悩み解決 自分のことが、好きになれません
ハッピーWOMAN養成講座 田中ウルヴェ京
自分に自信が持てなくて、仕事でも自分を責めてばかり。幼い頃からの夢を諦めてしまったことも後悔し、モヤモヤする日々。自己嫌悪から解放され、自分を好きになるにはどうすればいい? メンタルトレーナーの田中ウルヴェ京さんが、働く女性の悩みに斬り込みます。
【今月の相談者】
公共施設を管理する組織で、事務や子ども向けイベントの企画をしています。もともとは保育士を目指していましたが、実習で自信をなくして挫折。子どもにかかわる今の職に就いたものの、利用者への対応がうまくできない場面もあり、自信をなくしかけています。同時に、一度は諦めた夢への思いを抱いてモヤモヤする日々……。後ろ向きな自分が嫌だし、変わりたい。
傷つくのを怖がるからなりたい自分になれない
片桐昔から何かにつけて「自分なんか……」と、つい自虐的に物事をとらえてしまいます。上司からは「悲壮感漂ってるね」と言われたことも。いつもネガティブなことばかり考えてしまい、自分に自信が持てません。
田中 もしも望みがかなうとしたら、どんな自分になりたいですか?
片桐 オンもオフも生き生きと充実していて、毎日を楽しく過ごしている姿が理想ですね。悩まない自分になりたいです。
田中 では、今の生活が楽しくない原因は何だと思う?
片桐 一番の原因は仕事ですね。正職員だし、福利厚生もしっかりしていて安定した職場だけれど、本当にやりたいことではなかったので……。
田中 何かほかにやりたいことがあったのですね。
片桐 実は小さい頃から声優になるのが夢でした。でも、不安定な仕事だからと両親に反対されたこともあり、踏み出す勇気が持てなくて。なんとかほかにやりたいことを探そうと保育士を目指したのですが、実習で自信をなくし、挫折しました。
田中 それはなぜですか?
片桐 実際に子どもや先生方とかかわっていくなかで、いろいろと難しい局面に遭遇することもあって。自分が保育士としてうまくやっていく自信を持てませんでした。せめて子どもに関わる仕事をしようと、今の職場に就職したのですが、実際には別の雑務も多く、やりがいを感じられなくて……。利用者への対応がうまくできず"向いていないのかな"と悩んだり、"声優の道に進もうと思えばできたよな"と、過去の自分を責めてばかりいます。
田中 では、もし今、声優になれるチャンスがあったら踏み出す?
片桐 売れっ子になれなかったら"失敗した"とすごく後悔するだろうし、怖い。だからやっぱり踏み出さないと思います。
田中 つまり、"チャンスがあっても成功が保証されていないなら声優の道には進まない"と決めている。それなら、"やろうと思えばできた"は事実ではなくなっちゃうね?
片桐 そういえばそうですね。
田中 なぜ失敗をそこまで恐れるのかしら。
片桐 傷つくのが怖いから、そうならない方法を探しているのかも。
田中 では、声優の道を諦めたときや保育実習のときに傷ついたの?
片桐 う~ん、傷ついたわけではない気がします。
田中 そうだよね? だって"傷つくまでやってない"から。片桐さんはこれまで"失敗するかも"と思った時点で進むのをやめてきたんだと思うの。"あと50メートル進むと傷つく"と感じた途端、諦めていたのでは?
片桐 あっ、そうかも……。
田中 小さな失敗はあるかもしれないけれど、本当にやりたいことを貫こうとして挫折した経験はまだないよね。傷つくことに免疫がないから、どんどん臆病になるのも当然かもしれない。でも、"失敗しないことがあるべき姿"という価値観を変えないと、この先苦しいですよね。
片桐 安定志向の両親の影響もあり、私自身、失敗しないことが大事だと思ってきました。就活にしても、バイトや派遣は自分のなかで失敗と考えていたから、正職員として今の職場に就職するという選択しかできなかったのかなと。
田中 片桐さんが自分を好きになれないのは、物事を"白か黒か"の2択で考えてしまうからなの。つまり今は、"成功か失敗か"しかない視野の狭い状態。曖昧な部分を認められないから、ちょっとしたことでも"自分はダメだ"と落ち込んでしまう。だから、必要以上に失敗を恐れるし、少しでも失敗して傷つきそうだなと思ったら逃げる癖がついてしまっているんです。
片桐 確かに私、白黒はっきりしないと気が済まないところがあります。だから、今のうやむやな自分が嫌いだったのですね。
田中 でも、人間はみんな失敗しながら成長するものだし、失敗して経験値を上げないと成功もない。だから、失敗はダメなことではなく、ひとつの経験にすぎないんですよ。
逃げずに進んだ分だけ自分を好きになれる
片桐 どうしたら変われますか?
田中 明日からやってほしいのが、「他人をリスペクトする練習」。今の片桐さんは"完璧でないとダメ"と考えているから、周りのダメな人も認められないはず。だから、自分の基準で見て、成功していないと思う人や欠点のある人の"いいところ"を探してみて。"欠点がある人だって素晴らしい部分があるんだ"と、人間を多面的に見られるようになれば、自分の曖昧さや欠点も許せるようになって心がラクになりますよ。仕事で何かあっても、"うまくいかないこともあるよな"と、ラクに考えられるようになるはず。
片桐 早速やってみます。
田中 人の資質に影響している要素は、(1)遺伝、(2)学歴や外見など育った環境、(3)日々の考え方や習慣の3つ。その割合は遺伝が50%で、次に日々の習慣が40%の影響を及ぼすとされています。日々の考え方を前向きに変えることで、いくらでも自分を認められるようになる。考え方が前向きになってくれば、持って生まれた自分の遺伝的要素や環境のいい点にも気づけるようになりますよ。
片桐 心の持ち方が大事なのですね。
田中 そうです。あとは毎朝、「今日"最低限の幸せ"を感じるには何ができるだろう?」と考える癖をつけてみて。"1日笑顔を絶やさない"とか"大きな声で自分から挨拶する"でもいい。ポイントは、"今日の私は幸せになれるか"ではなく、"自分が何をしたら小さな幸せが得られるか"と考えることなんです。
片桐 そんな些細なことでよかったのですね。これまで、求めるレベルが高すぎたのかもしれません。
田中 だって、失敗せずに生きるなんて絶対に無理だもの。人は小さな失敗を重ねるほど免疫もつくし、成功に近づく。だから、安心して失敗していいんですよ。これまで避けてきた"あと50メートル"を逃げずに進めば、進んだ分だけ自分を好きになれる。日々の習慣を変えるには時間がかかるけど、筋トレのように継続してね。本来の片桐さんは、すごくエネルギーがあるし、声優に憧れるくらいだから、自分を表現したい気持ちが強い。だから、そのうち今の職場じゃ物足りなくなるかもしれないけれど、そのときには自信を持って次に進めるといいね。そして、本当の自分でいられる場所を見つけてくださいね。
田中さんから働き女子にハッピー★アドバイス
・完璧な自分を求めず、失敗を怖がらない
"成功か失敗か"の2択思考だと、完璧な自分しか認められないから、自分を好きになりづらい。でも、人間は誰しも失敗を経て成長していくもの。失敗を恐れず、"必要な経験"だと捉えましょう。
・「多少の欠点があっても尊敬できる人」を見つける
周りからの評価が低い人や欠点があると思える人の長所を探してみて。人の欠点を許す練習をすることで、気づけば自分のダメなところも許せるようになり、多面的に物事を見る目も養われます。
(敬称略)
(ライター 西尾英子)
[日経WOMAN2014年7月号の記事を基に再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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