CDなどのパッケージや音楽配信の売り上げ低迷と対照的に、ライブのマーケットは順調に拡大しているようにみえる。ライブ事業を手がける企業で構成されるコンサートプロモーターズ協会(ACPC)の調査によれば、公演数は2007年の1万4435本に対して、2010年は1万8112本と、3年で約25%も増加(図1)。2011年の本数は現在集計中だが、「前年を上回る見込み」だという。
ただし、ビジネスの面において、数年前と今ではライブの持つ意味は大きく異なる。かつて、ライブは曲を聴いて遊びに来てもらうための場所、つまりCDの“プロモーション”という位置づけだった。レコード会社からはコンサート援助金が出され、アーティストはアルバムの発売を受けて全国を回る。CDを売るのが目的だから、話題を作れればライブ単体の収益は少々赤字でも許された。
パッケージが売れない今は、レコード会社からの援助金どころか、そもそもCDの売り上げがあまり期待できない。現在、公演数が増えているのは、アーティストがライブそのもので収益を得る必要に迫られていることの裏返しだ。
「今はアルバムと関係なく、リリース時期以外にもツアーを行うアーティストが増えた」と言うのは、首都圏を中心にコンサートの企画・運営を手がけるディスクガレージの中西健夫社長。同社が手がけるライブの公演数も2006~2008年ごろは年間1500本強だったのが、2011年は2000本ほどに増えているそうだ。
70組を超えるアーティストのマネジメントを手がけるソニー・ミュージックアーティスツの原田公一会長は、「広告収入を補うためか、テレビ局やラジオ局などのメディア事業部が開催するイベントが最近多いと感じる」と話す。