だから、住まいは竣工=完成ではなく、人や物などのライフスタイルの変化に応じ、リフォームも増設も移設までも可能な「廃棄させない」建物を作りたいと考えた。そのために、建築をプロダクト化し、移動可能にできないかと考えた。

移動可能な家は、20世紀半ばにバックミンスター・フラーが発表したダイマクション・ハウスなど、昔からあった発想ではある。しかしこうした建築物は、プロダクトとしては残っていない。その要因を、村井氏は素材にあるのではないかと考えた。ジェラルミンなりアルミなりの建物は、丈夫だが人が住み続けたい家ではなかったのではないか。そこで村井氏は、木を選んだ。

構造設計は困難を極めたが、英国人設計家アラン・バーデン氏と組み、頑丈な木の構造に守られるセミモノコックボックス構造を完成させた。

室内は、圧倒的な骨太の木に囲まれ、大開口の窓からの眺めなど、高い居住性を持つ。見かけはシンプル・モダンだが落ち着いた空間

もちろん素材選びにも余念がない。当初、シンプルに間伐材や地場材の活用を考えたが、結果的に柱には現在使用している集成材(ひき板や小角材等を材料として繊維方向を平行にそろえ、厚さ、幅及び長さの方向に集成接着をした木材:日本集成材工業協同組合より)を採用。北海道産か青森産、岩手産のカラマツを使うが、価格が折り合わない場合などは、フィンランド産の欧州アカマツを使う。

面材には構造用合板を使用。見かけは“ベニヤ板”。構造を露出するので、アレルギーの心配もあったが、今現在、そうした反応は出ていないそうだ。ちなみに初期には、いわゆるむき出しの木に、「まだ作っている途中ですよね」と聞くクライアントもいたそうだが、今ではこのむき出し感が、かえって人気という。

ベニヤ板などと言ってしまうと防寒対策が気になる。エアロハウスは、床壁天井を完全に断熱材で包み、空気を循環させるシステム「外断熱通気工法」によって寒冷地でも高い保温性を実現している。

そして、こだわりぬいたこの構造は、かなり自由度が高い。何しろ柱がない。ボルトで何かを差し込んだり、穴を開けたりして棚を作ったりしても問題ない。ブランコやハンモックも簡単に取り付けられる。どういう間仕切りにするかは施主の自由だ。

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