インバランスも大事
ただ、本当にやりたいことがある人、やることがとても大切だと信じている人、そして、やれるだけのエネルギーがある人にとって、インバランス、つまりバランスが取れていない緊張感も非常に大事です。過労死しろとか、家庭をないがしろにしろと言っているのではないですよ。ただ、バランスを優先するとジャンプしにくくなる。バランス自体がある種、ボトルネックになる側面もあります。
それに日本人全員がバランスを取った時、日本はそれでいいのかとも思います。組織が進化していくためには、遺伝子を突然変異させる何%かの突出した「個」が必要だと思います。
──若い読者に向けてメッセージをお願いします。
20代、30代の方は、私より20年、30年長く生きられるわけで、ぜひそのことの大切さを意識してください。そして、感性が豊かで知的吸収力が最も高い時に異文化に飛び込んで、知的な刺激を自分に与え、新しい環境に適応する力を鍛えてください。
「進化論」のチャールズ・ダーウィンはこう言っています。「最も強い種族が生き残るわけではない。最も知能が高い種族が生き残るわけでもない。変化に対応できる種族が生き残るのだ」と。適応力こそがこれからの時代を生きていくために一番大事な力です。
石井 裕さん
米マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボ教授・副所長1956年生まれ。北海道大学大学院情報工学専攻修士課程修了後、電電公社(現NTT)に入社。NTTヒューマンインターフェース研究所での研究が注目され、95年、39歳でMITの教授に就任。情報に直接触れることができるコンピューターの新しいインターフェース「タンジブル・ビット」を生み出す。2008年、MITメディアラボの副所長に就任。
米マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボ教授・副所長1956年生まれ。北海道大学大学院情報工学専攻修士課程修了後、電電公社(現NTT)に入社。NTTヒューマンインターフェース研究所での研究が注目され、95年、39歳でMITの教授に就任。情報に直接触れることができるコンピューターの新しいインターフェース「タンジブル・ビット」を生み出す。2008年、MITメディアラボの副所長に就任。
(日経ビジネスアソシエ 上田真緒)
[日経ビジネス Associe2013年1月号の記事を基に再構成]