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熟成肉なぜうまい 「腐りかけの肉」と何が違う?

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NIKKEI STYLE

しばらく寝かせてうまみを増した「熟成肉」がブームだ。この肉を使った料理を専門に扱う飲食店が相次ぎ登場しているほか、吉野家が4月中旬から牛丼の肉を熟成肉に変える。昔から「肉は腐りかけがうまい」ともいわれるように、肉には寝かせて生まれる価値がある。「熟成肉」はただの「腐った肉」とは何が違うのか。

黒ずんだ肉の表面 漂うまろやかな香り

東京・食肉市場で仲買業務を手がける小川畜産興業(東京・港)の冷蔵庫。セ氏1~4℃、湿度60~80%に調節された室内にはいくつもの扇風機が回り、棚に並んだ肉に風を送る。

「これが40日間熟成した牛ロースですね」。高木聡取締役が指さした肉の塊。表面は黒ずみ、ふさふさした綿毛状のカビが風に揺れている。「食欲をそそる」とか「おいしそう」というイメージではない。むしろグロテスクである。熟成肉だと知らされずに見たら、ほとんどの人は単なる「腐った肉」だと思うだろう。

ところが室内にかび臭さはなく、漂うのはナッツのようなまろやかな香り。東京・芝浦などの食肉市場で覚えのある生肉の臭いとも違う。

うまみ成分のアミノ酸 微生物の力で5~6倍に

肉を熟成させるにはいくつかのやり方があるが、いま最も注目されているのが温度や湿度、風を調節する「ドライエイジング」だ。一定の条件のもと、風を当て続けることで肉が含む余計な水分(自由水)を飛ばし、タンパク質やミネラルを凝縮させる。

乾燥が進む過程で付着する特定の微生物が生成する酵素は、凝縮されたタンパク質をうまみ成分のアミノ酸に変える。「干物と同じ理屈」(高木取締役)だ。

小川畜産が依頼した研究機関の分析では40日の熟成を経た牛肉のアミノ酸は5~6倍に増えた。繊維もほぐれ、2割少ない力でかみ切れるようになった。つまり2割軟らかくなった。

肉の"発酵食品" 「腐った肉」とは違う

ドライエイジングはニューヨークなど欧米で発展した伝統だ。「欧米では水分が多い赤身肉が主流。これをいかに柔らかく、おいしくするかというのが出発点になっている」。日本ドライエイジングビーフ普及協会の会長を務める食肉販売会社「さの萬」(静岡県富士宮市)の佐野佳治社長は解説する。牛肉は豚や鶏に比べて自由水を多く含み、熟成が最も効果を発揮する。

日本にも熟成の伝統があった。「枝枯らし」と呼ばれる手法で、枝肉のまま風を当てずに熟成させる。

食肉卸ミートコンパニオン(東京都立川市)の植村光一郎常務によると「枝枯らしではドライエイジングでは付着しない微生物もつき、ミソのような香りが出る」。ブルーチーズなど通好みの発酵食品を思い起こせばいい。しかし、ただ寝かせておくだけでは有害な微生物も付着する。これでは単なる「腐った肉」。適切な微生物をいかに付着させるかが熟成のノウハウでありキモとなる。

和牛とは違う魅力 濃厚でまろやか

バブル期のころまでは枝枯らしにした和牛の需要が多かった。しかし熟成させれば水分が減る分、目方も減る。カビが生える表面は削らなければならず歩留まりは悪くなる。卸値は必然的に4~5割高くなる。和牛は熟成させなくても軟らかい。バブル崩壊後は手間暇やコストをかけてまで和牛を熟成させようという向きは減った。

現在のドライエイジングは和牛より価格の安い交雑牛や乳牛を熟成させることが多い。

小川畜産の高木取締役は「こうした赤身肉の付加価値を高め、和牛とは違う魅力を出せるのが熟成の意義」と話す。確かに乳牛を熟成させた千刻牛のハンバーグを食べてみると、熟成させていない乳牛よりも濃厚でまろやかな趣がある。

熟成肉人気 消費者の赤身志向が背景に

健康志向などで赤身を好む人が増えているのに加え、消費者の肉の食べ方も変化している。

仏文学者の青柳瑞穂は小説家の太宰治や井伏鱒二とすき焼きを食べた時、太宰が貴重な肉をひとりでパクパク食べてしまい、多量のネギやシラタキには目もくれない様子をユーモアを交えながらも、少々あきれ気味に書いている。

ミートコンパニオンの植村常務は解説する。「すき焼きをする時、昔は肉を少しだけ入れて、その脂をほかの野菜にも浸透させて食べていたわけです。けれども今は肉そのものをしっかり食べるようになった。霜降りではたくさん食べられないので、やはり脂の少ない赤身になります」。赤身をおいしく食べるなら熟成の出番だ。

4月中旬から吉野家も熟成肉を採用

JA全農では今月、米ロサンゼルスの高級住宅街ビバリーヒルズに和牛を提供する高級レストランを開く。背景にはサシの多い高級和牛が国内で消化しきれなくなっていることがある。熟成肉の台頭は、和牛霜降りを頂点とする牛肉のヒエラルキーが変わりつつあることの証左でもあるようだ。

大手外食チェーンも活用を始めた。ファミリーレストラン大手のロイヤルホールディングスは「ロイヤルホスト」や「カウボーイ家族」で熟成肉のステーキを提供している。

4月中旬には「吉野家」が牛丼の肉を熟成肉に変える。これまでは港に着いた米国産の冷凍品をそのまま工場に運んで加工していたが、今後は肉が凍る寸前の温度に設定した冷蔵庫で2週間ほど寝かせて加工する。「一般の人でもきっと違いがわかる」(ミートコンパニオンの植村常務)というから楽しみだ。

(商品部 吉野浩一郎)

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