──日本のビジネスパーソンは目の前の仕事に追われ、ルネサンス的人間になる余裕がないかもしれません。
最近はあまりにも短いスパンでしか、ものを考えなくなっています。次の四半期は目標を達成できるだろうか、次の株主総会をどう乗り切ろうか、と。いきおい、自分たちが一番強い分野にリソースを集中してやっていこうとしている。短期的に見れば一番良い戦略でしょうが、自分たちの強みは10年後に消えてしまうかもしれない。例えば、音楽を楽しむ媒体は、レコードからCD、MP3…とドラスチックに変化しました。レコード針はもはや一部愛好家だけのもの。そういう変化を乗り越えて、自分の会社が輝き続けるにはどうすべきかという視点を持てば、全く違った戦略が出てくるはずです。
私は200年後を考えて戦略を立てることをお勧めします。2200年の社会をイメージしてください。自分は既に死んでしまっていて、自分のことを覚えている子供たちも多分もういない。そういうはるか先の未来を考えながら仕事をしてください。時空を超えることで、単に忙しいだけの日々から逃れられます。
──200年後を考えて働くとして、ご自身の人生の時間軸をどのようにとらえているのですか。
私は今、56歳です。日本人男性の平均寿命まであと20年しかないので、毎日必死です。時間とエネルギーが惜しいから、睡眠時間と食事の時間をぎりぎりまで削り、努力している。「人の2倍働いて、3倍の成果を出す」も私のモットーの1つです。
自分が死んでしまった後も残るようなアイデアやコンセプトを生み出したい。ライフスパンを超えた概念をたくさん出せたらいいなと思っています。
──相容れない考えかもしれませんが、「ワークライフバランス」についてどう思われますか。
とても立派で、健全だと思います。人それぞれ価値観は多様です。すべての人に私のようにやれと言うつもりはありません。そもそも、こんなしんどいことを必死になってやる人もあまりいないでしょうし、やれる人もそんなにいない。皆ができたら、私の商売は上がったりですよ。