衛門(80歳)×カツオ節】

戦時の兵糧を生涯好んだ

徳川時代初期に「天下のご意見番」として知られた旗本、大久保彦左衛門は、徳川家康が采配を振るったほとんどの合戦に参じた忠臣の武将であった。そんな彦左衛門が常備食として持ち歩いていたのがカツオ節だ。

合戦に出陣する際、多くの武士はカツオ節を帯に挟み、食事が取れず疲れ果てると、カツオ節をそのままかじった。それだけで驚くほど力がよみがえったという。

「カツオ節は約75%がたんぱく質でできている高栄養食品なので、疲労回復には最適です。しかも必須アミノ酸であるトリプトファンが豊富。彦左衛門は機知に富み、自信に満ちた人物でしたが、トリプトファンが生成する、心の落ち着きと安定感をもたらす、幸せホルモンとも呼ばれるセロトニンのおかげとも考えられます」(永山さん)。

講談や講釈に登場する彦左衛門は旗本以下の駕籠(かご)の使用が禁じられると、大だらいに乗って登城するなど、ユーモアを解す人物として描かれている。脚色はあるものの、彦左衛門のこの豪放磊落(ごうほうらいらく)な性格は、カツオ節によってもたらされたものといえなくはない。日常の食事は、麦がゆにイワシと野菜の味噌汁など質素そのものであった。

また、自分の出世を顧みず、将軍や家老職に直言したり、江戸の浪人たちの面倒を見たりするなど、義きょう心あふれる人でもあった。

太平の世になってもカツオ節を手放さなかった彦左衛門には、こんな逸話も残されている。かつての合戦の戦友で大名となった井伊直政の病気見舞いに訪れ、見舞いの品として、いきなりカツオ節を差し出した。直政が驚くと、「貴殿は出世して屋敷は大きく、衣服も立派だ。だから病気にもなる。私は朝からカツオ節ばかり食べているから、この通り丈夫だ。ぜいたくは慎まれよ」と諭したという。

「ストレスの多い現代人も、彦左衛門を見習って、カツオ節をもっと食生活に取り入れれば、心に余裕と自信が満ちて、長生きできるかもしれません」(永山さん)。

おおくぼひこざえもん 1560~1639年。三河国(現愛知県)に生まれる。彦左衛門は通称、本名は大久保忠教。徳川家勃興以前からの家臣で、家康が指揮したほとんどの合戦に加わっている。家康から家光まで3代の将軍に仕え、愚直なまでに正論を吐くその生き方は、後年、講談などに取り上げられた。
鍋島直茂(81歳)×イワシ】

魚好きが長命につながった

肥前佐賀藩の藩祖で、豊臣秀吉にも高く評価された武将、鍋島直茂。81歳まで生きた直茂の長寿の秘訣は、イワシにあった。なかでも直茂が好んで口にしたのが、当時の行軍には欠かせなかった塩分が豊富に摂取できる、塩漬けしたイワシを乾燥させてから焼いたものだった。

「イワシには脳細胞を活性化させ、動脈硬化を予防し、中性脂肪を低下させる働きがある不飽和脂肪酸のDHAや、EPAが豊富に含まれています。またビタミンB群も豊富で、疲労回復効果がある。栄養学的に見ても、格好の海の長寿食といえるでしょう」(永山さん)。

直茂のイワシにまつわる説話は、「武士道とは死ぬことと見つけたり」の一節で知られる『葉隠』にも登場する。肥前の大名、龍造寺隆信の右腕として活躍していた直茂は、出陣の際に家臣の家に立ち寄る。その家臣の娘が大量のイワシを大うちわであおいで焼き上げる手際の良さに、イワシ好きの直茂はいたく感動。

「あのように機転の利く女房を持ちたい」と願い、やがて、その娘と夫婦になったという。夫婦のなれそめとなったイワシが、直茂の長寿にもつながっているのは興味深い。

ほかに、直茂が好んで食べたものに玄米がある。精米されていない玄米には胚芽と糠(ぬか)が残り、食物繊維が大量に含まれているため、便通が良くなり整腸作用がある。「玄米にはGABAという成分も多く含まれ、脳細胞の代謝を促進させ、不安やイライラを鎮める効果もあります」(永山さん)。

さらに、直茂は遠出の際には「延齢丹」という健康薬まで携帯したという。それは直茂の主君で、肥前の熊と恐れられた龍造寺隆信が、晩年は酒に溺れ乗馬もままならず、駕籠に乗って戦の指揮を執っていたのを反面教師としてのことだった。晩年まで地元、肥前佐賀のために精力的に働いた直茂の長寿の源泉は、細やかな健康管理術にあったといえるだろう。

 なべしまなおしげ 1538~1618年。肥前の豪族、鍋島清房の次男として生まれる。肥前では龍造寺氏と少弐氏とが敵対関係にあったが、主君・龍造寺隆信に仕えた直茂の働きもあり、龍造寺氏が肥前を統一。龍造寺隆信亡き後は、肥前の国政を握り、その後、肥前佐賀藩の藩祖となる。

この人に聞きました

永山久夫さん
 食文化史研究家。1932年、福島県生まれ。古代から明治までの食事復元研究の第一人者であり、長寿食や健脳食にも造詣が深い。食文化研究所、綜合長寿食研究所所長。西武文理大学客員教授。近著に『武士のメシ』(宝島社)などがある。

(ライター 礒部道生)

[日経おとなのOFF2012年7月号の記事を基に再構成]

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