たるみやシワ、生活習慣病も… 40代を脅かす"糖化"
日経ヘルス プルミエ
白米、白いパンといった精白された炭水化物食品をよく食べ、ジュースや焼き菓子が好きという人は要注意。たるみが進む危険性があります。たるみの原因の一つに"糖化"という現象があることが分かってきました。これは、糖がたんぱく質と結合すること。食品の調理や製造過程でもできますが、体内では、急速に血糖値が上がって処理しきれない糖が生じると、組織をつくるたんぱく質に糖が結合して起こります。こうしてできるのが糖化最終生成物(AGEs)。冒頭の食品群は、血糖値を上げやすかったり、AGEsが多いと考えられるものです。
「AGEsは肌のハリのもとであるコラーゲン同士を結合させ、弾力性を低下させます。これがたるみの一因。さらに、コラーゲンとエラスチンの代謝も遅らせます」と、慶應義塾大学医学部教授の井上浩義さん。たるみやシワだけでなく、老いた印象を強める黄ぐすみに対する影響も指摘されています。
□砂糖入りの清涼飲料やスイーツ、お菓子などの甘いもの、白米・白いパンといった炭水化物食品が好き
□野菜や海藻など食物繊維が多い食品をあまり食べない
□運動をほとんどしない
□お風呂はシャワーですますことが多い
□しっかりUVケアをしていない
□糖尿病、もしくは糖尿病予備軍と言われている
チェックが多いほど、体の中で糖化が進んでいる可能性が大!
さらに、一部は病気の原因にも。皮膚のたるみ同様に、コラーゲン線維の糖化で起こる骨粗しょう症だけでなく、「糖尿病や動脈硬化など生活習慣病との関係が明らかになっています。特に、網膜症や腎症など糖尿病合併症の第一原因はAGEsと考えられます」と、AGE牧田クリニック(東京都中央区)院長の牧田善二さん。
AGEsが増えるルートは、食事で取り込む場合と、甘いもののとりすぎなどで体内でつくられる場合の二つ。「食事に含まれて入ってくるAGEsが55~60%といわれています」と井上さん。AGEsは糖分とたんぱく質を高温加熱してつくられる食品に多く含まれるとされます。代表例がクッキーなどの焼き菓子やフランクフルトのような加熱した肉加工品など。
「体に害を及ぼすAGEsは、体内に一度蓄積したら排泄されにくいのが大きな問題です。特に皮膚のコラーゲン線維のように半分入れ替わるのに約15年もかかる組織だと、長期間とどまり続ける可能性があるんです。40歳を超えると年齢に比例してAGEsが増えるという研究もあるので注意して」と牧田さん。糖尿病の人では糖化が進みやすいことが分かっていますが「たるみやシワも糖化の指標」とのこと。
では、どうしたら糖化を防げるのでしょうか? AGEsを多く含む食品に気をつけるほかに「食後すぐ10分ほど歩くだけでも糖が使われ、食後の血糖値は上がりにくくなります」(牧田さん)。血糖値を上げにくい食事をすることも大切。
ちょっとしたコツで糖化は防げます。以下では、糖化を防ぐサプリメントと入浴法を紹介します。
■できてしまった/入れてしまった悪玉糖化物はサプリで排出
肌や骨に蓄積したら排出しにくいのがAGEs。できるだけ体の中にためないようにしたいものです。そのためには、野菜や昆布、キノコといった食物繊維が多い食材をとって腸からの吸収を妨げることが基本。また、吸収を阻害したり、糖化の邪魔をするサプリの摂取も有効です。
吸収阻害に役立つ成分には、母乳に含まれるラクトフェリンや高純度の炭などがあります。「炭の中には、食事に含まれるAGEsを97%吸着除去する特殊な炭があることを、実験で確認しました。食事に含まれるAGEs量の10%以上は体内に吸収されるようなので、このような成分や食物繊維などで排出を」と、金沢医科大学非常勤講師の樋口正人さん。
体内で糖化を防いだり、できてしまったAGEsを処理するのに役立つ成分としては、大豆の渋み成分サポニン、ぶどうの種子などに多いレスベラトロール、ドクダミやローマンカモミールといったハーブ、鶏ササミ肉に多く含まれるアミノ酸の一種カルノシン、豚肉やニンニクなどに多く米国では抗糖化作用の確認も進んでいるビタミンB6(右グラフ)などが。「ビタミン B1も有効なのでB6も含むB群コンプレックスがおすすめです」(牧田さん)。
■お風呂で体をしっかり温めて、たるみを防ぐたんぱく質をつくる
熱というストレスが体にかかったときにつくりだされるのがヒートショックプロテイン(HSP)というたんぱく質です。これが、糖化した皮膚のコラーゲンを排出する一方、新しいコラーゲンを生み出し、新陳代謝のカギになるとして注目されています。
「HSPを増やすのは簡単。40~42℃くらいの温度で入浴する(マイルド加温)だけでいい(下ののHSP入浴法参照)。マイルド加温によってHSPが生じると、新しいコラーゲンの生成が活性化するとともに、酸化ストレスから体を守り老化スピードも遅らせます。また、たるみの一因は筋肉の衰え(筋萎縮)にありますが、マイルド加温はたんぱく質量を増やすことで、筋肉の減少も抑制します」と愛知医科大学医学部准教授の伊藤要子さん。
伊藤さんがすすめる入浴法によるHSPの増加は入浴後1~2日目にピークを迎えます。「マイルド加温入浴の1~2日後に体が元気になっていく感じがつかめたら、それがHSP増加のサイン。免疫力アップによる病気予防効果も期待できます。しかも、週に2、3回このような入浴をするだけでいい。この入浴法を活用して、老化や病気をくいとめてほしい」と伊藤さん。
【ヒートショックプロテインを増やす入浴法(HSP入浴法)】
2.お風呂を42℃に沸かす
3.お風呂にふたを置き、湯温を下げないように
4.湯船に10分入る※(40℃のときは20分、41℃のときは15分。舌下に入れた体温計が38℃くらいになるのを目安に)
5.入浴後は体を冷やさないようにトレーナーやサウナスーツを着て10~15分保温
6.入浴前後に300~500mlの水分を補給
7.週2日この入浴法を行う
8.3~4カ月後に効果が低下してきたら、1~2週間中止してから再開
この人たちに聞きました
愛知医科大学医学部泌尿器科准教授。名城大学薬学部薬学科卒、名古屋市立大学医学部で医学博士学位取得。著書に『加湿生活「ヒートショックプロテイン」があなたを健康
にする』(マガジンハウス)ほか。
AGE牧田クリニック院長。北海道大学医学部卒。日本糖尿病学会認定医専門医。2003年にクリニックを開設。著書に『糖尿病専門医にまかせなさい』(文藝春秋社)など。
慶應義塾大学医学部化学教室教授。九州大学大学院理学研究科博士課程修了。日本抗加齢医学会評議員。生活習慣病の予防と治療を目的とした医薬品や機能性食品の開発を行う。
金沢医科大学 腎機能治療学 非常勤講師。千葉大学大学院理学研究科修了。中外製薬でエリスロポエチンの創薬研究に従事。2007年より現職。新しい抗糖化素材の研究開発に取り組む。
(ライター 東海左由留、川崎美津子)
[日経ヘルス プルミエ2011年春号の記事を基に再構成]
健康や暮らしに役立つノウハウなどをまとめています。
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