アベノミクス農業6次産業化は至難の業(加藤百合子氏の経営者ブログ)

2013/6/17

私は日ごろ、相談を受けた農家の方には「6次産業化を目指すより、今やっている1次産業を極めた方がいいですよ」とアドバイスしています。1+1+1+1+1+1……です。「もう極めている」とのお叱りを受けそうですが、やるべきことは結構ありますよ。

当社が提供する環境計測機器。温度や日照などのデータを自動収集しインターネットで分析できます

例えば天候や気温、湿度へのアプローチ。これらのデータと農作物の生育との相関関係を解明できれば収穫量を増やすことができると思うのですが、日誌もつけていない農家が大半で、科学的に分析しようにもデータがそろわない。経験則に頼りっぱなしなんですね。

実はこれ、私の母校である東大農学部を含めた日本の学術研究機関への注文とエールでもあります。農機関連の研究はすごいのですが、栽培技術そのものに関する研究を怠ってきました。全国を見ればすばらしい技を駆使して、自然にも負けない安定した収量を、もしくは高収量を実現している方々がいます。しかし、科学的なバックアップが無いため横に広がらず、その方、その場所だけの技術に甘んじています。

日本の技術として、海外にも販売できるように体系化することこそ、学術界が取り組むべきことではないかと思います。省力・省人化だけに重点を置けば良かった時代は過ぎました。5年後、10年後に農業現場で役に立つ研究をすることを目標に据え、まずは技術の体系化をITを活用しながら行うことが重要です。そして、日本のものづくりの力を世界に見せつけたいものです。

1937年(昭和12年)に設立され日本の農業技術革新を引っ張ってきた「農業機械学会」という学会がありまして、ここでも同じ反省が出ているとのこと。今年9月に歴史ある学会名称を「農業食料工学会」に変更するそうです。研究に協力してくださる生産者も多くいらっしゃいます。一緒に農業を盛り上げましょう!

先ほど、安倍晋三首相はTPPを見据えた農業強化策として6次産業化を軸に今後10年間で農業所得を倍増させる方針を打ち出しました。1×2×3=6をさらに2倍にする!安倍さん、どうするおつもりですか?。私なら……。長くなりましたので、これは次回に。

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読者からのコメント
YUKI-Kさん、70歳代以上男性
「アベノミクス農業6次産業化は至難の業」はとても大切な視点だと思いました。農業は2000年以上の歴史を持つ最も古い産業であり、土地所有権と密接に関連しています。鎌倉時代以来、農民は一生(一所)懸命という言葉にあるように、自分の農地を守るために命を懸けてきました。徳川幕府はj治山治水を重要政策として、日本の国土を300年間守ってきました。現在も農地の所有者は土地に愛着を持ち荒廃することを望んでいません。国土保全と食糧の自給自足を実現し、農業をビジネス化する補助金制度を整備し、農業を未来に向う希望のある産業にできるといいですね。 前回、農業をダメにしたのは農業関係金融機関、お役所、農協関係者であることを書きましたが、一番の責任は農業行政を彼らに丸投げし、補助金の分配を任せて来た政府の無責任政策にあるというのが正確なところです。訂正してお詫びします。
不滅の三冠馬さん、40歳代男性
加藤さんのご指摘はとても的確だと思います。農業者の経営支援に従事する者として、6次産業化が一種の「ブーム」になっていることを懸念しています。たしかに補助金は貰えないより貰えた方が良いかもしれませんが、貰うことが目的化し、やがて経営の足かせになるのは、農業に限らずよくあるパターンです。そもそも6次化などと言って、モノづくり、モノ売りができる能力が簡単に習得できるほど、世の中甘くないです。
これかあ~さん、50歳代男性
ご意見に賛同します。現実を良く知っている人だと感じました。特に研究機関への注文は、農学系だけでなく色々な分野(文系にも)で言えることですね。
農業自営者さん、60歳代男性
自分で作った野菜は自分で販売しようと思い、私も生産者仲間数人と野菜直売所、加工所の建物を農地(畑)の角地に作ろうと農業委員会に相談したら、その地域は農振区域なのでよほどの理由が無いとだめです、他の場所は有りませんかなどなどでいまだに実現いたしません。農地法って難しいですね。農業の6次産業。響きは良いが、法律ばっかりつくっても農家の為、生産者の利益につながるか問題じゃないですか。
小倉摯門さん、60歳代男性
加藤さんの女性らしい柔らかい言葉使いと語り口が印象的ですね。私なら「農業6次産業化の発想は間違いだ」と云い切りますね。勿論、実際には稀有な例外は出てくるでしょうが、然し、ビジネスである以上、バリューチェーンに関係する全ての企業と人が力を合わせ、夫々に企画開発製造流通販売の業務工程で協業し、市場販売を経て、最終的に投入した経営資源と利益の総量を回収するのが当たり前の話。全ての事業が採用している工程であって、歴史的にビジネス色の抹消を意図してきた農水省の関連事業だけが唯一の例外だったのでしょう。ビジネスの概念として6次産業という珍奇で意味不明な言葉を充てる必然性はない。商品サービスのバリューチェーンの全工程を特定の個人や企業が総合化と云うか一気通貫して担えると云う発想自体が大いなる時代錯誤だと思います。机上の空論を振り翳すのが得意な学者先生や霞が関の官僚たちに相応しい狭い発想でしょう。
トムさん、60歳代男性
日本の食の現実と将来を真剣に考えないとこの国の未来はないのでは。電機、工業立国とまい進してきましたが、国が豊かな環境は、自然が保護され、食の豊かな環境が最重要と思います。経済を工業産業が牽引してきたが、国内の環境は荒れ、人間が住む基本が壊され、自然豊か生活が無くなって来ている今、農業の重要性を国民上げて真剣に考える時期と思います。政治が真剣に農業政策を長期計画で。
natureizmさん、40歳代男性
農業をこれほど特殊な産業に仕上げてしまった弊害でしょうか、いきなり自主独立の6次産業化を進めても難しいことが多いと感じます。農業が地域の主力産業だった頃は異業種との交流も多かったのですが、戦後の農協体制の中でそういった面は失われていったように思います。農家の付き合いは農家が多い、そういう中での異業種交流である6次産業化はまだまだこれから、緒に就いたばかりなのでしょう。もともと商業系の方々と付き合いの多い農業者たちは先行している方も多いので、その辺りが参考となりそうです。


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