阿川佐和子(あがわ・さわこ) 1953年生まれ。東京都出身。1981年「朝のホットライン」(TBS系)でリポーターに。1999年に坪田譲治文学賞を受賞した『ウメ子』ほか、小説、エッセー多数。「ビートたけしのTVタックル」(テレ朝)にレギュラー出演中。

刊行することは決めたものの、私はインタビューのエキスパートではありません。ノウハウ本にするのは、とても無理です。どうしようかと考えた結果、今までインタビューしたなかで、うまくいったり、落ち込んだり、失敗から学んで次はこうしようと思い至ったことなど、人との具体的なエピソードをたくさん積み重ねていくことならできるかなって。だから、聞くことをテーマにした「エッセー」と思ってもらえると、私自身もしっくりきます。

話を聞くことが上手になりたいと思って、阿川が書いた本を読んでその通りにしたけど、「うまくいかなかった」と言われても責任は負えないので逃げ道の意味でも(笑)。

『聞く力』に関するテレビ取材を受けたとき、友人の檀ふみがコメントをくれたんですね。「阿川さんが聞き上手かと聞かれたら私は同意できません。むしろ阿川さんは、話し上手、話し好き、話し過ぎ!」って(笑)。ホントにその通りで、私は話し過ぎで話し下手でもある。話し出すと本題までが長すぎて、「早く結論を言え!」とよく怒られます。ですから、プライベートでは決して黙って人の話を聞くタイプではないんです。

聞くのが苦手だからこそ試行錯誤を重ね、具体的に書けた

聞き下手なのに、聞く仕事をしなければいけなくなったから失敗も多くて。「いかんいかん、これじゃ干されてしまう…」との思いから、聞くためのいろんな知恵を必死で身につけようとしたんだなと、今振り返ると思います。

長嶋茂雄さんが監督時代、「ホームランを打つにはどうしたらいいですか?」と聞かれて、「球が来たら打てばいい」と言ったという有名なエピソードがあるじゃないですか。もし私が聞き上手だったら、「どうすればうまく聞けますか?」と問われたら、長嶋監督同様、「聞いてみればいいんじゃない?」って答えると思うんですよ。でも聞き下手の私は、苦手でできない人の気持ちが痛いほど分かる。だからこそ、うまくできなくて反省したり、試行錯誤したりしながら経てきた20年の経験を、なるべく具体的に書くことができたんじゃないかなと思います。

インタビューは毎回必死で、うまくできたのか、自分では客観的な判断ができません。けど、昔も今も、「この人に話したい。語って楽しかった」と思ってもらえる聞き手になりたいとは思っています。私のようにインタビューを生業にしていなくても、「聞く」ことは、誰しも自然に行っていますよね。友達の恋の悩みを聞くのも、上司と意見を交わすのも同じ。これを読んだ人が何かのヒントを見つけて、周囲の人たちとよりよい関係を築いてもらえたらうれしいです。

(ライター 平山ゆりの)

[日経エンタテインメント!2012年8月号の記事を基に再構成]